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佐藤教授、新プレバイオティクス提唱 PHBが酪酸菌を活性化、確実に腸内細菌叢へ

トップジャーナルに論文掲載

 東京工科大学応用生物学部(東京都八王子市)の佐藤拓己教授は、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)が、酪酸菌にケトン体(3-ヒドロキシ酪酸:3HB)を供与し、酪酸菌優位な腸内細菌叢を誘導することを提唱する論文を発表した。

 同論文は6月2日、生理学および内分泌学のトップジャーナル『Trends in Endocrinology and Metabolism』オンライン版に掲載された。同誌7月号(6月14日発売)には表紙に採用される。

PHB、3HB濃度を持続的に増加

 同教授は、ケトン体がアンチエイジング分子であることに注目し、小腸や大腸内でケトン体を放出する分子(ケトン供与体)について研究開発を続けてきた。ケトン供与体には、小腸でケトン体を放出するケトンエステル(KE)と、大腸でケトン体を放出するPHBが存在する。

 KEは、小腸の消化酵素で加水分解されるため、数分でケトン体(3HB)の濃度を大きく増加させるのに対して、PHBは腸内細菌が加水分解しながら放出するため増加幅は小さいが、持続的にケトン体濃度を増加させる。
 また、PHBは酪酸菌を活性化し酪酸を増加させ、制御性T細胞を活性化し炎症を抑制することがこれまでの研究で分かっている。

 Javier Fernández らの研究(文献1)によると、ラットにPHB10%を5週間摂取させると、善玉菌を多く含むファーミクテス門が有意に増加し、悪玉菌を多く含むプロテオバクテリア門が有意に減少。
 また、ファーミクテス門の中で属および種レベルでは、長寿に関係する酪酸菌のグループであるロブリア属やルミノクロストリジウム属、クロストリジウム属などの酪酸菌が有意に増加し、大腸内の酪酸濃度を増加させ、大腸がんを抑制することが分かっている。

ケトバイオティクスの実用化目指す(佐藤教授)

 佐藤教授は、大腸管腔において、PHBは腸内細菌へのケトン体の供与から始まる新しいプレバイオティクスとして「ケトバイオティクス」を提唱している。これは、腸内細菌へのケトン体供与から始まるという点で既存のプレバイオティクスとは一線を画すという。

 「腸内細菌が寿命を決めているという学説(腸内細菌学説)は100年以上前から繰り返し唱えられてきた。腸内細菌が“若さ”を保つことの基本なので、善玉菌が多数を占める腸内細菌叢が必要となる。最新の科学によれば、善玉菌として働くのは酪酸菌なので、大腸内の酪酸菌数を増やす必要がある。酪酸菌が腸内細菌の多数を占めると、酪酸が大量に産生され、免疫が最適な状態にリセットされる。
研究により、PHBが大腸で酪酸菌を効率的に増加させることを見出した。PHBは小腸では分解されず、大腸で分解されるため、大部分が腸内細菌に届けられる。この結果、腸内細菌のエネルギー産生が増加し、酪酸菌が活性化されるので、酪酸菌が多数を占める腸内細菌叢にするための最適な方法。今後、PHBを良好な腸内細菌叢を維持するための手段として実用化することを目指す」(佐藤教授)

(冒頭の画像:PHBによるケトバイオティクスのイメージ図、プレスリリースより)

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