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改正特商法・預託法案、消費者特別委で可決

 参議院「地方創生及び消費者問題に関する特別委員会」は4日、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」(改正特商法・預託販売法案)を賛成多数で可決した。今週開催される参院本会議で可決・成立する見込み。

 同委員会で消費者庁は野党の厳しい質問攻勢にさらされた。契約書面の電子化をめぐり、政府は録音再生のような棒読み答弁に終始した。
 
 法案可決後、川田龍平議員は立憲・社民党を代表して反対討論を行った。同じく、共産党の大門実紀史議員も書面交付の電子化について反対の意見を述べた。それより前、質疑に立った大門議員は井上大臣に対して厳しい言葉を投げかけた。

 大門議員が「国会議員である限り、この問題(改正案)について、消費者被害を受けないように、あるいは起きた場合、ずっと責任を感じてほしい」と述べたのに対して井上大臣は「当然のことながら、これからも責任を持ってしっかり取り組んでいきたい」と述べた。
 これに対して大門議員は、「最初、規制改革推進会議が全省庁に紙をなくす努力をしてほしいと言った。具体的に始まった規制改革推進会議のなかで、特定役務だけ何とかしてくれないか。規制改革推進会議がね、だからわざわざ内閣府の●●さんに来てもらって聞いたら、ありませんと。むしろ消費者庁が自ら全部に広げたんで驚いたということを、これは私だけじゃなくて衆議院でも答弁している。そういう認識をちゃんと(大臣に)持っていただきたいということを申し上げて質問を終わる」として質疑を結んだ。

 初代の消費者及び食品安全担当大臣を務めた社会民主党の福島瑞穂議員も、契約書面の電子化について現・井上信治大臣に激しく迫った。以下にその質疑応答を紹介する(ただし、主旨を変えずに一部文体を整えている)。

福島議員「消費者庁の有識者会議で議論になっていなかった契約の電子化について、なぜ導入することになったのか? 消費者庁は経済界が契約書の電子化を求めても、消費者保護の後退になるとして応じてこなかったという経緯があるではないか」

井上大臣「この10年で、国民の日常生活におけるデジタル化は急速に拡大進化しており、スマートフォンの普及率は上昇し、インターネットを介した取引も急拡大している。さらに、令和元年における60代のインターネットの利用率は9割を超え、70代でも7割を超えているなど、国民生活全般におけるデジタル化は、世代を超えて幅広く浸透してきている。
 こうしたなか、昨年来、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、新たな日常が模索されるなかで、国民生活におけるデジタル化とこれに対応するよう、現状の制度を見直す必要性はいまだかつてなく高まっており、これまでの延長線上にないスピードでの改革も不可欠となっている。このため、デジタル社会の中での消費者ニーズに応える観点から、例外的に契約書面等の電磁的方法による提供を可能とすることとし、他方、消費者保護に万全を期すとの考えから、契約書面等の電磁的方法による提供は、消費者の承諾を得た場合に限るとする制度改革を行うこととした」

福島議員「社会がデジタル化していることと、消費者被害をどう食い止めるかは全く別の問題。デジタル化推進の旗を掲げる菅政権が発足し、オンライン英会話学校の要望を受けた政府の規制改革推進会議が、消費者庁に検討を求めていたが、その後、消費者庁でどのような検討がなされたのか?」

井上大臣 「規制改革推進会議において、特定商取引法の一部取引類型の契約書面等について、電磁的方法による提供ができるようにしてほしいという要望が上げられ、合わせて規制改革推進会議の事務局である規制改革推進室から、各省庁の所管法における全ての手続きの書面規制について法改正が必要な事項の検討依頼があった。
 これを受けて、消費者庁で検討を行ったところ、特定商取引法において書面交付義務を事業者に課している制度趣旨が、消費者保護の観点から契約内容を明確化し、後日紛争が生じることを防止するためであり、特定継続的役務提供と訪問販売など他の取引類型と法律上、趣旨が異なるものではなく、各取引類型に横断的に制度改正をすることが適切との判断に至った」

※前述した大門議員の最後の言葉は、傍線部の発言について井上大臣の取り違えを指摘したものである。つまり、大門議員の主張は、規制改革指針会議ではオンライン英会話に限り手続きに関する検討依頼が行われていたというもの。

福島議員「消費者特別委員会のなかで参考人の方が突然浮上してきたと。検討会のなかで全くなかったことが、突然出てきて驚いたということを発言している。規制改革会議成長戦略ワーキンググループ第3回会議で問題提起されたことは、オンライン契約の際の印鑑廃止書面の電子化を進めること。それがオンライン取引以外の対面型訪問販売、連鎖販売にまで、いつの間にか拡大をしている。これは誰が決定したのか? 大臣が決定したのか?」

