新田ゼラチン、新製品を開発中 【コラーゲン特集】内臓脂肪低減機能の新機軸
日本のほか海外5カ国に製造・販売拠点を置く新田ゼラチン㈱(大阪市浪速区、尾形浩一社長)。ゼラチン・コラーゲン事業に特化した日本発のグローバル企業だ。1992年に研究開発を本格化させたコラーゲンペプチドの製造拠点は現在までに日本、米国、中国、インドの計4カ国に広がり、日本・アジア・北米市場を中心に原材料販売を展開。生理活性を持つジペプチドを高含有させた高機能コラーゲンペプチドの需要創出に力を入れている。
高機能コラーゲンペプチドを世界に広げる
「Wellnex(ウェルネックス)」。新田ゼラチンが製造販売を手掛ける各種コラーゲンペプチドはこのブランド名で統一されている。このブランドの名のもとに、経口摂取したコラーゲンペプチドがさまざまな生体組織に対して生理機能を示す理由の1つと考えられているジペプチドを規格する形で開発した高機能コラーゲンペプチドをラインアップ。一部は、肌の健康(うるおい・弾力の保持)領域の機能性表示食品対応素材にもなっている。
足元の市況について同社では、「北米は、過去数年にわたり市場が急速に拡大し、大手ブランド主導で美容用途が大きく伸びている。一方アジアは、景気低迷やインフレなどの影響を受けた消費マインドの冷え込みで、美容用途コラーゲンの需要も減少気味」(西川誠一執行役員・事業本部副本部長)。国内については、「(新型コロナ禍を受けた)インバウンド消費の消失で需要が一時、大きく落ち込んだが、段階的に回復していった。ただ、コロナ前の水準にはまだ戻っていない」(奥村幾郎・事業本部ヘルスサポート事業部長)と分析。今年4月以降の販売推移予測については、欧米の金融不安など流動的な社会状況もあり、「横ばいで推移する」と慎重にみているが、中期的には市場は拡大を続けると予想する。
そうした中で、将来を見据え、普及啓発と拡販に力を入れているのが、生理活性を持つことが分かっているジペプチドの含有量を規格し、基礎から臨床までの研究を通じて機能性を見いだしてきた「Wellnex TYPE-S」など、高機能コラーゲンペプチドシリーズだ。国内外の競合企業とのシェア争いに勝っていくためにも、機能性に関する科学的根拠と製品特徴で差別化を図っていく必要があると判断。そのための投資も進めている。
進める研究開発投資 バイオメディカルも強化
昨年12月、本社・大阪工場(大阪府八尾市)敷地内に新たな研究開発拠点「みらい館」を竣工した。各事業領域の研究開発部門を集約させるとともに、バイオメディカル事業で手がける、再生医療などの医療用ゼラチン・コラーゲン製品に特化した製造と品質管理エリアを整備した。
ここを拠点に、現在までに実用化されているオルガノイド(ミニ臓器)培養基剤用の医療用コラーゲンなどの製造を行いながら、開発中のコラーゲン製「人工腱」などの実用化を目指す。また、健康食品用コラーゲンペプチドの新製品・新機能・新技術を生み出し、世界に発信していくための研究開発を進める。
新製品、麹菌による発酵でゼラチンを分解
高機能コラーゲンペプチドについて、近く、新製品を投入する予定だ。麹菌の「発酵」によって原料ゼラチンを分解させる、これまでにない製法で得られるコラーゲンペプチドの開発を進めている。通常、ゼラチンを分解するためにタンパク質分解酵素などを使う。
これまでにないのは機能性の面も同様だ。内臓脂肪を減らす機能があることを、動物とヒトを対象にした試験でそれぞれ確認し、論文発表した。「コラーゲンペプチドの内臓脂肪低減機能はこれまでにほとんど報告されていない。それだけでなく、通常のコラーゲンペプチドと同じように、肌に対しても有効であることが分かっている」と同社総合研究所研の姫野愛・研究部研究員)は話している。
【石川太郎】
(下の写真:新田ゼラチンが昨年12月、大阪の本社工場式内に新設した研究開発拠点「みらい館」。医療用コラーゲン製品の製造・品質管理エリアを1階に置いた。同社提供)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:大阪市浪速区桜川4-4-26(本店)
TEL:072-949-5381(代表)
URL: https://www.nitta-gelatin.co.jp/
事業内容:食用、医薬用、写真用ゼラチン、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの製造・販売