広告規制を消費者庁が解説~食と健康セミナー
(一社)日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)と街の健康ハブステーション推進委員会は18日、「食と健康セミナー」をオンラインで開催した。第1部では、消費者庁表示対策課ヘルスケア表示指導室の田中誠室長が「健康食品の表示規制の現状と今後」と題して講演した。
田中室長は、「健康食品の広告規制の誤解」、「健康食品の表示規制について」、「JACDS『食と健康』販売マニュアル」、「打消し表示について」の4点に絞って詳しく説明した。
講演で同氏は、新型コロナウイルス感染症の拡大に乗じて、「火事場泥棒みたいに新型コロナへの予防効果を標榜する不当表示に対しては、引き続き厳正に対処する」方針を強調した。
抽象的表現「元気はつらつ」はOK
表示規制については、「端的に言えば、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品などの保健機能食品以外で、効果効能を標榜してはならない」と断言、可能な表現として「健康、美容、元気などの抽象的な表現ならOK」と述べた。従って、過度な期待を抱かせない範囲で大手製薬メーカーがCMなどで用いている「元気はつらつ」などの表現であれば大丈夫。田中室長は「真の効果を歪みなく、ありのままに表現すること」と強調した。
「体験談」も広告 「個人の感想」はNG
また、誤認を与える強調表示を行ってはいけないという原則に立ち、そもそも強調表示は誤解を与えてはならないとする田中室長は、「体験談も広告とみなす」と述べ、「※印の後に『個人の感想』などと書いても、消費者の認識を打ち消すものではない」とした。これは、消費者を対象とした大規模調査によって、「消費者は体験談を信じやすい」との結果から導き出した規制だということを明らかにした。コロナ禍で増えている予防器具などで「使用環境によって効果が異なります」なども、「消費者に伝わらなければエクスキューズにならない」と説明した。
「PICO」合理的根拠の参考に
田中氏は過去の判例を示し、不当表示とみなされた場合、実証責任は事業者にあると指摘。広告を作成する以上は、実際の合理的根拠を示す考え方を理解する必要性を強調した。実際のエビデンスと内容の表示について、かつて機能性表示食品で16社に措置命令が出された事例を引き合いに、臨床試験で用いるクリニカルクエッション「PICO」の考え方を参考例として示した。
POP広告は規制の対象
JACDSの「『食と健康』販売マニュアル」については、「薬と機能性表示食品を混同させない」、「機能性表示食品とトクホ、栄養機能食品、いわゆる健康食品を混同させない」、機能性別の陳列展示が必要とし、「個別の商品への顧客誘引は広告とみなされるため、ドラッグストアが自ら行う(POPなどの)広告表示は規制の対象となる」と警告した。
具体的には、専門家がエビデンスに基づいて顧客に説明するのは良いが、(表示で)疾病の予防効果を暗示する場合はだめ」とした。平たく言えば、健常人の健康維持・増進をサポートする範囲の表示に留めなければならないということ。
同氏は、新たな販売マニュアルによる展開が、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品、いわゆる健康食品の違いについて、消費者の理解の手助けになることを期待するとも述べた。
【田代 宏】
(冒頭の写真:JACDSの資料より)
つづく