取りまとめに向けた作業を開始~第9回消費者裁判手続法検討会
消費者庁は5日、第9回「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」(消費者裁判手続法検討会)をオンラインで開催した。
今回はこれまでの議論を踏まえ、消費者裁判手続法(以下、特例法)の対象となる「事案の範囲(慰謝料)」、「特定適格消費者団体の情報取得手段の在り方」、「手続きのIT化」、「団体の役割」について議論した。
<慰謝料も事案の範囲に>
慰謝料を特例法の事案の範囲に含める、さらに個人情報漏洩事案を対象とするかについて議論した。大高友一委員は、慰謝料を事案の範囲に含め、さらに、個人情報漏洩事案を慰謝料の対象とすることに賛同するとした。またその上で、「それが故意なのか重過失なのかを立証することは困難。そのため、その両方を対象にすべき」とした。大屋雄裕委員も慰謝料を範囲に含めることに対して賛同するとして、「個人情報漏洩事案を対象とすることに強い反対意見があるが、明確な損害を被った場合は損害賠償請求をすればよい。慰謝料の対象に個人情報漏洩事案を外すのであれば、その理由を明確にすべき」とした。
沖野眞巳委員は、事案の範囲に含めることには賛同する立場だが、「個人情報漏洩事案は、まだ新しい事案で十分な例がない。故意と過失の違いを立証する必要がある」と故意も過失も無条件に対象とすることには反対した。
木村健太郎委員は、第7回の検討会で述べた通り、「精神的損害と言えないようなものも含めて、法文上は多分、精神的な損害ということで一定の要件を満たせば請求を可能にする。結局、精神的損害ではないものもそこに含めて、いろいろ請求できるということを意味している」として反対の立場を示した。
<積極的にDPFとの協力も>
「特定適格消費者団体の情報取得手段の在り方」について、河野康子委員は、「適格消費者団体も特定適格消費者団体も、その目的や目指す方向は一致している。そのため、連携協力について法文上明確にすることには賛同する。第三者に協力を求めることについては、デジタルプラットフォーマー(DPF)や決済代行会社など、消費者保護の観点から有力な情報を持っている可能性が高い。協力は積極的になされるべき」とした。
大高委員は、「行政庁は、業務停止などの措置命令は出せるが、消費者の被害回復はできない。団体と情報を共有するなど連携し、消費者利益につなげるべき」と指摘した。そのほかの委員も、プラットフォーマーとの連携を積極的に行うことに賛同した。
「手続きのIT化」について山本和彦座長は、「さまざまな面でデジタル化が推進されており、同法においても例外ではない。しかし、同法独自の問題もあるため、まだ検討の余地がある」と注文を付けた。
<破産手続きへの関与は時期尚早>
最後に「団体の役割」について議論した。団体が消費者団体訴訟制度の担い手となる現在の役割以外に、破産申し立ての主体となることについて大高委員は、「破産管財人を入れ、残った資産を確保することは消費者保護の観点から意味があるが、それを団体の義務にしてしまうと、負担が大きくなってしまう」として、役割についてはまだ議論が必要とした。同じく大屋委員も、「公的なバックアップが必要で、ただ委託するだけでは団体の負担が増えるだけ」と意見した。
山本座長は、「さらに検討を深めることができ、取りまとめに向けて方向性は見えた。細かい部分は、まだ検討が必要だが、事務局には取りまとめに向けた作業を進めてもらいたい」と結んだ。
【藤田 勇一】