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小野薬品ヘルスケア・トップに聞く 初のBtoC事業「乗り越えるべきハードルある」

 今年3月、機能性脂質(DHA・EPA・DAGE=リン脂質)を機能性関与成分とする機能性表示食品『レムウェル』の発売を通じてサプリメント・健康食品事業に新規参入した医薬品メーカーの小野薬品工業㈱(大阪市中央区)。脂質に着目したのはなぜか、足元の販売状況はどうか、第2弾商品の概要と発売の目途は──小野薬品ヘルスケア㈱(同)代表取締役社長を務める野田康成氏(=写真)に話を聞いた。

健康食品事業参入の背景に機能性脂質研究

──ここにきて製薬企業が、とりわけ後発医薬品メーカーが、健康食品事業に参入する動きが目立っています。こうした動きをどう受け止めていますか。

野田 他社の動向に関するコメントは差し控えさせていただきますが、製薬会社の研究で培った資産を活用し、質の高い臨床試験にて検証した成果に基づき製品化することは、消費者の商品選択の幅を広げることになり、結果的に、機能性表示食品を始めとする健康食品の価値向上にも繋がるのではないかと思っています。

──医薬品メーカーが医薬品以外のヘルスケア事業を手掛ける理由は?

野田 当社は、超高齢社会の進展に伴うさまざまな社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会に貢献していきたいと考えており、これまでの医薬品の研究開発で培ってきた小野薬品の資産を、最大限に生かせるヘルスケア事業を手掛けることになりました。

──研究資産について具体的に。

野田 プロスタグランジン製剤を代表とする生理活性脂質の研究開発で培った脂質領域での研究成果のことです。小野薬品は脂質研究、もっと言えば複雑な構造を持つ機能性脂質の研究を50年間続けてきました。例えば、生理活性脂質の1つであるプロスタグランジンは、ごく微量で多様な生体反応を示すことから、1960年代には「夢の物質」として世界中で研究が進められましたが、非常に不安定な物質だった。そのため、当時は世界中の誰もが、そうした不安定な脂質の創薬は不可能だと考えていました。しかし私たち小野薬品はプロスタグランジンの大量合成への挑戦を続け、その結果、企業として世界で初めて全化学合成に成功し12個の新薬を創出することができました。

 脂質は、構造が複雑になればなるほど創薬化は困難を極める。ただ、小野薬品の研究員による「身近にある自然由来の食品から摂れる単純な脂質でも、健康に寄与することができるのではないか?」という一言から、これまでの脂質研究で培った資産を健康食品に応用するという発想が生まれました。それが、「リビド(脂質)サプリ・プロジェクト」として、健康食品事業の立ち上げを検討し始めたきっかけです。

 「人間の体は、水と脂でできている」と言われます。そのうち、特に細胞膜を構成する脂質は、水に溶けない油の性質と水に溶けやすい性質の両方の性質を持つリン脂質で構成されています。こうしたリン脂質が持つユニークな性質に注目し、リン脂質を豊富に含み、その上で安定供給が可能、かつ、普及しやすい価格で提供できるものを製品化することにしました。

──そのようにして開発されたのが第1弾商品となった機能性表示食品の『レムウェル』です。発売は今年3月とまだ半年程度ですが、現在の販売状況を聞かせて下さい。

野田 売上高や売上目標などに関する具体的な数字は非公開ですが、おかげ様で発売以来、ご使用いただいたお客様から「ぐっすり眠れるようになった」、「夢を見るようになった」などといった声が多く届いています。このような声を頂戴しているのは、2つの臨床試験(RCT)を経て、機能性脂質が睡眠に資するという確かなエビデンスに基づき開発された商品だからこそだと考えています。

今後の製品開発、「機能性脂質から外れることはない」

──小野薬品グループとして初のBtoC 事業です。苦労も多いのでは。

野田 足もとの課題として乗り越えるべき2つのハードルがあると理解しています。1つは、顧客基盤をどう拡大していくか。医療用医薬品の事業がメインである当社の場合、医療従事者への情報提供や収集活動がメインで、一般消費者の方への顧客基盤はほぼありません。そのため、収益の安定化に必要なロイヤル顧客、つまりお得意様をどう育てていくか試行錯誤しているところです。今後のヘルスケア事業でも案内先として活用できる対応策を急ぐ必要があると考えています。

 2つ目は、BtoC事業に関するノウハウのさらなる獲得です。レムウェルの発売にあたっては、経験者の中途採用で販売体制の構築まで実現できました。ただ、今後はインターネット広告などを活用して効果的なプロモーションを随時、打ち出していく必要があります。お客様の嗜好も経済情勢も目まぐるしく変わる時代ですから、こうした課題を迅速に解決できるかどうかが事業成功の鍵を握ると考えています。

──レムウェルに続く第2弾、第3弾商品の構想は?

野田 幾つか検討していますが、具体的な製品概要は今後のお楽しみとしてお待ちいただければと思います。いずれにせよ、小野薬品ならではと言える研究資産を生かせる機能性脂質から外れることはありません。

【聞き手・文:石川太郎】

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