思い出す力をサポートするのは「成分」か?「商品」か?
きょう(19日)販売された大手新聞社の朝刊の折込チラシに次のような広告が入っていた。
「こんな老いるショック、ありませんか?」とのキャッチで、60代後半から70代半ばまでの男女の物忘れをめぐる事例をイラスト入りで紹介。
“同じような経験あるある!というあなたへ”という吹き出しを付けて、中央にでかでかと「考える力と思いだす力をサポートする」、「オメガ3脂肪酸(DHA EPA)を毎日660㎎摂りませんか。」と赤色を交えた太ゴシック体で印字。
左側にマグロの握りずし2貫とサプリメントのカプセルをイコールで結び、その下に商品写真と価格を載せている。
「詳しくは裏面をご覧ください」☞として、マグロの産地とその水揚げの様子を写した写真、体験談、申し込みはがきとフリーダイヤルの電話番号などが紹介してある。
新型コロナウイルスの感染拡大が治まらないなか、多くのコロナ便乗商品が世に出回り、その一部は消費者の誤認を与える不当な広告表示として取り締まりを受けている。
一方、機能性表示食品では昨年下旬、免疫機能を標榜した商品が消費者庁のホームページで公開されて話題となった。
関係者が心配するのは、コロナ禍のなか、免疫表示に対して、あたかも抗ウイルス作用を持っているかのように勘違いした消費者が商品を多量に摂取したり、機能性表示食品でもないのに、別の事業者が類似の広告宣伝を行ったりすることで、購入者に健康被害を生じること。
また、悪質な事業者が誇大広告を使って被害者に経済的に大きな負担をかけたりすることである。
冒頭に紹介したチラシに掲載された商品は、機能性表示食品ではない。ただ、「思い出す力をサポートする」との文言は、同じ成分DHA・EPA(オメガ3系脂肪酸)を含む機能性表示食品の表示のなかに使われている文言の一部だ。その表示は次のようなものである。
「本品にはEPA・DHAが含まれます。EPA・DHAには、中高年の方の加齢に伴い低下する、認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力、空間認識力を維持することが報告されています。 ※記憶力とは、一時的に物事を記憶し、思い出す力をいいます」。
機能性表示食品でもない商品に、果たして「思い出す力」をサポートする力があるのか? それともここで指しているのは、商品ではなく、機能性表示食品で配合されているオメガ3系脂肪酸のことなのか?そうだとすれば、商品には「思い出す」機能はないということになる?
機能性表示食品として届出を行っていない商品がこのような表示をして販売されることが、いいのか悪いのか?
今後、売る側の姿勢が問われると同時に、作る側も買う側も、よくよく注意しなければならないケースの1つである。
【田代 宏】