成熟期に突入した九州ヘルスケア市場(後)
<成果を挙げつつある振興策>
九州のヘルスケア産業振興策は、中央省庁の出先機関や各県、地元企業、大学などが連携して展開される。地域の特産物を活用した素材や最終商品の開発を支援する動きが本格化している。
経済産業省九州経済産業局によるヘルスケア分野の振興策は、九州地域バイオクラスター推進協議会などを通して展開される。同協議会の主なプロジェクトに、「おやつプロジェクト」、「ヘルシーファーミングプロジェクト」、「発酵活用研究会」などがある。
顕著な成果を上げつつあるのが、ヘルシーファーミングプロジェクトだ。これは、欧州最大の乳酸品・動物飼料の生産地域にある食品クラスター「Valorial」との交流によって生まれた国際連携事業。フランス産のn-3系脂肪酸を含む飼料を輸入し、九州の生産者が牛・鶏・豚・馬などに給餌している。飼料には、n-3系脂肪酸を豊富に含む草や、亜麻・ルピナス・ソラマメなどの種子を使用。同協議会では、基準を満たした牛肉・牛乳・鶏卵・馬肉などを承認している。
おやつプロジェクトでは、地域素材を活用した「健康おやつ」の開発を目指す。食品素材の機能性をテーマとした勉強会や情報交流会を開催し、マッチング支援を実施。販売店との商談会を開くなど、販路拡大の支援も展開する。
<注目を集める佐賀の動向>
佐賀県唐津市にコスメティック・バレーを構築する動きが活発化してきた。(一社)ジャパン・コスメティックセンター(JCC)が中心となって展開している。JCCは関連企業、生産者、研究機関、行政機関などで構成。美容・健康・素材・交流を柱とした国際的なコスメティッククラスターの実現を目標に置く。
地域の素材を活用した原料や商品の開発、販売を支援。産学官連携による競争力のある素材の開発に力を入れる。情報発信や経済交流の拠点化などにも取り組む。また、企業誘致も進めており、成果を上げている。
佐賀県で注目を集めているのはJCCだけではない。昨年7月、佐賀市と関連企業による「さが藻類バイオマス協議会」が発足した。今年4月には、佐賀大学に藻類開発研究センターを設置。佐賀大学との連携により、地域で採れる各種藻類に含まれる有効成分の探索に乗り出した。化粧品や健康食品・サプリメント、農業への利用を念頭に置いて取り組む方針だ。地域で採れる藻類のうち、有効成分を豊富に含み、培養しやすいものを探索する考えだ。
※詳細は「Wellness Monthly Report №6」(12月末発刊)に掲載予定。
(了)
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