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更年期や月経の悩みケア、届出可能? 【フェムテック特集】森下竜一氏はこう考える

 更年期や月経に伴う一時的な身体的・精神的な不調をケアする。そのような働きを訴求する機能性表示食品の届出は可能なのだろうか。もし可能なのだとすれば、フェムテック・フェムケア市場に機能性表示が普及していく可能性が高まる。医学博士号を持つ内科医師であると同時に、機能性表示食品の届出などに深く関わる大阪大学大学院の森下竜一氏(医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授=写真)はどう考えるか。

OTC以外の選択肢が 「あってもいい」

 「更年期やPMS(月経前症候群)の症状が軽い人に向けた機能性表示食品があってもいい」。森下氏は「医師の立場」から主張する。

 理由はこうだ。「症状が重い人は医療にかかる必要がある。治療の選択肢としては、ホルモン補充療法をはじめ低用量ピルやSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の処方などがある。ただ、副作用を伴う可能性があるし、ホルモン補充療法は保険適用されていない。だから症状が重くないという場合、安易に勧められるものではない。その意味で、更年期やPMSの症状が軽度な人にとっては適切な医療がないのが現状だ」。

 一方で、ドラッグストアなどで手軽に購入できる一般用医薬品(OTC)にも更年期症状やPMSの改善を効能効果とするものがある。副作用のリスクも低いのではないか。

 「漢方のOTCもあるが、承認されてから時間がかなり経っている。最新の評価方法に基づき、プラセボ対照のRCT(ランダム化比較試験)で有効性が確かめられた健康食品があるのであれば、機能性表示食品としてどんどん届け出されるべきだ。消費者にとっても、OTC以外にも選択肢のあったほうが良いのではないか」。

 だが、ホットフラッシュなどの更年期症状にせよ、PMSにせよ、「疾患」とされている。そうした領域に、医薬品でない機能性表示食品が踏み込もうとすれば、医薬品医療機器等法(薬機法)の壁に跳ね返されることになる。

 「そのとおりで、この領域はとりわけ薬機法が大きな壁になる。効能効果の幅が非常に広い漢方のOTCが存在するのも壁になる」と森下氏。だが、軽度のPMSを自覚する健常な女性を摂取対象にするような機能性表示の届出は「不可能ではない」とも語る。これは、機能性表示食品の届出支援サービスを手がける(特非)日本抗加齢協会副理事長の立場からの見解だ。

医薬品と誤認されないヘルスクレームがカギ

 「更年期やPMSの症状には軽度から重度まで程度があって、どの程度を『疾患』と見なすか、その境目は必ずしも明確になっていない。だから軽い更年期症状やPMSを自覚したりしているのだとしても、健常な女性はいる。そうした女性を摂取対象とする機能性表示食品の届出は可能性がある。ホットフラッシュやPMSなどといった文言をヘルスクレームに盛り込むことは不可能だろうが、『更年期』や『月経の前』などといた文言は薬機法で規制されるものではない」。

 実際、「更年期」に関しては、「更年期以降の女性の骨の健康に役立つ」などといったヘルスクレームが届け出されている(ただし19年6月を最後に新たな届出はなされていない)。だが、「月経」に関しては今のところ例がない。

 「この領域も結局、ヘルスクレームのうちアウトカム(どのような働きがあるのか)の表現をどうするかが問われる。医薬品と誤認されない表現を考える必要がある。PMSの症状を改善する、などといった表現は絶対に無理だろうが、例えば、一時的な不快感を軽減する、のような表現であれば可能性が十分あると思う。更年期に関しても、同じようなヘルスクレームを検討できるのではないか」。

 そのヘルスクレームが薬機法の壁を超えるものかどうかを判断するのは消費者庁ではない。同法を所管する厚労省だ──森下氏は指摘する。だからこそ、新しいヘルスクレームの届出にチャレンジするのであれば、「一企業の努力だけでは限界がある。もっと業界団体やアカデミアを活用すべきだ」と話している。

【聞き手・文:石川 太郎】

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