南米果実由来のエストロゲン活性素材 アグアヘエキス、月経時不調ケアでエビデンス
月経前後の不定愁訴を和らげる働きを持つ可能性がヒト試験で示された、フルーツ(果実)から得られる機能性食品素材がある。女性ホルモン(エストロゲン)様成分が含まれていて、その成分がエストロゲン活性を調整することも分かっている。開発したのはサプリメント・健康食品原材料メーカーのオリザ油化㈱(村井弘道社長)。詳しい話を聞いた。
海外誌に論文掲載 MDQ評価で有意差
「アグアヘ(オオミテングヤシ)」という植物がある。主にペルーなど南米のアマゾン川流域で栽培されるヤシ科の植物。生食されたり、ジュースや果実酒などに加工されたりして現地で食されてきた。
同社は2018年、アグアヘ果実を原料にしたサプリメント・化粧品用の抽出物「アグアヘエキス」を発売した。「もともと現地では豊胸作用があると言われ、女性ホルモン様成分が含まれる可能性が示唆されていた」といい、エストロゲン活性調整作用のある女性ホルモン様成分の単離・同定を経て、開発したもの。およそ4年にわたる成分研究を通じ、女性ホルモン様成分として計8つのメトキシフラバン類が含まれることを明らかにしている。
「これらの成分は果実の油の中に含まれていて、大量のオレイン酸トリグリセリドから何段階もの精製工程を経て初めて得ることができる」と同社。また8つメトキシフラバン類の中でも特に強いエストロゲン活性が確認されたのが、DMM(Dihydroxy-Methoxy-Methylflavan)という成分だったという。DMMが必ず一定量含まれるアグアヘエキスを開発した。
発売の翌19年、海外の査読付き学術誌『Functional Foods In Health and Disease』に論文が掲載された。
この論文は、アグアヘエキスの継続摂取で月経前後の不定愁訴が改善されるか検証するため国内で実施したヒト試験(ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験)の結果をまとめたもの。試験は、同社が事前に実施した社内モニター試験で良好な結果が得られたことを受け、外部の臨床試験機関を通じて行われた。
試験に参加したのは、月経前と月経中に不定愁訴の自覚がある健常な日本人女性44人。月経随伴症状の程度を評価するのに世界的に用いられているアンケート、MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)などを指標に、アグアヘエキスを摂取した人の不定愁訴が緩和されるか調べた。摂取量は1日あたり100mg、摂取期間は8週間だった。
機能性表示、「挑戦する価値ある」
この外部機関を通じて行われたヒト試験でも良好な結果が得られた。摂取4週間後の段階で、月経前の「気分の高揚」にかかわる項目がプラセボ群との比較で有意に改善。摂取8週後では、月経中の「総合スコア」をはじめ「集中力」や「コントロール」(動悸や耳鳴り、息苦しさなど)に関する項目で有意な改善が見られた。また、MDQとは別に指標にした生活QOL評価アンケート(SF-36)においても、疲れや気分などの有意な改善が認められたという。結果、アグアヘエキス100mgを4~8週間摂取すると、月経前とその最中の不快な状態が緩和される可能性が示唆された。
販売状況はどうか。発売直後から一定の採用実績をあげていた中で、フェムテック・フェムケアの注目度が高まっていることもあり、ここにきて引き合いが増えているという。ただ、フェムテック・フェムケア市場への導入はまだまだこれからだ。「機能性を表示できるかどうかが鍵になる」と同社の村井社長は指摘する。
アグアヘエキスには、女性に特有の身体的・精神的な不調をケアする機能に関して一定のエビデンスがある。作用機序は、エストロゲン活性を調整するためだと考察できる。関与成分も、規格成分でもあるDMMに代表されるメトキシフラバン類であることが分かっている。
「挑戦する価値はあると思っている」。村井社長はそう話している。
【石川 太郎】
<COMPANY INFORMATION>
所在地:愛知県一宮市北方町沼田1
TEL:0586-86-5141
URL:https://www.oryza.co.jp
事業内容:こめ油、機能性食品・化粧品素材等の製造販売のほか受託製造事業
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