九州各地の健康づくり企業を支援~食の新たな価値を創造(前)
九州地域バイオクラスター推進協議会(KBCC)は、2007年9月に設立された。(公財)くまもと産業支援財団が事務局を務める。予防医学・サービス産業と連携した機能性表示食品や健康食品の提供による安全・安心な「フード・健康アイランド九州」の構築を目的としている。現在の会員数は、団体・個人と合わせて約170。活動内容と今後の展望について話を聞いた。
バイオクラスター計画としてスタート
――協議会の概要についてご説明ください。
森下 九州地域は農林水産業の豊富な資源に恵まれ、みそ・しょうゆ・焼酎などの伝統的な発酵産業に加え、健康食品産業や先進的な医薬研究施設まで、バイオ関連の企業・大学・研究機関が多数集積しています。こうした九州地域の特性を生かし、2007年に全国で初めて機能性食品や健康食品に特化したバイオクラスター計画として始動したのが「九州地域バイオクラスター計画」です。経済産業省が進める産業クラスター(地域において広範なネットワークを形成し、新たな産業の創出や経済の活性化を図る)計画としては、全国で18番目、九州では環境分野、半導体分野に次いで3番目のプロジェクトです。
事業の内容は、バイオ関連の企業、研究者、関連機関のネットワーク構築、新事業創出のための調査研究、販路拡大のためのマーケティング支援や情報提供などです。会長は、小野友道 熊本大学顧問 名誉教授にお務めいただいています。現在の会員は、熊本県を筆頭に福岡県、佐賀県など九州全域の企業・団体・個人で構成されています。
機能性表示食品にもチャレンジ
――事業内容について具体的にお願いします。
森下 まずは機能性表示食品制度への取り組みから説明します。当協議会では発足当初から、当協議会ロゴマークの活用や広域連携の構築による、食品の健康に対する付加価値表現について取り組んできました。制度が動き始めた12年ごろから各種勉強会などを開催し準備を進め、制度がスタートした15年からは、届出に向けた、より具体的な勉強会やアドバイザーの設置を行うなど、当事者である事業者とともに取り組んでいます。同時に、当協議会独自の認証に向けた取組みもスタートさせ、会員が持つ素材の相互利用を促進し、共同開発や対仏販路形成の展開とともに、九州らしさとおいしさにこだわったものづくりを支援しています。
「おやつ」プロジェクトが稼働
――「九州健康おやつプロジェクト」についてご説明ください。
森下 九州産の原料にこだわり、食品の機能性成分や栄養成分に加え、「美味しい」「楽しい」などの感覚機能も取り入れた、「健康志向型おやつ」の商品開発から販路展開まで一貫して取り組むプロジェクトです。本プロジェクトでは、協議会の独自基準である「九州健康おやつ基準」を設けており、基準を満たす優れた商品を「九州健康おやつ」に認定し、認定商品には「おやつマーク」を付与しています。
現在の認定商品は、『椎茸かりんとう』(㈱姫野一郎商店)、『荏胡麻花林糖(えごまかりんとう)』(肥後製油㈱)、『デコレーションだんご』((資)中村製粉)、『きくらげクッキー』(鷹乃産業㈲)、『鍋島小紋ごまさぶれ』(㈱まんてん)、『あかねグラノラ』(㈱プレシード)、『翠王かりんとう』(㈲のだ・香季園)などです。今後、さらに当協議会のネットワークを活用し、お互いに知恵を出し合いながら、消費者の皆様に健康をお届けできるような「おやつ」を開発し、全国へ、世界へ発信していきます。
<九州地域バイオクラスター推進協議会 プロジェクトマネージャー 森下 惟一 氏 プロフィール>
北海道大学大学院水産学研究科修了。農林水産省畜産試験場研究員を経て帰郷し、1997年から地元水俣の産学連携のための第三セクター設立や、文部科学省などの公的事業の導入に携わる。2006年より熊本県の産学官連携事業のバイオテクノロジー系のコーディネータとして活動。13年より現職。専門分野:微生物工学
(冒頭の写真:森下氏、記事中の写真:(公財)くまもと産業支援財団外観)
【聞き手・文:藤田 勇一】
(つづく)