改正機能性表示食品制度めぐる説明会 「サプリではない」とする合理的な理由とは
消費者庁は18日と19日の両日、4月1日施行予定の改正機能性表示食品制度に関する説明会をオンラインのライブ配信で開催した。説明者は、同制度を所管する同庁食品表示課保健表示室の今川正紀室長(=写真。昨年11月撮影)。今月中に公布する届出等告示の中身など改正内容を解説しつつ、2日間で延べ180分に及ぶ質疑応答を行った。説明を録画した動画が後日、同庁のウェブサイトに公開される。質疑応答部分についても、主な質疑をピックアップし、回答とともにテキスト形式で公開するという。
4月1日予定、改正制度全面的施行に向け開催
2015年4月施行の機能性表示食品制度は、1年前に明るみに出た小林製薬「紅麹サプリ」(機能性表示食品)を摂取した人の死亡者を含む健康被害問題を受け、政府(紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合)が見直しを決定。有識者検討会の提言などを踏まえて見直しの方向性を定め、消費者庁などが改正内容を具体的に策定していった。
そして昨年9月、食品表示法に基づく内閣府令の「食品表示基準」を改正するなど、関係法令や通知の大幅な見直しを経て、健康被害情報の報告を新たに義務付けるなどした改正機能性表示食品制度が一部施行。同庁は、8月にも改正制度に関する説明会を開催していた。
今回の説明会は、届出情報の容器・包装表示規定の見直し、機能性表示食品のうちサプリの製造・品質管理基準(GMP)義務化といった、来年9月までの経過措置を適用する規定を除いて改正制度を全面的に実施する予定の4月1日に向けて開催。改正制度に関連する法令や通知として以下を示した。
① 食品表示基準の一部を改正する内閣府令(令和6年内閣府令第71号、9月1日施行済み)
② 機能性表示食品のうち天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品の製造又は加工の基準(令和6年内閣府告示第108号、9月1日施行済み)
③ 機能性表示食品の届出等告示(令和7年内閣府告示、4月1日施行予定)
④ 機能性表示食品の届出等に関する手引き(消費者庁食品表示課長通知、3月下旬発出予定)
⑤ 機能性表示食品に関する質疑応答集(同上)
このうち③は、昨年8月下旬発出の届出マニュアル(旧届出ガイドライン)に示されている届出様式や記載要領などの内容を内閣府告示に引き上げ、従来の食品表示課長通知ではなく、法的拘束力を持つ法令として規定するもの。今月末までに公布した後、4月1日に即日施行する予定だとした。「容器包装への表示切替え等の影響が想定されない」ため経過措置期間は設けない。
また、④の「手引き」は、届出マニュアルを廃止したうえで新たに発出する通知。関連法令(府令、告示)の記載内容をはじめ、届出マニュアルのみに記載の内容のほか、質疑応答集のみに記載されている内容の一部で全体を構成し、機能性表示食品として届け出たり、販売したりするための法的要件、要領、考え方といった全体像が分かる手引書とする。約200ページの分量になるという。これに伴い、現行の質疑応答集は改正する。
サプリ該当性、最終製品での過剰摂取リスクが判断指標に
今回の説明会では、去年8月の説明会になかった説明資料として、制度改正で名称が「サプリメント形状の加工食品」から「天然抽出物等を原材料とするカプセル剤等食品」に変わり、告示(前述の②)で規定するGMP規準の実施が義務付けられるサプリについて、サプリとして「届出をしないと判断して良い食品」の考え方をはじめ、「科学的根拠の質の向上」などがあった。容器包装表示規定の見直しについても、「適切な事例」を新たに示した。
4月以降の改正制度では、サプリ以外の加工食品として届け出る場合、サプリではないとする合理的な理由を届け出る必要がある。サプリの定義は、食品表示基準で規定された。「天然物、若しくは天然由来の抽出物を用いて分画、精製、濃縮、乾燥、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合等が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の加工食品」とある。
ただ、サプリにせよ、サプリ以外の加工食品にせよ、機能性表示食品に配合する機能性関与成分を含む原材料は、定義に当てはまる場合が大半。さらに、定義が規定する加工食品の形状には「等」とあるため曖昧で、「サプリ該当性の判断が困難だ」とする声が事業者から上がっていた。そのため同庁は、サプリとして届け出る際の「参考フローチャート」を作成、説明会で示した。

最終的には届出者自らで判断して欲しいという。ただ、「最終製品において、本来天然に存在するものと成分割合が異なっていないもの」と「最終製品(1包装等)の全てを摂取しても、成分の摂取量が本来天然に存在するものと同等程度と思われるもの」については、サプリとして「届出をしないと判断しても良い」とする考え方を示した。
考え方の背景には、サプリにGMP管理が求められる理由があるという。過剰摂取によって健康被害が発生する可能性が高いからだ。そのため、精製されたり濃縮されたりした特定の成分の過剰摂取の恐れが低く、風味を楽しんだり、単独で食事として用いられたりする加工食品は、サプリとして届け出なくても良いとする考え方を示した。
しかし、だとしても「暫定的な措置として、可能な限りGMP管理を実施することが望ましい」とした。望ましさの程度は、上記フローチャートの下に行くほど強まるという。
関係閣僚会合の対応方針に「サプリ横断的な規制の見直し」
説明会初日の質疑応答では、そもそも機能性表示食品は「特定の成分(機能性関与成分)の摂取を目的にした食品」であるから「風味を楽しむもの、という理由でGMP管理から除外することが合理的か疑問」だとして同庁の見解を問う質問があった。今川室長はこう答えた。
「(サプリとしての)届出が必要かどうかという観点で整理している。どこかで線を引く必要があるという観点。その1つの例として、フローチャートを示した。それを参考に、各事業者に判断していただく。(風味を楽しむものだとしてもGMP管理を)やったほうがよい場合もあると思う。そのため、可能な限りGMP管理を実施することが望ましいとさせてもらった。合理的かどうかというよりも、ある一定の線引きをした時にこうなる、というふうにお考えいただきたい」
また、風味を楽しむような機能性表示食品に対して今後、GMP管理を義務づける可能性を尋ねる質問もあった。そうした食品を製造する事業者が「GMP管理を実行する難易度は高い」という。
今川室長は「今のところ、考えていない。あくまでも届出の時に、事業者の(サプリではないとする合理的な)説明のもとで(GMP義務を)外していくということを機能性表示食品ではやっていこうと思っている」と応答した。
ただ、関係閣僚会合が取りまとめた今後の対応方針の中で、「(健康被害問題を踏まえた今後の検討課題として)サプリの横断的な規制の見直しが言われている」と指摘。
「その議論の中で、どこまでがGMPの対象なのかということが議論されるのであれば、機能性表示食品のGMPもそちらに(議論の結果に)シフトしていくような場合もあり得る。そのように一体的にやっていく必要が生じた場合には、今まで(GMP義務のかかるサプリに)該当していなかったとしても該当してくる可能性はあると思う」とした。
【石川太郎】
(文中の画像:消費者庁「機能性表示食品制度に関する説明会」公表資料から)
関連資料:機能性表示食品制度に関する説明会資料(消費者庁のウェブサイトへ)
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