措置命令取消し巡る控訴審始まる 糖質カット炊飯器表示、国と事業者が真っ向対立
糖質カット炊飯器の表示を巡り、消費者庁が下した景品表示法に基づく措置命令を東京地方裁判所が取り消した事件で、控訴審となる第1回口頭弁論が12月3日、東京高等裁判所(三木素子裁判長)で開かれた。控訴人である国側(消費者庁)は、約70ページに及ぶ控訴理由書を提出し、一審判決には「事実認定」と「法解釈」の双方に重大な誤りがあるとして、判決の取り消しを強く求めた。
本件は、㈱forty-four(東京都渋谷区、獅子内善雄社長)が販売する糖質カット炊飯器『LOCABO』(ロカボ)のウェブ広告等に対して、消費者庁が2023年10月、景品表示法違反(優良誤認表示)として措置命令を出したことに端を発する。同社は「美味しさそのまま糖質45%カット」と表示していたが、消費者庁は、通常の炊飯と同様の炊き上がりで糖質を大幅にカットできるかのような誤認を一般消費者に与えると認定した。
これに対し一審の東京地裁は25年7月25日、消費者庁による「表示の意味内容の認定」自体に誤りがあるとして措置命令を取り消す判決を言い渡した。景表法に基づく措置命令が裁判所で取り消されるのは初めてのこと。
国側の主張:複数の重要な要素が看過されている
控訴審で国側は、一審判決がウェブ表示の評価方法を誤り、一般消費者が受ける全体的な印象を正しく捉えていないと主張。表示の評価において、複数の重要な要素が看過されている点を問題視している。
具体的には、調理方法を説明するアニメーション動画といった動的コンテンツの存在を考慮していない点や、サイト冒頭で頻繁に切り替わるローテーションバナーが与える視覚的効果を無視している点。また、消費者がウェブページを常に上から順に読み進めるとの画一的な前提に立ち、先に形成された強い印象が後の情報によって容易に修正されると過大評価していると批判した。
さらに、炊き上がりの比較対象について、本来は当該商品の通常炊飯機能による米飯と比較すべきであるにもかかわらず、地裁は「世の中の平均的な米飯」と比較しているとし、比較基準のすり替えがあると主張。JIS規格における炊飯品質の記述を、美味しさの同一性を判断する基準として用いた点も不適切だとした。
国側は、こうした誤りが積み重なった結果、地裁判決は「一般消費者が表示から受ける印象」の認定を誤ったと結論付けた。
forty-four社側の主張:表示評価は常識的、地裁判断は妥当
これに対し被控訴人であるforty-four社側は、地裁判決は争点を的確に捉え、常識的な事実認定を行ったものであり、違法性はないと反論した。
同社側は、「美味しさそのまま」という表現は多義的かつ主観的な表現であり、味や見た目、香り、食感などが全て通常炊飯と完全に同一であることを意味するものではないと主張。全体としてのバランスが保たれている程度の意味合いに過ぎず、これをもって「通常の炊飯と同様の炊き上がり」と認定するのは飛躍があるとした。
また、国側が強調するアニメーション動画やバナー表示についても、消費者が必ずしも一方向的に情報を受け取るわけではなく、ウェブページ全体を俯瞰しながら理解するのが一般的だと指摘。消費者庁こそが、自らの認定に不都合な表示や説明を軽視、あるいは無視していると反論した。
さらに、景品表示法7条2項についても、資料提出を求める段階では「疑い」や「おそれ」で足りるとしても、措置命令を発する段階では正確な事実認定が不可欠であり、誤った認定を前提に立証責任を転換することは許されないと主張した。
次回(第2回口頭弁論)は、26年2月16日14時から開催される予定。
【藤田 勇一】
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