国際的な視点で透明性の高い市場に 【年頭所感】(一社)国際栄養食品協会(AIFN) 天ヶ瀬晴信理事長
新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりまして誠にありがとうございました。謹んでお礼申し上げます。
2023年を振り返りますと、新型コロナウィルスによる世界的パンデミックの影響が以前ほどではなくなった半面、国内外における大きな情勢の変化による種々の要因から、私たちの産業界も含めて、原料高やそれによる諸物価高騰など市民生活への多大な影響が出ています。そのような中、食品の栄養機能や機能性を有効利用する方向性は引き続き活発であると感じます。機能性表示食品の届出件数も順調に伸びて定着しつつある一方で、所轄官庁による企業の指導などが活発に行われて業界にショックが走った年でもありました。
機能性表示食品制度の参考とされ、約20年程先行して始まった米国のダイエタリーサプリメント制度の下での市場の拡大や製品の推移を振り返って見ても、発展を遂げてきた背景には、サプリメントに関する法律の制定と共に、社会の認識と製品の信頼性や科学的裏付けの強化など一産業分野としての確立を支える素地があったと思います。社会の事情が日米で同一ではないので単純な比較はできませんが、他山の石として参考になる部分は多いと思いますし、魅力的で大きな市場であると感じます。米国のダイエタリーサプリメント産業の規模は、人口の要因などを加味しても、日本の数倍はあります。
ということは、健康志向の強い我が国民の意識から見ても、まだ発展の余地があるのではないかと想像します。さらなる発展を望むためには、今後、社会からの信頼性をさらに増して、真にこの産業分野を確立していくことが肝要と思います。そのためには、根拠となる科学的エビデンスの取り扱いや質の向上に関する真摯な取り組みと、市場や利用者へのまじめな情報提供が一層求められていると思います。
(一社)健康食品産業協議会など主だった業界団体を中心にして、食品の機能性を標ぼうするためのエビデンスとはどうあるべきかなどといった基本的な考えや方向性について、真摯な議論が交わされています。超高齢社会の最先端を走る日本が措置した、世界最先端を目指した機能性表示食品制度の設置目的の1つには、膨大な額に膨れ上がっている社会保障制度が破綻するのを防ぎ、継続的に維持させるための一助となるような目的も併せ持つものであると思います。
元々、我々の体を構成する栄養素や付随して摂取される非栄養成分が、健康に深く関与し人々の偏った食生活や生活習慣に関する自覚と健康増進のための啓発を促進し、正しい情報提供による製品の理解と自分に合ったものの選択を、日ごろの運動や休養など、日常の活動と対となって推し進めるべきものであることが前提と考えます。人々の生物学的寿命が延びた中、健康寿命をさらに延ばして医療サービスを必要とする人を増やさないという方針に沿うような手立てとなるため、世界で高齢化の先端を走る我が国がモデルとなって範を示すことで、その施策が世界の手本となるかもしれないこの制度の発展が非常に有用で異議深いことは自明であると思います。
海外から見ますと、日本は魅力的な市場ではあるが、規制や制度が複雑で透明度がないことなどが指摘されることがあります。当協会は、加盟各社や各団体と緊密に協力して、引き続き関連団体や関係省庁、アカデミアなどと連携を深め、また、グローバルな観点で、海外関連機関とも協力して、積極的な活動を継続します。こうした活動を通じて市場の健全な発展と国民の健康に貢献したいと考えます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げますとともに、今年が皆様に取りまして輝かしい年になりますことをお祈りいたします。