抗疲労成分SAC普及、備前化成の本気度 【機能性表示食品特集】デジタル広告などで消費者認知向上図る
略称「SAC(サック)」。正式名称「S-アリルシステイン」。ニンニク由来の機能性関与成分の届出が増えている。主な訴求機能は、身体的あるいは精神的な疲労感の軽減。届出サポートを手がける原材料メーカーは複数あり、そのうち1社が、ニンニクエキスの製造販売で40年以上の実績を持つ備前化成㈱(岡山県赤磐市、清水富江社長)。SACの消費者認知を高めようと、自ら普及啓発にも乗り出している。
SAC高含有ニンニクエキス 独自開発の発酵技術で実現
SACは、含硫アミノ酸の一種。強い抗酸化作用をはじめとするさまざまな生理活性を持つことが以前から報告されていた。一方、その認知度は、一般消費者から健康食品業界まで極めて限定的。健康食品素材として認知度の高いニンニクに由来する成分ではあるものの、生のニンニクにはほとんど含まれず、発酵させた黒ニンニクや熟成ニンニクにやっと含まれるようになる成分であったためだと考えられる。
しかしSACは現在、機能性表示食品の機能性関与成分として届け出されている(エキスの指標成分としての届出もある)。その数もじわりと増加。先ごろ、通販大手が初めて届け出た機能性表示食品の機能性関与成分の1つがSACだった。
備前化成に話を戻す。1980年代にニンニクエキスの製造販売を始めていた同社は、SACに以前から注目。ニンニクエキス中にSACを高含有させる技術開発を進めた。
数年前にそれを実現。SAC含量を大幅(およそ200倍)に高める発酵技術の開発に成功し、SACを高含有(10mg/g以上)するニンニクエキス粉末を開発した。
それが、同社が現在、機能性表示対応素材として原材料販売および届出サポートを進めている「SACニンニク」。その有効性を検証するヒト対象研究論文を採択した研究レビュー(SR)に基づき、次のヘルスクレームを行えるようにした。
「注意力や思考力などを使う精神的な作業負荷による一時的な精神的疲労感を軽減することが報告されています」。
同社では、SACニンニクを、同社を代表する健康食品素材に育て上げようとしている。そのために、まずは高める必要があると考えたのがSACに対する一般消費者の認知度。「脳疲労」をキーワードにした新カテゴリの創出を目指す目標も掲げた。「(最終製品)販売会社がSACを配合した機能性表示食品を発売したくなるような新たな分野を創り上げたい」(市場企画部)と話す。
「脳疲労」キーワードに普及啓発 需要見越して新工場
具体的な取り組みを見ると、毎年3月9日を「SACの日」とすることを日本記念日協会に申請、登録されたのを皮切りに、今年3月、都内で開催された朝日新聞社主催のイベントで行われた脳科学者、茂木健一郎氏の講演をスポンサード。同社の研究開発担当者と茂木氏がSACについて語り合う場面もあった。
「脳疲労」をキーワードにしたデジタル広告も展開。大阪、博多、岡山、品川の各ターミナル駅でデジタルサイネージ広告を同月下旬から6月末までの予定で順次進めているほか、YouTube上にも広告を投下。再生回数は、早い段階で190万を大きく超えたと言うから、投資額は決して少なくなかったとみられる。
SACに対する同社の本気度をうかがえるエピソードは他にもある。
同社は昨年、約3.5万平方メートルの土地を岡山県の工業団地内に取得。約4.5億円を投資して土地を得た目的の1つは、健康食品原材料製造工場の新設だが、それを必要とする理由の第1は、SACニンニクの生産キャパシティの拡大、だと言う。国内外におけるSACのポテンシャルを見越し、それだけの将来需要を見込んでいることになる。
まずは年内、SACを配合した機能性表示食品の届出件数がどこまで増えるかが注目される。
【石川太郎】
(冒頭の画像:SACニンニクを普及啓発するデジタルサイネージ広告。大阪駅。備前化成提供)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:岡山県赤磐市徳富363
TEL:086-995-3311
URL:https://www.bizen-c.co.jp/
問合せ:https://www.bizen-c.co.jp/inquiry/
事業内容:医薬品(医療用医薬品の原薬,一般用医薬品)・医薬部外品・健康食品素材・健康食品の製造販売
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