井上大臣「政策の立案に当たっては、日々めまぐるしく変わる社会経済情勢の変化に機敏に対応し、所管行政において適切に制度や政策のあり方を見直すのは、大臣としての当然の責務と考えている。国民生活におけるデジタル化が進展するとともに、新たな日常が模索されるなかで、この件に限らず、国民の利便性の向上や消費者利益の擁護、増進などを図る観点から、常々、望ましい政策のあり方についても積極的に検討を行うべきと考えている。
 このような全体方針のなかで、事務的には、まず規制改革推進会議において、特定商取引法の一部取引類型の契約書面等の電子交付についても取り上げられ、それを踏まえ、規制改革推進会議の事務局から、各省庁の所管法における全ての民民手続きの書面規制について法改正が必要な事項の検討依頼があったと承知をしている。
 これらを受け、担当大臣である私のもと、消費者庁において検討を行い、消費者の利便性の向上や消費者利益の擁護を図る観点から、消費者の承諾を得た場合に限り、例外的に契約書面等の電磁的方法による提供を可能とする改正を行うこととしたものである」

福島議員「大臣、端的に答えていただきたい。私の質問は規制改革推進会議、成長戦略ワーキンググループ第3回会議で問題提起されたことは、オンライン契約の際の印鑑廃止書面の電子化を進めることだったが、オンライン取引以外の対面型訪問販売連鎖販売等まで、いつの間にか拡大をしている。これは誰が決めたのか? どこで決めたのかかということだ」

井上大臣「これは政策の立案過程だということだと思う。だから当然のことながら、私は消費者庁を代表する立場として責任を持っていろんな検討をし、そして消費者庁全体のなかでこれを決めたということ」

福島議員「消費者問題を議論するのに、いろんな検討会を作って、そこでさまざまな人に話してもらって決めたことを、なぜ突然新たなことを入れるのか。しかも規制改革会議が望んだこと以上のことを消費者庁が決めている。
では質問を変える。消費者庁は、そのように検討する際に、消費者団体、あるいは消費者問題をやっている弁護士やさまざまな人の意見を聞いたか? なぜ検討会をもう1回開かなかったのか?」

井上大臣「この政策を立案する過程のなかで、さまざまな方々からいろんな意見を聞いて、それをもとに消費者庁で検討して決定したということになる」

福島議員「さまざまな方ってどういう人か、どういう意見が出たのか」

井上大臣「昨年末から、消費生活相談や消費者団体の代表、有識者や事業者の代等が委員となっている消費者委員会で、本件について議論を行っていただいており、消費者庁も議論に参加してきたところ」

福島「そこで問題提起はしなかったのか?」

井上大臣「消費者委員会のなかでもしっかり検討していただき、そして消費者委員会からも建議をいただいたということ」

福島議員「今、とりわけ対面型やいろんなものに関して特商法の改正にはみんな賛成をしていたのだが、ここの部分で電子契約になることに関して、ご存知のようにたくさんの反対意見が出ている。弁護士会をはじめさまざまな消費者団体やいろんな人たちが反対をしている。大臣、ここまで反対が出ているのになぜ押し切ろうとするのか、なぜ削除を考えないのか教えてほしい」

井上大臣「今回の制度改正の立案過程においては、消費者にとってのメリットや消費者のニーズとして、規制改革推進会議の委員からの指摘でも、紙の書面の場合、本当は小さくて読みづらいといった限界があるのに対し、電子化を図ることで、消費者のためになるデジタル技術の活用方法がある。また、デジタル情報の方が、証拠が残りやすい、そういったことが挙げられた。
 このほか、顧客が送受信の記録等で契約書面を受領したことの確認が容易になる。紙と比べて紛失等が防止でき、日にちが経過しても、検索機能を使って探し出しやすい。紙の資料と比べてかさばらないし、保管が容易。こういった消費者にとってのメリットやニーズも存在している。他方、消費者利益の擁護の観点から、契約書面の電磁的方法による提供を認める制度を導入することで、その制度により、デジタル機器に慣れていない方々が、消費者被害に遭わないようにするといった視点も極めて重要。このため、今回の制度改正に当たっては、紙での交付を原則としつつ、消費者の承諾を得た場合に限り、例外的に契約書面等に代えて、契約書面等の記載事項の電磁的方法による提供を可能としている」

福島議員 「規制改革会議のことをおっしゃったが、大臣は規制改革会議の立場に立つのか、消費者保護の立場に立つのか?」

井上大臣「これはどちらの側に立つということではなくて、やはり消費者保護、そしてまた消費者の利便性の向上、こういったさまざまな観点から検討して政策を決定したということになる」

