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日本消費者協会「被害を未然に防ぐ実効性のある規制を」~第1回WT会合(中)

8月31日にオンラインで開催された第1回「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(契約書面電子化検討会)の「第1回ワーキングチーム会合」(WT会合)では、(一社)日本消費者協会が最初にヒアリングを行った。同協会からは、専務理事の橋本康正氏と事務局次長の田中大輔氏が出席した。

同協会は、①真意に基づく承諾を確保する方法(承諾の実質化)、②電磁的方法による提供の方法(高齢者対策を含む)――の2つの課題について意見を述べた。

以下、その概要を掲載する。
今回の2つの議案の「真意に基づく承諾を確保する方法」については全部で6項目、「電磁的方法による提供の方法」については5項目挙げさせていただきました。
1つ1つについて説明させていただきます。まず、真意に基づく承諾を確保する方法としてスライドの1ページ目ですけれども、3つ挙げさせていただきました、3つまとめて説明をさせていただきます。

明確な承諾を得ているかにういて、明確な承諾を得ているかをめぐって紛争とならないような配慮が必要。それからIT弱者に対する配慮、これに十分に応じる必要があると思っております。それを踏まえますと、やはり原則としては、書面交付は紙でというのが原則になるのかなと思っています。
それは消費者が希望する場合のみの電磁的方法による提供が認められるということを事業者が消費者に明確に説明をすること、これを義務づけてほしいと思います。
契約書面にどんなことが書いてあるか、例えばクーリングオフ後、起算日は場合によっては中途解約とか解約料など、取引の内容によって重要なところは変わってきますけれども、そうした重要なことが書いてあることを十分理解いできるように、しっかり説明してほしいと思いますし、その上で、あくまで選択は消費者にさせるということであってほしいと思います。

また電子書面の場合には、できる限り自分で印刷するように事業者が助言することも義務付けるなどして欲しい。そもそも、特商法の適用のある取引は一般的に事業者主体で契約に至ることが多い。不意打ち的であって、なかには攻撃的な場合もあったりする。自ら望んでいなかったけれども、結果的に契約に至る場合も多い。だからこそ、契約内容を十分に理解する必要があると思います。契約内容を理解するための契約書の役割というのは大きいですが、その契約書のこと、その役割を消費者はしっかり理解していないといった側面もあります。
そこに便乗するようなかたちで、読みにくい電子書面を交付することがないように、契約書の重要性というものを十分に事業者に説明していただきたいと思います。契約書の重要性を理解した上で、消費者に選択させるべき、または消費者が選択するべきであるというふうに、当協会としては考えています。

加えて、電子書面にするか、しないかという選択をさせる場面で、電子書面という言葉自体があまり馴染みがないという方もいるんじゃないかなという意見もありました。
電子書面にしますか?「はい」、「いいえ」とかではなく、例えば、契約書を郵送ではなくてメールで受けとりますか?「はい」、「いいえ」というような表示に統一するなどの考慮があってもいいのかなと思います。

「契約書面を受け取った日、つまり電子メールか消費者のサーバーに届いた日というのがクーリングオフの起算日」であることを事業者は消費者に明確に説明することを義務づけてほしいと思います。
クーリングオフのことを正確に意識している消費者は少ないと思いますし、まして起算日のことを意識している方というのはほとんどいないんじゃないかなというふうに思っております。事業者には、消費者にクーリングオフの説明と、それから起算日の説明を明確にすることを義務づけてほしいと思います。
それから、毎日メールチェックする人ばかりではないので、もし電子書面で送るという場合には、メールはいつ来るのかということを事前に知らせてほしいと思います。
また、電磁的方法による提供の説明を消費者に行った場合に、理解してない様子が見受けられる場合には、この電磁的方法による提供を控えるように事業者は努めてほしいと思います。
電子書面はあくまで消費者が希望した場合、それも積極的に希望したという場合でいいと思うのですが、そうではなく、明らかに適合性を有していないと判断される場合には電磁的方法での提供は控えるような規定を設けてほしいと思います。

消費者が高齢者である場合など、本人が望めば第三者の確認を求めることを可能にするような規定を設けてほしいと思います。これは高齢者に限らなくていいと思うのですが、希望すれば第三者にもメールなりで連絡が行くようにするというような仕組みを取ってほしいと思います。
その希望の取り方については、消費者がシーンに基づき選択できることが重要ですので、事業者が誘導することがあってはならないようにというのが必須だと考えています。ここについては電子書面に限らず、本人が望めば一般的な特徴の契約もそれでいいとは思っていますが、少なくとも、電子書面の場合はこのようにしてほしいという要望があります。

続議案の2つ目の「電磁的方法による提供の方法」についてということで、5つ紹介させていただきます。スライドの4枚目ですね。
1つ目、「電磁的方法で交付する書面は、紙によるものと同様に消費者にとって一覧性があるものに限定」してほしいと思います。
現在の書面交付義務というのは、消費者にとって一覧性があり、もらった書面をぱっと見ればだいたい書いてある項目、特に重要な項目の把握が可能。そういう基本的視点に立った規定になっています。電子書面の場合にもこの制度の趣旨は維持されるべきだと思いますし、仮にそれが後退するようなことになれば、法の主旨に反するのではないかと考えております。

