1. HOME
  2. 健康食品
  3. 健康食品2大通知、改正でどうなる? サプリの製造と品質管理に熱い視線が注がれる

健康食品2大通知、改正でどうなる? サプリの製造と品質管理に熱い視線が注がれる

 「健康食品の安全性確保のために重要な通知」。厚生労働省がそのように捉える2つの通知が改正、施行される。その影響は、天然物を基原とする濃縮物や化学合成物質を配合した錠剤やカプセルなどの形状を持つ健康食品、つまり、サプリメントに携わる多くの事業者に及ぶことになる。4月に控える食品衛生基準行政の消費者庁移管も相まみえ、原材料から最終製品まで安全性と、科学的裏付けのある効果を担保するための製造と品質管理に熱い視線が注がれることになりそうだ。(編集部注:この記事は『ウェルネスマンスリーレポート』2024年3月10日発刊号に掲載したものです)

H14年通知とH17年通知が同時改正

 改正される通知は「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領について」と、「『錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について』/『錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン』」の2つ。それぞれ発出された年にちなみ、前者は「平成14年(2002年)通知」、後者は「平成17年(2005年)通知」と呼ばれる。

 このうち後者は、健康食品関連事業者、その中でもとりわけ製造業関係者に馴染みが深い。「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」は、「GMP(適正製造規範)ガイドライン」とも呼ばれ、業界が自主的にGMPを実装していく契機になった。現在までに230を超える工場が認証を取得している。

 それに比べて平成14年通知の認知度は低いと思われる。通知を向けられた先は原則、事業者ではなく、都道府県の各保健所や厚生労働省であるからだ。

 平成14年通知は、健康食品との関連が疑われる健康被害情報に関する行政の対応要領。各保健所は、消費者等から健康被害の相談があった際、厚労省へ報告するよう求められている。本来そういった相談は、保健所よりも、健康食品を販売する事業者のほうに多く寄せられると考えるのが自然だが、なぜか事業者は蚊帳の外に置かれている。

改正の流れ作った健康被害の広がり

 健康食品の安全性を確保することを目的とする両通知が改正されたことはこれまで一度もなかった。ただ、通知の実効性に疑問符の付く問題が2017年に起こっている。エストロゲン活性のある女性ホルモン様成分を含む更年期女性向けの健康食品原材料、プエラリア・ミリフィカ(以下、プエラリア)との関連が疑われる健康被害の急増だ。国民生活センターが同年、一般消費者に向けて注意喚起したことで表面化した。

 当時の国センの発表によれば、2012年度から17年4月末までに累計209件の健康被害情報が全国の消費生活センター等に寄せられた。増加したのは2015年度以降だ。健康被害を訴えた人には若い女性が多く、月経不順や不正出血といった事例が多く見受けられているとして、「安易な摂取を控える」よう呼び掛けた。健康食品の定期購入トラブルも目立ち始めていた当時、今はすっかり影を潜めたが、プエラリアを配合した健康食品を販売する事業者の中には、若い女性に向けてバストアップ効果を暗に訴求するものが少なくなかった。

GMPなど義務化の指定成分制度が創設

 因果関係が明確であったのかといえば決してそうではない。だが、水面下で健康被害の訴えが広がっていた。そのことに厚労省は危機感を持った。平成14年通知が健康被害の拡大を未然に防ぐ実効的な機能を有するのであれば、国センよりも先に厚労省が対応に乗り出していたに違いない。健康被害情報の収集や把握に関する通知の実効性が疑われた。

 また、事後、厚労省が自治体を通じて実施した、プエラリアを含む健康食品を製造、販売、輸入する事業者を対象にした調査(対象製品68)の結果、GMPの準拠状況は全体の7割に迫っていた一方で、科学的根拠に基づかない摂取目安量が設定されていたり、活性成分の定量が行われていなかったりする製品が多く存在した。「一定の安全性の確保の観点から、個々の製品に係る成分の均質化を図るため、『適正製造規範(GMP)ガイドライン』を作成し、事業者の自主的な取り組みにより、製造工程管理による品質の確保を図る」ことを目的とする平成17年通知も、機能しているとは必ずしも言えないことが分かった。

 そういった経緯があって、厚労省によって創設されたのが、指定成分等含有食品制度(以下、指定成分制度)だ。食品衛生管理のグローバルスタンダード、HACCPの導入規定などを盛り込んだ改正食品衛生法(2018年公布)に基づく制度。プエラリアをめぐる健康被害を察知できず、その広がりを食い止められなかった反省も踏まえ、厚生労働大臣が指定する「特別の注意を必要とする成分を含む食品」、つまり指定成分等含有食品の製造販売等を行う健康食品関連事業者に対し、GMPに基づく製造および品質管理と、消費者から寄せられた健康被害情報の届出を、それぞれ「義務」とする制度を創設。20年6月に施行した。

原材料も「GMP準拠が必要」と有識者

 制度創設へと至る背景には、プエラリアをめぐる健康被害の広がりを受け、健康食品に対して上げられた有識者の厳しい声もあった。

 「いわゆる『健康食品』による健康被害を未然に防止するために、法的措置による規制の強化も含めた実効性のある対策の検討を行うべきである」

 こう問題提起したのは、食品衛生法改正の方向性を検討するため厚労省が設置した食品衛生法改正懇談会。5回の開催を経て17年11月に取りまとめた報告書で懇談会は、健康食品に関する「今後の対応の基本的方向」として他に、「GMPに基づく製造工程管理による安全性の確保等を義務化」、「(健康被害情報について)事業者からの報告を義務化(中略)事業者や医療機関、地方自治体などを通じた被害情報の収集体制を確立(中略)収集した情報を適切に処理」などを提言した。

 また、厚労省の薬事・食品衛生審議会に置かれた新開発食品評価調査会も厳しい見方を示した。「多くの事業者が『GMPを遵守している』と回答しているが、GMPを『製造ライン管理』だけと捉えているのではないか。GMPには、製造に用いる原材料の品質、規格の安定性なども含まれ、両者が遵守される必要がある」、「(活性の高い成分を)管理できていないとGMPを遵守しているといえない」、「一定の品質が常に保証されることや摂取量が安全域にあることを確認するために原材料の管理は重要」、「安全性を科学的に評価検討していくためには、発症状況だけでなく、摂取量、摂取状況等、一定の考え方によって情報を収集する必要がある」(いずれも17年9月4日開催分配布資料から抜粋)などと指摘した。

厚労省の問題意識、指定成分以外どうする?

 そういった意見を踏まえて厚労省は、指定成分制度の設計を進め、健康食品のうち「特別の注意を必要とする成分を含む」ものを対象に、GMPでの製造・品質管理と、健康被害情報の届出をそれぞれ義務化する制度を作った。しかし、それだけでは足りないと考えていた。

(⇒つづきは会員専用閲覧記事ページへ

【石川 太郎】

関連記事:厚労省、健康食品「2大通知」を改正 新ガイドラインとして発出・施行

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