富士カプセル、医薬品レベルのカプセル技術など提案強化(中)
<高度な品質管理システムを構築>
健康志向の多様化で、原材料まで考慮した製品づくりが求められるようになってきた。渡辺和彦開発本部長は、「日本国内では今のところ、カラギーナン(カラギナン)フリーはほとんど言われていないが、米国ではほぼ絶対になりつつある。いずれ国際標準になると想定されることから、今が他社と差別化できるチャンスと捉えている」と説明する。また、渡辺氏は「新しい技術の開発が求められ、クライアントからは飲料の中にカプセルを入れた商品を作りたいという要望がある。殺菌工程で、従来のカプセルは熱や酸に弱い性質があるため、耐酸・耐熱性の素材を見つけてカプセル化できるように研究開発を進めている」と話す。
そこで同社では、ゼラチンやカラギーナン(カラギナン)を含まず、成分としてジェランガムやデンプン、可塑剤などを使用したソフトカプセルを開発した。ベジタリアンやヴィーガン、宗教上の理由で動物由来の製品が食べられないケースにも対応できる。ジェランガムは、発酵によって得られる天然の多糖類で、ゼリーや飲料、ジャム、ドレッシングなどのさまざまな食品に使用されている。内容物として、油脂類や粉末、エキス類を含有させた液体のカプセル化も可能という。動物臭がしないため、化粧品などへの応用も可能としている。
製品の品質保証については、製造工程ごとの検査に加え、熟練したスタッフが最新の機器を駆使して、原料の受入試験、中間製品および最終製品の総合試験・検査を行い、製品の高度な品質を保証している。さらに、製品が最終出荷されるまでに、これらの製品試験・検査に加え、製造記録などから総合的に製品の品質判定を行っている。
<「オープンイノベーション」をキーワードに>
同社では、大学や他企業との連携を強め、「オープンイノベーション」による共同開発事業にも取り組んでいる。14年のイノベーションセンター設立を機に、クライアント企業と一緒に製剤化に関する課題を解決する共同開発事業にも注力してきた。今後も、市場のあらゆる要求に答えられるようにカプセル化技術を磨き、さらなる革新(イノベーション) を起こすことで、事業を拡大・創造していく考えだ。また同社は、イノベーションセンターを有効活用することで、スピード感のある研究開発を推進し、世界を見据えた夢のある技術を創造していく方針を示している。
さらに同社では、アカデミアとの積極的な研究交流会を開催し、最先端の学術と開発現場がタッグを組み、新たな領域の開拓にも挑戦している。
(写真:アイソレータ(この中で高活性物質を秤量し、溶解または湿潤))
(つづく)
【藤田 勇一】
(前) / (後)