政府、機能性表示食品制度を見直しか 林官房長官、「今後のあり方」取りまとめ指示
小林製薬㈱(大阪市中央区)が販売する機能性表示食品との関連が疑われる健康被害の広がりが社会問題になっていることを受け、機能性表示食品制度が大きく見直される可能性が生じている。
政府は29日夕、同社が製造販売した紅麹を使用する製品への対応を協議する関係閣僚会議の初会合を首相官邸で開き、林芳正官房長官が、機能性表示食品制度の今後のあり方を5月末までを目途に取りまとめるよう指示した。
関係閣僚会議には、機能性表示食品制度を所管する消費者庁を担当する自見英子大臣(消費者・食品担当)をはじめ武見敬三・厚生労働大臣らが出席。会議の中で林官房長官は、食品との関連が疑われる健康被害の情報収集体制の見直しも指示したと報道されている。
また、公開された資料によれば、会議では厚生労働省と消費者庁が今回の健康被害への対応状況などを説明。厚労省は、小林製薬が同社製の紅麹中に確認していた「ピークX」(同社が含有を想定していない成分)はプベルル酸であることが同定されたこと、今後の原因究明は国立医薬品食品衛生研究所で進めることなどを伝えている。
消費者庁長官、全ての機能性表示食品「食衛法遵守が大前提」
自見大臣は同日午前に行った会見で、消費者庁で現在進めている、機能性表示食品の安全性に関する緊急点検の結果を踏まえ、機能性表示食品制度を改めて検証する考えを示した。また、小林製薬の機能性表示食品に生じた今回の問題は、「一義的には食品衛生法上の大きな問題だ」と指摘しつつ、「機能性表示食品制度の手前(食品衛生法)の話も非常に重要。事案の推移を見守りながら適切に対応したい」と語った。
消費者庁の新井ゆたか長官も、自見大臣と同じ趣旨を述べている。28日、小林製薬が問題を公表した後では初の定例会見に臨み、全ての機能性表示食品は「(安全性の確保を事業者の責務と定める)食品衛生法を遵守していることが大前提」であって、機能性表示食品制度は「食品衛生法の上に乗って運用されている」と強調した。また、機能性表示食品制度の見直しについては、「まずは今回の事案(の原因)、それから届出全体の(安全性に関する)総点検の結果を見る必要がある」と語り、制度の見直しを否定しなかった。
新井長官は、昨年発生した機能性表示食品のヘルスクレームの科学的根拠をめぐる「6・30措置命令」以後、機能性表示食品制度を見直す必要があると考えていることを会見で示唆。4月からの来年度中に、海外の機能性表示制度などの調査事業を実施することを決めていた。
食品衛生基準行政、4月から消費者庁が所管
食品衛生法を所管する厚生労働省は13日、健康食品の安全性を確保するための2つの通知(平成14年通知、平成17年通知)を初めて改正(廃止)し、新たな指針(ガイドライン)として発出している。健康食品関連事業者に広く影響を及ぼすことから、事業者向けオンライン説明会を27日に行う予定だったが、今回の健康被害問題に急きょ対応する必要が生じ、いったん中止。日程を改めて開催したい意向を示しているが、現時点では決まっていない。
因果関係は確定していないものの、現時点で5人の死者を出す深刻な事態に至った、原材料も含めた国内製造サプリメントをめぐる今回の健康被害問題を受け、業界の一部からは、発出されたばかりの2つの新ガイドラインの内容が見直される可能性を憶測する声も上がりはじめている。ある事業者は、「健康被害の報告が義務化されるようなことはあり得るのではないか。(最終製品だけでなく)原材料のGMPも議論になるかもしれない」と話す。
錠剤やカプセルなどのサプリメント形状食品関連事業者に対して、原材料の安全性に関する点検、原材料を含めた適切な製品設計、GMPに基づく製造・品質管理を自主的に進めるよう求める新・平成17年通知は4月1日以降、厚生労働省からの食品衛生基準行政移管を受け、消費者庁が所管することになる。
【石川太郎】