対談 ネット通販業界の二極化
新規の通販事業者が数多く誕生するなか、業績を伸ばす通販事業者と低迷する事業者の二極化が進んでいる。ネット通販業界の現状と課題について、さくらフォレスト(株)代表の高島励央氏と(株)リプライオリティDMグループリーダーの黒澤嘉氏が意見を交わした。
さくらフォレスト(株) 代表取締役 高島 励央 氏
2011年に企業の組織づくりを得意とする経営コンサルタント会社(株)ココシスに入社。14年に取締役に就任すると同時に、事業部が分社化され設立されたさくらフォレスト(株)代表取締役に就任。15年からは美康櫻森有限公司董事を兼務し、海外展開にも注力する。
(株)リプライオリティ DMグループ リーダー 黒澤 嘉 氏
広告代理店や大手通販企業を経て16年、同社に入社。自社における健康食品や化粧品などのリピート通販商材で、年間500万リスト以上のアウトバウンド実績から得たデータを基に、各通販会社の課題に合わせた企画提案により、売上に直結する顧客ロイヤリティー向上を支援する。
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さくらフォレスト(株)代表の髙島励央氏
<商品開発の段階から差が出る>
高島 当社では新商品の開発について商品開発部が主導で行うのではなく、企画段階からマーケティングや営業だけでなく、CRMやコールセンター、ロジスティックスの担当者などの全ての部署のスタッフが関わるようにしています。また、お客様の声から商品を作ることが多いです。お客様を含め、社員と会社全体で作った商品が多いということです。
黒澤 私たちもアウトバウンドのコールセンター事業者として、消費者の声を拾って分析し、成果につなげていくことの重要性は認識していて、その点は共通していますね。
高島 商品を作るコンセプトが必ずあり、成分でも価格でも、消費者の声の反映具合でもよいので、「日本一と思える商品を作ろう」というモットーで開発しています。
黒澤 アウトバウンドは案内することが仕事だと思われがちなのですが、まずはお客様の話をしっかり聞くことが重要ですよね。当社では休眠のお客様にアプローチすることが多いのですが、「また購入してください」や「今回はこのような特典を付けました」と案内しただけではそう簡単に買ってもらえません。ヒアリングを重ねることで購入したときの気持ちを思い返していただき、もう一度買ってみようという動機づけになればと考えて実践しています。
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(株)リプライオリティ DMグループリーダーの黒澤嘉氏
<アウトバウンド=コミュニケーション手段と捉える>
黒澤 当社の視点で言うと、自社でアウトバウンドをしている会社、アウトソーシングをする会社、そもそもアウトバウンドをやらない会社と大きく3つに分かれます。貴社は自社でアウトバンドをしていますが、そもそもアウトバウンドは貴社にとってどういう位置づけですか。
高島 アウトバウンドと捉えていません。メールや手紙などと同じように、あくまでもお客様とコミュニケーションを取る手段の1つであると考えています。実際、アウトバウンドを行うことのデメリットも感じたこともありませんし、お客様から電話がかかってきたことに対するクレームを受けることもありません。ネット上の店であっても実店舗と同じで、お客様が来れば「いらっしゃいませ」、帰るときには「ありがとうございました」と言うべきで、それがアウトバウンドであると捉えています。
黒澤 当社にアウトバウンドを依頼する通販会社様からは、「買う人の声も重要だが、買わない人の声も同じく重要。その両面を知れるということがアウトバウンドの良いところ」と言われます。私たちはこの買わない声を分析し、商品開発やサービス内容、セールス方法の見直しのヒントになればと分析データを提供しています。
高島 貴社のようなコールセンター事業者は、さまざまな会社からの依頼を受ける分、多くの失敗例や成功例を収集できるというメリットがあると思います。そうした実例をヒントとしてほかの通販会社に提供することはありますか。
黒澤 具体的な固有名詞や会社名は守秘義務があるので出せませんが、他社での成功事例を紹介しながら企画提案することもありますし、それが当社の強みだと思っています。商品のことをわかりやすくお伝えすることも重要ですが、その商品を作った会社の思いも一緒に言葉に乗せることが大切だと考えています。
(文・構成:藤田 勇一)
※詳細は「Wellness Monthly Report 第16号」(10月31日発刊号)に掲載。