健康被害問題巡り127億円の特損 小林製薬24年12月期決算、純利益半減も被害補償は道半ば
小林製薬㈱(大阪市中央区、山根聡社長)が10日発表した2024年12月期連結決算は、同社が引き起こした「紅麹サプリ」健康被害問題の影響を受け、減収減益だった。売上高が前期比4.5%減の1,656億円、純利益が50.5%減の100億円。健康被害問題を巡る製品回収費用や医療費等の補償費用など、累計127億円の特別損失を計上したことで大幅減益になった。減益は1999年の上場以来初という。
対事業者補償、150社強と合意に至らず
健康被害問題を巡る特別損失は、1~9月期に100億円強を計上。10~12月期に25億円を積み増した。今期の25年12月期第1四半期以降に発生が見込まれる特損についても、合理的に見積もられるものに関しては全て計上しているという。腎機能障害を中心にした健康被害が生じた『紅麹コレステヘルプ』等の商品回収はほぼ終了している。
特別損失には、グループ会社を通じて紅麹原料を供給していた事業者に「予防措置」として要請した自主回収の費用補償も含まれる。決算発表に合わせて開いた会見に出席した補償担当取締役の小林章浩前社長は、対事業者補償について、申請件数は300社強に達しており、そのうち合意に至ったのは「半分弱」と説明。補償が進んでいない現状を明かした。具体的な補償額については回答を控えた。
健康被害に対する補償については、今月4日時点で、問い合わせが約1,200人からあり、そのうち約770人からの申請を受け付け、約570人について確認を終えた。残り約200人について小林氏は「速やかに確認作業を進められるように努める」とした。一方で、補償の進捗については、診察費や通院費などの支払いは以前から進めているものの、医療費や慰謝料などの本格的な補償に関しては「治療中の人が相当数いるため、補償額の算定に時間がかかっている」と釈明し、明言を避けた。ただ、「これだけの問題を発生させた。ゆくゆくは数字をお示しし、我々が起こした問題を振り返らないといけない」と述べ、今後公表する考えを示した。
また、死亡が関連する問い合わせのうち、確認対象となった130人中125人について調査を終えたが、『紅麹コレステヘルプ』をはじめとする同社の紅麹関連サプリの摂取が明らかな原因となった死亡事例は今のところ「判明していない」(同)とした。
今期、広告再開へ ただしサプリは「だいぶ後」
今期の国内事業売上高は、前期比8.1%減の1,199億円だった。健康被害問題を受けてサプリメントの売上が落ち込み、ヘルスケア事業は11.7%減の591億円、定期購入解約が生じた通販事業は40%減の45億円。10~12月期のヘルスケア事業は17.7%減の160億円、通販事業は55.7%減の8億円にとどまった。
執行役員の中川由美財務本部長は会見で、サプリメントを含む食品カテゴリの売上は前年比でおよそ半減していることを明かし、通販の定期購入解約の動きは止まっているものの「戻ってくるという動きには至っていない」とした。
ただ、国内事業はインバウンド売上が好調に推移し、新型コロナ禍以前の2019年を2億円上回る103億円で着地。売れ筋は、一般用医薬品の『ナイシトール』、『命の母』、『のどぬ~る』に続いて栄養補助食品の順番だったとしている。
今期の25年12月期は、売上高が前期比3.3%増の1,710億円、営業利益が43.7%減の140億円、純利益が4.3%増の105億円をそれぞれ見込む。定期購入が減少している通販は引き続きの減収を見込むものの、ヘルスケアについては増収を目指す。仮に、健康被害問題を巡る特別損失の追加計上があったとしても、資産売却などを実施しながら最終増益の確保を図るという。
ヘルスケアの増収は、健康被害問題以来、全面的に停止している広告の再開を前提とする。再開のタイミングは、4月からの第2四半期以降を見込む。ウェブ広告にシフトしつつ、23年比でおよそ半分程度の広告費で再開させ、段階的に引き上げながら売上を回復させたい考えだ。
会見に出席した、次期社長候補に内定している執行役員の豊田賀一国際事業本部長は、「世の中に許されるのであれば、広告を今期のタイミングで再開させていただきたい。(広告の停止で)ヘルスケアの商品を中心に、ボディブローのようにお客様が離れていっている現実がある」と述べ、広告再開に理解を求めた。
ただ、4月以降に広告を再開するとしても、サプリに関しては「だいぶ後のほうになると考えている」(同)とした。
また、同社が販売するサプリに対する消費者の信頼をどのように回復させていくのかについて豊田氏は、「すぐに回復できるものではないと思っている。地道に、丁寧にやっていくしかない」とし、「こういう中でも、我々のサプリを買い続けてくれているお客様がいる。我々は、しっかりとしたものを作り、お客様としっかりコミュニケーションしていくことが大切。そのようにすれば、ふたたびお客様に購入してもらえると思っている。そこを丁寧にやっていきたい」と語った。
【石川太郎】
(冒頭の写真:小林製薬が10日に会場とオンラインのハイブリッドで開いた会見の冒頭で起立する山根社長ら会社幹部)
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