健康食品試験法研究会が初会合 効果の評価方法、プラセボ対照試験「以外」を模索
医薬品とは異なる役割がある機能性表示食品など健康食品の有効性(機能性)を評価するのに最適な試験方法を検討し結論を得ることを目的とする「健康食品試験法研究会」(代表:唐木英明東京大学名誉教授)が23日、キックオフ会合をオンラインで開催した。研究会会員、オブザーバーなど13人の有識者、業界関係者が参加した。
医薬品の有効性評価のために専ら利用されている「プラセボ対照試験」が、医薬品に比べて効果がマイルドな機能性表示食品の有効性評価にも使われているが、それは試験法として適切なのか。医薬品でも存在するはずの効果が検出できない例が多数知られているプラセボに代わる対照群を設定すべきではないのか──。同会では今後、月に1回程度のペースで会員らと議論を進め、一定の結論を早期に得て、行政機関を含む社会に広く提言してきたい考え。
プラセボ対照、効果を過少評価する可能性
健康食品試験法研究会の立ち上げに向けて音頭をとった唐木代表は、この日の初会合で、この研究会を立ち上げる必要に思い至った背景を会員やオブザーバーに改めて説明した。大意、以下のとおり。
「私は薬理学に長年携わってきた。そのため、健康食品の効果は『微効』(有効と無効の間)程度に過ぎないと考えていた。一方で、多くの消費者から支持を得ている現実がある。そのようなギャップがなぜ生じるのか。その理由を考えたのがきっかけ。結論としては、私自身がそうだったが、プラセボ対照試験を重視し過ぎていることがある。プラセボ対照試験は医薬品の(効能を評価する試験方法として)大原則ではあるが、それをそのまま健康食品に当てはめていいのだろうか。プラセボ対照試験にも欠点(対照群のプラセボ効果が大きかったりする場合、有効と考えられている薬剤でも効果が実際よりも低く示されるといった欠点)があることが以前から知られている。その結果、健康食品に使用すると効果が過少評価される可能性が高い。ギャップの理由はそこにある。そうであれば、健康食品の真の効果を評価するにはプラセボ対照試験に代わる試験方法を考える必要がある。そういう結論に達した。これまで(プラセボ対照試験を重視し過ぎていたこと)を反省している」。
代替案の1つに「無処置対照試験」
その上で唐木代表は、プラセボ対照試験に代わる試験方法の1つとして、インビトロやインビボ試験で有効性(物質作用)が確認されていることを前提に、「無処置対照試験」を提案。これは、対照群を、プラセボではなく、無処置(医学用語では無治療)=何もしない=とする試験方法で、臨床試験に関する厚生労働省の通知(医薬局審査管理課長通知)においても、臨床試験の対照群として使用できるものの1つとして例示されている。
無処置対照試験には、プラセボ効果を除外できない欠点はある(そのため、インビトロやインビボ試験で有効性(物質作用の存在)が確認されていることを前提とする)。ただ、医薬品に比べて効果がマイルドな健康食品において、有意差が得づらく、効果が過少評価される可能性が高いプラセボ対照試験を「絶対視」するのはどうか。もっと総合的に判断すべきではないか。プラセボ対照試験を絶対視する状況が続けば、測定値ではなく摂取前後の変化量の群間差をもって有意差を認めるなど、統計学において「不適切」と指摘される事態が続くことになる。そうした事態は科学者として看過できない──唐木代表はこの日、そうしたことを述べた。
「現状を改善するかどうかは事業者の皆さんの判断。今のままで良いというのであれば、(議論は)これでお終いだが、改善しようというのであれば、専門家としてお手伝いしたい」という。
議論を継続すべきという参加者の意向により、健康食品試験法研究会は来月(12月)をめどに2回目の会合を開く予定。
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