福島議員 「消費者の側に立たなくてどうするのか! 消費者被害に遭う人たちの立場に消費者庁が、消費者担当大臣が立たなくてどうするのか! 誰が守れるのか! 何のために消費者庁を作ったのか!」

井上大臣「いや、私の言い方が不正確だったかもしれないが、当然、消費者の側にも立ち、そしてまた、事業者やさまざまな関係者の意見も聞きながら、消費者政策としてどういったことがふさわしいか、これを検討してきたということ」

福島議員「極めて残念。(私は)消費者庁、消費者委員会ができる過程をよく知っている。パロマの事件で息子さんを亡くした方やシンドラーのエレベーターで息子さんを亡くした方や、たくさんの人たちがたくさんの消費者被害、大型詐欺商法に遭った人たちやたくさんの人たち、たくさんの弁護士さんの相談員の人たちがもう何度も何度も何度も、集会を開き、なんとか消費者庁を作ってくれということで、ものすごく運動があった。
 それで野党側のオンブズマン的な消費者委員会と消費者庁と与党と、本当に全会一致で力を合わせてこの2つの仕組みを作ることで、消費者保護をやろうということで実現した。そのときの感動的なことを大変覚えている。

 私は実質的な初代担当大臣になり、消費者庁の職員がものすごく頑張っていた。司令塔になるんだということを掲げた。第1回の消費者基本計画を職員の人が本当に心血注いで作り、全ての人は消費者であると。
 消費者被害をなくすためにどうするのか、全ての人は消費者であり、消費者被害をどうやってなくすか、霞が関のなかで、経済産業省や国土交通省やほかの役所のように業界とはつながらずに、消費者の皆さん、全ての市民社会、全ての国民の立場に立って消費者庁はやるんだという決意だった。それがどうして、消費者被害が起きる可能性があるという、たくさんの指摘に背を向けるのか!」

井上大臣「今委員がおっしゃった、そういった考え方について私も共有しているというふうに考えている。だからそういう意味では、消費者の皆さんのそういった保護のためにもしっかり取り組んでいきたいと思う」

福島議員「さっき、規制改革会議と消費者保護のどっちの立場に立つかと聞いても、両方だとおっしゃったじゃないか。消費者担当大臣は規制改革会議の言うことを聞いちゃ駄目だ。
消費者保護の立場に立たなかったら、消費者庁の意味がないじゃないか。全くない。これは消費者庁始まって以来のものすごい汚点。なぜならば、消費者庁を応援してきたたくさんの人たち、消費者問題に取り組んでいたたくさんの人たちが、これだけはやめてくれと消費者庁に言ってるじゃないか。なぜその声を消費者庁は聞けないのか」

井上大臣「先ほども申し上げたように、消費者側にとってもメリットがあることもあるということだから、何もその規制改革会議と、あるいは消費者側が必ずしも矛盾する、対立するというものではなくて、やはり全体として、消費者利益の保護、また利便性の向上のためにどういった政策をとっていくべきかと。こういったことを消費者庁内で慎重に判断して、そしてこの政策を決定したということになる」

福島議員「訪問販売や、そういうものって突然契約をするから、そこで電子契約ってなると十分チェックしないうちにサインをしてしまうかもしれない。ほかの人がその書面を見て、うちのおばあちゃんおじいちゃん、こんな契約してる。書面見て気付くというようなことも非常に遅れてしまう。本人もどこ見ていいか分からないし、どうやってクーリングオフしていいか分からないという消費者被害が起きることは火を見るより明らか。こんなことやったら消費者被害が起きてしまう。だからみんな反対している。もうこれは予告された人災、政治による災害。大臣、やっぱりみんなが何で反対してるかを考えてほしい。
 (悪質業者が)訪問販売やって、その場で電子契約やって、よく分からないサインしてしまうということがたくさん起きるだろう。そのときに国家賠償請求訴訟、この詐欺の大型裁判のなかで、この法律を作った消費者庁と、この法律を仮に成立させたら、国会が国家賠償請求訴訟の対象になるかもしれない。濃い過失がある、違法性がある損害が発生する可能性が極めて高いにもかかわらず、この法律を作った。消費者庁が国家賠償請求裁判の被告になっていいのか」

井上大臣 「そういった消費者被害が起きないようにしっかり取り組んでまいりたいと思う」

 福島議員はこの後、全国消費生活相談員協会から聞いた話として、電気通信サービスにおける電子的書面通知をめぐって起きている具体的なトラブルの事例を紹介した。

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