微生物等関連原材料指針の目的とは 消費者庁専門官が解説、「意図しない成分の混入防ぐために」
サプリメントなどに使用する原材料の製造・販売会社や、最終製品の受託製造会社を中心に116社が加盟する健康食品業界団体の(一社)日本栄養評議会(CRNジャパン、徳丸浩一郎理事長)は23日午後、「微生物等関連原材料」をテーマにしたセミナーを都内で開催、業界関係者ら約120人が聴講した。同原材料に関連する通知を所管する消費者庁の専門官が講演。通知に含まれる「微生物等関連原材料指針」の目的は、想定されない成分が微生物等関連原材料に混入するのを防ぐための管理を行うこと、それよって同原材料を使用する最終製品の品質を確保することだと強調した。
CRNジャパン主催セミナーで講演 業界関係者約120人が聴講
このセミナーは、昨日まで東京・有楽町で開催された健康食品関連の展示会「健食原料・OEM展2025」の主催者(㈱ヘルスビジネスメディア)セミナーの枠組みで開かれた。業界関係者の関心は高く、開始前、セミナー会場前には長蛇の列。会場に用意された座席が足らず、立ち見で聴講する人も多かった。
セミナーで講演した消費者庁の専門官は、食品衛生基準審査課に所属する荒川裕司氏で、「微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品のGMP指針に関する解説」をテーマに講演、同庁が所管するサプリの安全性確保に関する指針、通称「3.11通知」の別添2「GMP指針」を昨年末に一部改正し、新たに盛り込んだ「微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針」(微生物等関連原材料指針)について、解説した。3.11通知は、日本で販売されるサプリ全般を対象にしている。
生物等関連原材料指針は、小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を受け、GMP指針に追加された。微生物等関連原材料の定義は、「微生物等(藻類を含む)の培養または発酵工程を経て生産される原材料」とされている。同指針では、そうした原材料を使用するサプリの安全性(品質)を確保するために、微生物等関連原材料の同等性あるいは同質性を確かめるための規格を設定し、その規格と合致しているかどうかを最終製品製造工場での受け入れ時などに確認するよう求めている。
同指針ではまた、設定すべき規格について、味、色、においなどの官能的な指標のほか、微生物等関連原材料全体のプロファイル(パターン)分析などを例示。設定された規格と合致しているかどうかの確認方法については、官能試験のほか、クロマトグラフィなどの理化学機器を使った原材料全体のパターン分析などを挙げている。
規格設定できない場合どうする? GMPに基づく製造・品質管理も代替に
荒川氏は講演で、微生物等関連原材料について設定を求める規格にパターン分析を例示した理由について、「ターゲットは(微生物の増殖過程や製造工程で生じる可能性のある)想定していない成分(の混入を防ぐこと)。特定の成分だけを見ていると、想定しない成分を検知できない。検知するためには(原材料全体を)網羅的に検査する必要がある」と説明した。
ただ、「パターン分析を行うことが目的ではない」とも述べ、目的は、「想定しない成分を混入させないことだ」と強調。その目的を達成できるのであれば、別の規格に代替することも出来るとしつつ、そうした代替規格を設定するのも困難な場合について、微生物等関連原材料の製造者がGMPに基づく製造・品質管理を行っていることをもって代替できる、との考え方を示した。微生物等関連原材料をめぐり同課が作成したQ&Aには次のようにある。
「具体的な規格の設定が困難である場合、製品製造者が原料受入の規格と判断するためには、原材料製造者において、GMPに則った製造管理及び品質管理を実施し、その管理内容について、製品の販売者と連携の上、製品製造者として妥当性を確認するとともに、ロットごとの試験成績書において GMPに則った製造が行われたことを確認するなどにより、原材料の同等性/同質性を確認することが必要になります。
その場合、あらかじめ特定した想定されるリスク因子だけでなく、想定していない成分や微生物等を確認できることが必要です。例えば、培養又は発酵工程における微生物等の変異、混入、精製工程の変更といった重大な工程の変更、さらに複数の菌が混在する場合は組成の変化等のリスク因子を考慮し、不純物も含めた原材料の同等性/同質性を確認するための具体的な手順を製品標準書等に規定し、逸脱した場合には出荷を見合わせ、リスクを評価することが重要です」
微生物等関連原材料指針を巡っては、対応に戸惑う事業者も多い。荒川氏は講演の最後、「指針を運用していくにあたり、何か質問があれば、ぜひ消費者庁に(連絡を)いただければ。必要があれば、Q&Aの追加も検討していきたい」と述べた。
【石川太郎】
(冒頭の写真:東京国際フォーラム内で開催されたセミナーの様子)
関連資料:微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針に関するQ&A(消費者庁ウェブサイトへ)
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