寄稿「改正ガイドライン」に思うこと
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 竹田竜嗣
「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が9月29日付で改定された。金曜日の夕刻あたりに消費者庁の公式サイトにアップされたようで、今後、各所からさまざまな意見が出てくると思われる。
消費者庁の改正に関する通知文書では、「Prisma声明2020」への対応更新、UMINなどの研究登録データベースの事前登録について、届出内容の責任の所在の明確化、鼻や眼のアレルギー反応に関する評価など、機能性表示食品制度で参照しているガイドラインの更新や廃止に伴う変更を行ったことに伴う改正とある。
しかしながら、新旧対照表を見ると、他にもいくつかの変更などが行われているようである。各社の取材や消費者庁の記者会見などを通じて今後さまざまな情報が上がってくると思われる。
また、パブリックコメントについても公表されており、それらも参照した上での感想・意見をいくつか述べたい。
事業者団体の確認による「30日ルール」はなぜ消えた?
まず、パブリックコメントでも意見がいくつか上がっていたが、既存届出のPrisma2020に対する更新の対応期限についてである。事業者側はすぐに対応できないとしており、一方でガイドラインでは、対応期限については、あやふやな表現になっている。これまでもパッケージの変更など何かしらの変更届を出す場合、他の書類の書式が更新されていれば、他の書式の更新も必要になっている。そのため、パッケージの追加や変更だけでも、Prisma声明2020への対応が必要であるならば、難しいというパブリックコメントが出されていた。
そして、改正案には記載されていなかったが、事業者団体の事前チェックによる届出チェック期間の短縮(いわゆる30日以内確認ルール)については、今回の改正で消えている。質疑応答集でも30日ルールに関する部分では、事業者団体による確認による短縮は削除されている。ここについては、どのような背景があるのか分からないが、事前確認制度は廃止するということなのだろうか。また、これまでに上がっていた0日受理ルールとの関連も気になるところである。
消費者庁が事業者へ配慮か、新規届出は25年4月から
今回の改正で、事前にPrisma声明2020対応への準備が加速化すると考えられる。Prisma声明2020対応は大きなアップデートではあるが、6・30措置命令後でもあり、今後の対応については多くの事業者が注目している。パブリックコメントでは、Prisma声明2020への準拠状況は、2025年4月 1 日以降、随時消費者へ発信するとあり、おそらく25年4月以降にPrisma声明2020への既存届出の対応を見ながら判断するということであろう。
今回のPrisma声明2020への対応については、事業者側に一定の配慮を行った措置であると思われる。期限を設けることで、期限間際に変更届が殺到し、対応できない事態も考えた消費者庁側の事情も考えられる。
急速に大きくなった制度の大型アップデートの難しさを反映しており、Prisma声明2020対応にどこまで事業者が対応できるかが、今後注目される。
<プロフィール>
2000年、近畿大学農学部農芸化学科卒。
2005年、近畿大学大学院農学研究科応用生命化学専攻、博士後期課程満期退学。
2005年、博士(農学)取得。近畿大学農学部研究員、化粧品評価会社勤務、食品CRO勤務を経て、2016年から関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科。
専門は、農芸化学分野を中心に分析化学、食品科学、生物統計学と物質の研究から、細胞、動物試験、ヒト臨床試験まで多岐に渡る研究歴がある。特に食品・医薬品の臨床研究は、大学院在籍時より携わった。機能性表示食品制度発足時から、研究レビューの作成およびヒト臨床試験など多くの食品の機能性研究・開発に関わる。
2023年1月 WNGが発信する会員向けメルマガ『ウェルネス・ウィークリー・レポート』やニュースサイト『ウェルネスデイリーニュース』で連載した「エビデンスの基礎知識」が100号に達したのを記念し、内容を改めて編集し直し、「開発担当者のための『機能性表示食品』届出ガイド」を執筆・刊行。同4月より、一般向けの無料メルマガ『Wellness Weekly Report』(隔週木曜刊)に「エビデンスの『超』基礎知識」の連載も開始する。