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新・需要の創出に向けて(前) 【コラーゲン特集】一層の普及啓発で成熟市場から脱却の時

 健康食品に利用されるコラーゲンは、一般的に「コラーゲンペプチド」と呼ばれる。豚や魚の皮などから得られるゼラチンを酵素などで分解したものだ。一口にコラーゲンと言っても種類があり、「Ⅱ型」のコラーゲンが多く含まれる鶏などの軟骨を原料にしたものも多く使われている。肌によい、のイメージが消費者に広く浸透しているのはコラーゲンペプチド。Ⅱ型コラーゲンは、主にひざ関節に対する働きが訴求されている。以上を踏まえ、コラーゲンの新たな需要創出に向けて必要なことを考察する。

コロナの影響受けるもすぐに復調できる強さ

 約6,450トン。2021年度(2021年4月~22年3月)、日本国内におけるコラーゲンペプチドの販売量は少なくともそれだけあった。

 この数字は、経済産業省製造産業局所管の「日本ゼラチン・コラーゲン工業組合」(以下、GMJ)に加盟する新田ゼラチン㈱、㈱ニッピ、ゼライス㈱など、国内ゼラチン・コラーゲンペプチドメーカー7社の販売量を合算したものだ。組合に加盟していない海外メーカーの日本法人や商社などの販売量は含まれないため、実際はもっと多い。年間販売量を公表する事業者は少ないため推測の域を出ないが、ざっと見積もって1,000~1,200トン前後が上乗せされるイメージだ。

 GMJによると21年度のコラーゲンペプチド販売量約6,450トンの内訳は、「食用」が5,160トン、「医薬用」が80トン、「工業用」が28トン、そして「輸出」が約1,180トン。食用は主に健康食品やサプリメントなどの用途、医薬用は主にソフトカプセルなどのカプセル皮膜用途、輸出は原材料としての輸出を意味する。

 食用が圧倒的に多い。前年度比を見ても、数量として605トン増加。伸び率としては13%増と2ケタの伸びを示している。そのため、輸出などが減少した一方で、全体として10%近く増加した格好だ。

 いかにも好調である様子がうかがわれる。しかし、その前年度、20年度(20年4月~21年3月)の数字を見ると、そうとも言えなくなる。同年度の食用の販売量は4,555トン。19年度比で517トンも減少しているためだ。

 減少の理由は新型コロナだ。近年、コラーゲンペプチドを配合した国産健康食品の需要は、中国をはじめとするアジアからの訪日外国人によっても支えられていた。インバウンド需要である。それがほぼ丸ごと消えた。また、長期化する外出の自粛を受け、それまで美容食品を定期的に購入していた国内消費者が買い控えた可能性もある。そのようにしてこの年、コラーゲンペプチドの販売量は大きく減少した。

輸出品目としても有望 海外需要の開拓をさらに

 そうしてみると、21年度に示した2ケタの伸びが意味するところは、「好調」と言うより「復調」だ。その状態が、22年度(22年4月~23年3月)も続いたとみられる。コラーゲンペプチドの主な原材料事業者に聞き取りしたところ、同年度の販売推移はおおむね前年度並みか、それを上回っている様子。中には、「大きく増えた」と強調する先もあったが、いずれにせよ、復調が定着して好調とも呼べそうな状態に移行したのが22年度であったと考えられる。

 一方、21年度に復調した理由は何か。該当期間は新型コロナウイルス感染拡大の渦中。訪日客の激減状態は続いていたからインバウンド需要の回復が理由であることはあり得ない。では何が理由か。複数の原材料事業者は、国内で製造した最終製品の輸出拡大を指摘する。「インバウンド需要を獲得していた先が、販売手法を越境ECや貿易に切り替えていった」。

 実際、健康食品の海外輸出額は増えている。財務省の貿易統計に基づき、国産食品の海外輸出にも力を入れている農林水産省が「栄養補助食品」の輸出額を調べたところ、22年は約331億円となり、前年と比べて44%増加した。一方、21年に関しては、栄養補助食品の輸出額の把握が同年1月から始まったため前年比較ができないのだが、3月の輸出額が1、2月と比べて2倍近くまで跳ね上がり、以降、22年6月まで段階的に増加。翌月7月以降からとりわけ大きく増している。

 コラーゲンペプチド配合健康食品が輸出額に占める割合は不明だ。ただ、22年輸出額の最多国は中国。次いで、台湾、香港、ベトナムが続く。いずれも近年、美容食品や飲料の需要が伸びていると言われる国・地域であり、コラーゲンペプチド配合健康食品が一定の割合で含まれていたとしても不思議はない。ちなみに農水省によると、昨年、健康系、あるいは美容系とみられる高単価の清涼飲料水の輸出が大きく増加した国がある。ベトナムである。ある原材料事業者は、「2年くらい前から、ベトナムに(最終製品を)輸出するという話を多く聞くようになっていた」と話す。

新たな需要の1つに「タンパク補給」

 復調の理由としてはほかに、コラーゲンペプチドの用途の広がりを指摘する声も少なくない。新たな用途として代表的なのは、タンパク補給である。タンパク補給食品の代表格はもちろんプロテインだが、コラーゲンもタンパク質の一種。

 プロテインは、新型コロナ下で、運動不足などが気になる人のニーズを広く捉え、筋肉の強化から美容やダイエットまでの用途で需要が大きく拡大した。一方で、世界的なニーズの高まりを受け、供給が不安定となる場面も見られた。そのため、コラーゲンペプチドのタンパク質としての側面に光が当たり、プロテインの代替などとしてタンパク補給用途で利用されるようになったとみられている。

 発売5カ月で累計販売数が500万食を超えたとされる日清食品グループの『完全メシ』シリーズの一部製品にもコラーゲンペプチドが配合されている。これは、タンパク質を強化するためだと考えられる。また、コラーゲンペプチド市場が拡大中の米国で最も売れていると言われるコラーゲンサプリメントの製品名は『VITAL PROTEINS(バイタル プロテインズ)』。食品大手ネスレが販売するもので、コラーゲンペプチドはタンパク質の一種であることを伝えながら、美容一辺倒ではない健康的なイメージを訴求している。

 加えて、美容食品に対する国内消費の回復を理由に挙げる意見もある。特に、それまでと比べて外出の機会が増えた22年は「新製品開発や商品リニューアルの話が増えた」。ある原材料事業者はそう話す。別の原材料事業者も、「コラーゲンは定番中の定番。(新型コロナ禍で需要が)一時的に落ち込んだかもしれないが、今でも需要はしっかりあることがドラッグストアの健康食品の棚を見れば分かる。コラーゲンの商品がいくつも並んでいる」と語る。

(つづく)

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