日本版FOPNLガイドライン策定 任意指針で統一様式提示、普及が焦点
消費者庁は26日、「日本版包装前面栄養表示(FOPNL)ガイドライン」を公表した。容器包装の前面に1食分当たりの主要栄養成分と基準値割合を統一様式で示す任意指針で、消費者の健康的な食品選択を支援することが狙い。食品表示基準への義務化は行わないが、将来的な制度的位置付けも視野に入れる。制度設計段階を終え、今後は事業者の自主的な導入と実効性が問われる。
任意指針として統一様式を提示
日本版FOPNLガイドライン(GL)は、2023年度の「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」および24・25年度の「日本版包装前面栄養表示に関する検討会」における延べ10回の議論を踏まえて策定されたもので、食品表示基準には位置付けない任意の指針。
GLの目的は、食品関連事業者が一般用加工食品に包装前面栄養表示を導入する際の一般的な取扱いや望ましい在り方を示すことで、栄養成分表示の一層の利活用を促し、消費者が1日に必要な栄養成分などの量の目安を把握できるようにすることにある。
日本版FOPNLは、食品の容器包装の前面など、消費者が見つけやすい箇所に統一様式で表示する取り組み。表示内容は、1食分当たりの熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量)および、それぞれが栄養素等表示基準値に占める割合となる。
栄養素等表示基準値は、エネルギー2,200kcal、たんぱく質85g、脂質70g、炭水化物320g、食塩相当量7.0gとし、割合は整数で表示することが望ましいとした。
適用範囲は、容器包装に入れられた一般用加工食品であって、1食分が適切に設定できるものを想定する。特別用途食品のうち、病者用食品および乳児用調製乳、ならびに酒類は対象外とした。
表示は、容器包装の前面(通常は商品名が記載されている主要面)に行うことを原則とし、文字の大きさや色は統一する。特定の栄養成分のみを強調する表示は適切でないと整理している。
また、水で抽出・希釈する食品や湯切りする食品など、販売時と摂取時で栄養成分量にかい離が生じる食品については、摂取時の状態における量を表示することが望ましいとし、その際の留意点も示した。

意見83件、任意制度の妥当性も論点
消費者庁は同日、ガイドライン案に関する意見募集の結果も公表した。意見募集は2025年9月22日~10月21日まで実施した。
提出意見は83件で、1件の中に複数内容を含むものを分割すると219項目となる。この他、今回の意見募集とは直接関係しない項目が15件あった。
主な意見は、表示の目的や位置付け、表示方法の具体性や分かりやすさ、適用範囲や対象食品の考え方などに関するものである。任意のガイドラインとすることの妥当性や、事業者の対応負担に関する意見も見られた。
これに対し消費者庁は、日本版FOPNLは消費者の健康的な食品選択を支援することを目的とした指針であり、食品表示基準に基づく義務化は行わないとの基本的な位置付けを改めて示した。その上で、表示の定義や基本的な表示方法、適用範囲などについては、検討会での議論や寄せられた意見を踏まえ整理していく考えを示している。
消費者庁は、ガイドラインを参考にした事業者の自主的な取り組みの推進を期待するとしている。また、今後の健康・栄養政策や諸外国の動向を踏まえ、内容の適合性を定期的に確認し、必要に応じて見直しを検討する方針。
将来的に表示の在り方を巡り混乱が生じる場合には、食品表示基準への位置付けなど、規制的措置の必要性も含めて検討する考えも示している。任意指針としてスタートする日本版FOPNLが、どこまで普及し、消費者の食品選択にどのような影響を及ぼすのかが今後の焦点となる。
2023年検討開始、国際動向も参照
消費者庁が進めてきた日本版FOPNLの検討は、2023年度に開催された「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」を出発点として、本格的な制度設計段階へと移行した。
2015年の食品表示法施行により、加工食品への栄養成分表示が義務化された。熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目が必須表示とされ、20年に完全施行となった。しかし、制度が定着する一方で、「文字が小さく見にくい」、「裏面にあって探しにくい」、「100g表示では実際に食べる量が分かりにくい」といった課題が浮上した。
こうした課題を背景に、23年11月に開催された「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」において、現行制度を前提としつつ、消費者がより活用しやすい表示の在り方について議論した。検討会は同11月から2024年3月までに3回開催され、中間取りまとめでは、日本版FOPNLの基本的方向性が示された。
そこでは、日本版FOPNLの対象栄養成分を、すでに義務表示となっている5項目(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム)とすること、さらに栄養素等表示基準値に対する割合(%表示)を併記することが提案された。また、制度は当面「任意表示」としつつも、一定のルールを設けて統一的に運用する方向が示された。
加えて、表示単位は「100g当たり」ではなく、原則として「1食分当たり」とすることが適当と整理された。消費者が実際に摂取する量に即した単位で示すことで、栄養成分の理解と活用を促進する狙いだ。同時に、様式の統一や枠囲みなど、視認性を高める工夫も必要とされた。
こうした基礎整理を受け、24年7月から「日本版包装前面栄養表示に関する検討会」が始動した。第1回は同24日に開催され、以降、24年度に5回、25年度に2回開催されるなど、継続的に議論が重ねられた。
議論の過程では、WHOやコーデックス委員会のFOPNLガイドラインとの整合性、諸外国の制度事例(スコアリング型、含有量表示型、義務表示国と任意表示国の違い)も参照された。WHOは2019年にFOPNLを健康政策上の重要ツールと位置付け、政府主導による単一制度の構築やモニタリング体制の整備を求めている。コーデックスも2021年にFOPNLガイドラインを正式採択し、各国が国内法に基づき任意または義務制度を設計できる枠組みを示した。
日本版FOPNLの議論は、こうした国際動向を踏まえつつも、国内の栄養政策との整合を重視して進められている。特に「健康日本21(第三次)」や、日本人の食事摂取基準の改訂との連動が意識されている。栄養素等表示基準値の見直し作業とも連携しながら、制度設計が進められてきた点が特徴である。
25年度第1回検討会では、ガイドライン策定に向けた議論が本格化し、第2回ではガイドライン案の意見募集が議題となった。そして、前面表示の様式や表示内容を整理したガイドライン案が提示され、制度化に向けて一区切りを迎えた。
今回のガイドラインは、栄養成分を「高い」、「低い」と評価するものではなく、あくまで客観的な数値と基準値割合を示す情報提供型の設計となっている。これは、栄養強調表示との混同を避けるための整理でもある。

振り返れば、日本版FOPNLは、単なる「前面表示の導入」ではなく、現行の栄養成分表示制度をどうすれば消費者が実際に活用できるものにできるかという問いから出発した。その議論は、表示単位、視認性、様式統一、国際整合性、健康政策との連動といった多層的な論点を包含している。
任意制度としてスタートする見込みの日本版FOPNLが、どこまで普及し、どのような行動変容につながるのか。制度は策定段階から実装段階へと移る。今後は、事業者の対応状況や消費者の理解度、モニタリング体制の構築が次の焦点となるだろう。
【田代 宏】
公表資料はこちら(消費者庁HPより)
(冒頭の画像はイメージです)

