保健機能食品は健康に寄与しているか? 消費者委員会で識者が持論を展開
消費者委員会は20日、「保健機能食品の今後の在り方」について、消費者団体や関係機関との意見交換会を都内で開催した。会合の模様は、オンラインで一般にも公開された。
パネラーには、(国研)医薬基盤・健康・栄養研究所 の栄養疫学・食育研究部の瀧本秀美部長、(一社)Food Communication Compass(FOOCOM)の森田満樹代表、昭和女子大学食健康科学部食安全マネジメント学科の梅垣敬三教授、岐阜医療科学大学薬学部薬学科の宗林さおり教授が出席し、厚生労働省の国民健康・栄養調査のデータを参考にしながら、保健機能食品をめぐる課題について報告。委員会のメンバーと意見を交わした。
瀧本氏は、「保健機能食品等の摂取と健康行動~令和元年国民・健康栄養調査結果から」と題して報告。国民・健康栄養調査から見えてきた健康食品の摂取状況について説明した。20歳以上の男性3割、女性4割が健康食品を摂取しており、約7割が健康の保持・増進を目的に利用している現状を紹介。他方、調査結果によれば食塩摂取量は低下傾向にあるものの、依然として野菜や果物の摂取状況に大きな変化はなく、食生活改善の意思を持つ者が半数以下であるとし、今後もますます機能性表示食品で健康の保持・増進効果を期待する人が増えるのではないかとの懸念を示した。
森田氏は、「保健機能食品の現状と課題」というテーマで、保健機能食品を活用する場合の課題を示した。健康食品において、保健機能食品の位置付けがあいまいな点を指摘。また、保健機能食品がどれだけ国民の健康・保持増進に寄与してきたのか、データーがない点を問題視した。
特定保健用食品が最も信頼できるとしながらも、許可内容の詳細が機能性表示食品ほど開示されていない点、栄養機能食品において許可された表示以外の表示を強調することで消費者の誤認を招いている点、機能性表示食品における事後チェック指針がじゅうぶん機能していないのではないかと疑問視される点など、それぞれの問題点を挙げた。
梅垣氏は、「保健機能食品の効果的な利用法の伝達」と題して、保健機能食品の使い方にスポット当てた指摘を行った。健康食品の利用者が60歳以上に多いとし、保健機能食品の特色を理解せずに利用している点を問題視。効果を過大に評価したメディアの宣伝によって、医薬品的効果に期待し、生活習慣の改善が行われていないと説明した。対策として、どうやってうまく利用するかという情報伝達の重要性を訴えた。生活習慣の改善を促すために、従来の方法ではない、新たな情報伝達の手段を考案する必要があるとした。
宗林氏は「保健機能食品の課題~セルフメディケーション活用推進の為に」と題して報告。機能性表示食品にどのような課題があるかを話の中心に据えた。
保健機能食品について、国民健康・栄養調査の結果を見る限り、国民の健康に大きく寄与したとは言えないとの見方を示した。また、データの元となる試験は健常者または境界域にある人を対象としたものなので、摂取対象者も病人ではない。摂取する場合は継続的に飲み続ける必要があると説明した。
国民生活センターで行った2019年時点のテスト結果を引用し、一部の機能性表示食品では同じ機能性成分でも商品によって実際の含有量に大きな差がある点を疑問視。また、実生活で使用された際の機能性がどの程度であるかという調査結果がない点も指摘し、実生活上の機能性の検証が必要だとした。
会合の模様はきょう(22日)午後3時以降、消費者委員会のホームページで公開される予定。
【田代 宏】
(冒頭の画像:消費者庁「保健機能食品について」より)