続きまして、「電磁的方法をする書面は、消費者にとって容易に読むことができる表記であることを義務付け」てほしいと思います。これも現行の話なんですが、現行の商品画面コード義務では、活字は8ポイント以上、それから「クーリングオフ」ですとか、「この書面をよく読むべきこと」などの記載は赤字赤枠で目立つように書くべきことが義務づけられています。
そもそも書面の場合はですが、8ポイントの文字で決して十分に読みやすいとは言えないのですが、それが電子書面になってこれよりも小さい文字で良いこととなると、一般消費者にとっては読みやすいとはとうてい言えないものになると思います。
これも法律が、書面交付義務を設けている制度の趣旨に反することになるのかなと思いますので、この点についても配慮が必要であると考えています。とにかく、消費者が読んでいてきちっと把握できないと困りますので、小さな文字でスクロールしないと見れないようなことがあってはならないと思っています。
少なくとも、重要事項やクーリングオフについては、しっかり理解ができるように、それから見落とさないようにですね、紙の書面の一覧性などのメリットが損なわれないような手立てを講じる必要があると思っています。電子データの場合は特に、一目で見ることができないので、最初に大きく表示をしたり、メールの本文にも分かりやすく表示を併記するなどの仕組みが必要でだと思っています。

5つ目のスライドは、2つ合わせて説明をさせていただきます。1つ目が「電磁的方法でも、確実に消費者が使用している端末に受信され、受信したことが消費者に認識できるものであることが必要」であると思います。
合わせて、「電子データを添付したメールを消費者が閲覧したことを事業者が確認する措置を設ける必要がある」と思っています。例えば、訪問販売の申込書面は、申し込みを受け付けてから、ただちに書面を交付するということが義務づけられてまして、手渡された消費者はそれをきちんと認識ができます。電子書面の場合もこれと同様に、消費者に書面が届いた後、認識できるような方法である必要があると思います。
例えば、消費者から必ず受信メールを受け付けることを義務付けて、これがない場合には、不交付、つまり交付していないとして、行政処分の対象にするなどの方法もあっていいのではないかと思っています。
実はこの部分は内部で、ほかにも議論がありまして、そもそも消費者から受信メールがなければ、事後的にクーリングオフしたものと見なせばいいのではないかみたいな案も出ました。それをすればですね、積極的に契約した人の利便性は向上しますし、一方で仕方なく契約した人とか、断れずに契約した人、よく理解しないで契約してしまった人などを救済することもできるのではないかというふうに考えています。

ただ今回、政令や省令でやるにはちょっと無理があるのかなということで、今回のヒアリングの趣旨からは少しずれるのかなということで、今回の資料には入れ込みませんでしたが、それくらいの評価の制度があってもいいのかなというふうにも内部では意見が出ました。

最後に6枚目のスライドです。
「電磁的方法はドメインのある電子メールのみとし、SNSを介したメッセージをやり取りするサービスなどは対象外にする」というふうにしてほしいと思います。記載方法にちょっと悩んだのですけれども、ここの趣旨というのは、SNSへのメッセージ機能を使った交付は認められないということです。
いわゆる、例えば、プロバイダを介したドメインのあるメールに限定するというのが良いのかなというふうに思っております。ただこうした場合に、例えば、フリーメールのGメールやヤフーメールなどですね、クラウド型メールサーバーの扱いが同じで問題がないのかなとちょっと技術的なところは気になるところです。
最近はフリーメールしか持ってないっていう方も結構多いと思います。とくにスマホしか持っていない人、格安スマホとかですね、大手でも格安プランだったらですねキャリアメールがないということで、その辺もちょっと具体案がなくて申し訳ないんですけども、ちょっとこの辺は気になっているところです。

それから関連して、電子書面のデータについてはPDFファイルで添付するのが原則であって、それが現実的かなというふうに思っておりますが、これもちょっと技術的なところで、PDFファイルの改ざんというのはあり得ないのかというところとですね、PDFが開けないっていうケースも間々あるので、その辺の想定も必要ではないかなというふうに考えております。

以上で議案についての説明はおわりますが、最後に電子化については、そもそも、これまでもトラブルが多かった特定商取引法の規制を受けている商法ということで馴染まないという見方もありますけれども、一方で、今回デジタル化に向けたですね、特商法の改正することで、なかには抵抗のない方もいると思います。ただやはりですね、電子化の流れに馴染めない人がおり、そもそもあの電子書面に不向きな消費者が多くいるということも事実としてあると思っています。
紙の書面でないと、家族ですとかヘルパーの方とか、あと消費生活センターの方などが異変に気付くチャンスが減ってしまうというところがあると思います。この辺はとくに、相談現場の方は危機感を感じるところではないかなというふうに思っております。
とにかく、被害を未然に防ぐ実効性のある規制ができることを強く望んでいます。

(つづく)

【田代 宏】

※音声の都合により、意見の全てを網羅していませんので予めご了承ください。

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