容器包装表示、「適切な例」は適切か 消費者委員会部会、改正機能性表示食品制度巡り議論
機能性表示食品の表示禁止事項の一部を見直す食品表示基準改正案について2度目の審議を行い、答申案を取りまとめた25日の消費者委員会食品表示部会。この日の議題は他にもあり、会議時間は3時間に及んだ。もう一つの議題は、「機能性表示食品の見直し項目等に関する対応状況について」。小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題を受けて改正、施行された現行の機能性表示食品制度に対して、部会委員が意見を述べた。
切り出し表示になっていないか
消費委の食品表示部会は、改正機能表示食品制度との関わりが深い。昨年6月、内閣総理大臣が消費者委に諮問した、改正制度を法的に規定する食品表示基準改正案に関する審議の主体を担ったのが同部会。事前打ち合わせなども含めて「数十時間」(今村知明部会長)に及ぶ議論を経て、さまざまな附帯意見を付すことを前提に改正案を了承、最終的に消費者委として答申した経緯がある。その後、同年9月1日、改正制度は施行された。
25日の会議で約90分にわたり議論された「機能性表示食品の見直し項目等に関する対応状況について」は、諮問事項ではない。そのため、この日の会議では、対応状況を消費者庁食品表示課保健表示室が報告、それを受けて各委員が意見を述べたり、懸念を示したりしたが、それが食品表示基準の条文に直接の影響を与えるようなことはない。ただ、まがりなりにも消費者行政全般を監視する役割を担う機関が発した意見。消費者庁による制度運用に影響を及ぼす可能性は考えられる。
消費者庁から対応状況の報告を受け、委員はさまざまな意見を述べた。そのなかでも強めの疑問や懸念が示されたのは、「容器包装上の表示の在り方の見直し」だったといえる。具体的には、改正制度施行後、消費者庁が作成、説明会などで示すようになった「適切な例(表示例)」。そのなかでも、複数の機能性関与成分が含まれる場合の適切な表示例(下の図=この日の会議の配布資料から)に対して強い懸念が示された。

この「適切な例」について、委員の森田満樹氏は次のように意見した。
「切り出し表示をしているように見える。(健康被害問題が生じた)小林製薬の製品も、『コレスロールを下げる』という(機能性の部分だけ切り出し、大きく表示する)表示方法が問題になった。そのため、システマティックレビュー(の届出)に関しては、『(表示する機能が機能性関与成分に)報告されている』ということをきちんと書きましょうということであったが、(この適切な例だと)ずいぶん小さく見える。(切り出し表示に関して、昨年の食品表示)部会ではかなり慎重に議論し、(事業者に対して)注意喚起して下さいと(消費者庁に)言ってきたなかで、これはどうか。これが『お勧めの例』というふうになってしまうことに懸念している」
別の委員も、「(機能性に関して)断定的な表現になっている」と指摘。「容器包装上の表示を見直す目的は本来、その食品そのものに機能性があると誤解を招かないようにするためだった。(この適切な例では)『研究報告による』と機能性の部分が分離されているように見え、(その食品そのものに機能性があると誤認を招く恐れのある)断定的な表現に見えてしまうのではないか」(笠岡冴子委員)。
こうした意見を受け、部会長の今村氏は、機能性よりも「研究報告による」の文字が小さいのは、「(消費者)委員会としては気になるところ」だとし、消費者庁に対し、「今後事例を出す際には留意してもらいたい」と注文した。
他に、義務表示である「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」表示に対する意見も。「(文字の大きさが)一番小さくなっている。基本的に、適切な食生活をしていないと、どのような機能性食品を食べていても全く意味がないのだから、非常に大事な表示だ」(田中弘之委員)と述べ、「適切な食生活」表示が適切に行われることを望んだ。
訴求力を維持、そのうえで誤認させない表示とは
機能性表示食品の容器包装上の表示の在り方を見直した背景について、消費者庁は、「制度に対する信頼性を高め、消費者が適切な商品選択をするためには、商品の情報が正しく伝わることが重要だ」と説明している。また、システマティックレビューによる届出の場合の表示の在り方について、「機能性関与成分が有する機能性について報告されている旨を的確に表示する」との方針を改めて打ち出し、その方針を食表示基準の条文に落とし込み、法令化した。
昨年9月に施行された改正食品表示基準に基づく、機能性表示食品の新たな容器包装表示ルールが完全実施されるのは来年9月。残すところ約1年。事業者は、訴求力を維持しつつ消費者を誤認させない容器包装表示の在り方を考える必要がある。
【石川太郎】
(冒頭の写真:消費者委員会食品表示部会の会議の様子。7月31日撮影)
関連資料:消費者委員会第79回食品表示部会配布資料、消費者庁作成「機能性表示食品制度の令和6年度の見直しについて」(消費者委員会のウェブサイトへ)
:昨年7月、改正機能性表示食品制度に関わる食品表示基準の一部改正に係る答申及び附帯意見(同上)
:機能性表示食品、表示禁止事項見直しへ 消費者委員会部会、マイナス方向強調表示認める基準改正案を容認
:食品表示基準改正案は「適当である」 消費者委が総理に答申、ただし多くの附帯意見あり