情報の信頼性確保がポイント~第6回「消費者裁判手続特例法検討会」
消費者庁は17日、第6回「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」(消費者裁判手続法検討会)を開催した。
今回の検討会では、「特定適格消費者団体の活動を支える環境整備」、「対象消費者への情報提供の在り方」、「実効性、効率性及び利便性を高める方策」について議論した。
今年2~3月に行った、消費者団体訴訟制度の実態に関する特定適格消費者団体からのヒアリングによると、団体の認知度、財務・人的基盤の不足が課題として明らかになった。
河野康子委員は、「被害を自覚した消費者がまず頼りにするホットライン188や全国の消費生活センターの窓口や相談員が得た情報を、なるべく早く共有する仕組みをつくるべきだと考えている。一般への周知としては、消費者月間を設けているが、そこで、特定適格消費者団体の役割や活動内容を広報するなど、認知度を高める工夫が必要」と意見した。さらに財政面について、「差し止め請求訴訟関係業務に関しては、一連の活動から得られる直接の報酬はない。活動の結果、公正なマーケットの構築に大きく寄与しているものの、その活動はボランティアの域を出ることはない。団体が持続的に活動できるような財政面の仕組みづくりが不可欠」と問題提起した。
事務負担の在り方に関する方策について、大高友一委員は、「効率化を図るうえでIT化は全面的に賛成。一方で、いわゆるIT弱者に対する配慮が必要。また、IT化するためにはシステム開発に相当な費用がかかる。団体の現状からして、行政の支援が必要不可欠」と述べた。
大屋雄裕委員は、団体の認知度に関する課題に対して、「その団体が実在するものかどうか、信頼できる団体であるかどうかなどについては、国が証明書を発行する、各団体のホームページなどにリンクするための確かな導線を確保するなどの支援が必要」とした。
対象消費者への情報提供の在り方について、その方法、各主体の役割を中心に議論された。大高委員は、「オンラインを中心にPUSH型の通知が増加しており、フィッシングや詐欺的な商法が含まれる通知も存在することから、対象消費者が関心を示しているいないにかかわらず、まずは、その情報の信用性や、情報提供元や場所への信頼感を確保することが重要」と指摘した。
河野委員は、「団体と事業者の両当事者だけでなく、信頼できる第三者として、消費者庁や国民生活センター、全国の消費者センターのホームぺージなどへの掲載による広報もお願いしたい」と意見した。
沖野眞已座長代理は、「まずは情報の信頼性確保が重要で、そのためには行政の役割は無視できない。次の段階として、制度や団体への認知度が高まれば模倣が増える。いずれにしても消費者に対して、提供された情報にアクセスしても大丈夫だという安心を提供することが重要」と指摘した。
各主体の役割として、大高委員は「情報提供の実効性を確保するため、各主体の基本的な役割を明確にしつつ、事案ごとに効果的な情報提供を実施する仕組みも必要。そのうえで、クレジットカード会社やデジタルプラットフォームなど第三者の協力を得る仕組みを構築できないか」と指摘した。垣内秀介委員は、「第三者は当事者ではないため情報提提供のハードルは確かに高いが、第三者が保有する情報が重要な情報だと認定できた場合は、団体が提供を求めることができるよう法制度を作るべき」と指摘した。
大屋委員は、「PUSH通知の模倣は、日々私たちがスパムに悩まされていることと同様、ある一定数発生すると考えられる。そのため、信頼できる情報である旨を証明する、公的な方法の提供が必要。信頼できる相談窓口の紹介や、そのための導線の設定、情報発信のための媒体やアクセス・情報保管のための信頼できるサーバーの確保などが必要となる」と指摘した。
同検討会は、7月~8月ごろに取りまとめを行う予定。
【藤田勇一】