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三生医薬、後発薬大手が買収 約476億円で

※2021年12月20日13時15分、記事本文に追記しました。

東和薬品の完全子会社化に
 ジェネリック医薬品(後発医薬品)大手の東和薬品㈱(大阪府門真市、吉田逸郎社長)は17日、サプリメント・健康食品受託製造大手の三生医薬㈱(静岡県富士市、石川泰彦会長兼社長)を約476億円で買収すると発表した。米投資ファンドのカーライル・グループが保有する同社株式の全てを取得し、完全子会社化する。買収資金は金融機関からの借り入れで調達する。来年3月までに買収手続きを完了させる予定だ。

 三生医薬は同日、石川会長兼社長名で「株主変更」に関する知らせをホームページに掲載。株主は変わるが「お客様、お取引先にご安心してお取引を頂ける状況に変わりはございません」と伝えた。

 東和薬品は、三生医薬を買収することで、新規事業として取り組むヘルスケア(健康関連)事業の進展を図る。今年5月までに策定した、2021年度からの中期経営計画の基本方針の1つに「新たな健康関連事業への展開」を掲げ、後発薬をコア事業としつつ、サプリメント・健康食品などを新たに展開していく事業戦略を提示していた。事業領域を「治療」から「予防」にまで広げることで、健康寿命の延伸に貢献したい考えだ。今年3月には、疾病リスクの検査サービス事業を手掛ける㈱プトセトラ(大阪市淀川区)を買収していた。

 2021年3月期の連結売上高は1,549億円。売り上げの大半を占める後発薬は今後、毎年の薬価改定(引き下げ)の影響を受けて厳しい状況が続く見通しだ。また、他社が引き起こした品質や安定供給にかかわる問題で後発薬の信頼が低下し、事業環境をより厳しくさせている。主力の後発医薬品に対する逆風が吹く中で、サプリメント・健康食品などのヘルスケア製品・サービス事業を収益の新たな柱に成長させる狙いがあるとみられる。

サプリメント市場に本格参入へ

 東和薬品は、三生医薬について、「保有する高い製剤技術を活かし、顧客のニーズに沿った付加価値のあるスピーディーな製品開発に注力することで、高い競争優位性」を有すると評価。東和薬品グループに加わることで、「高い技術力や広範な顧客基盤、健康食品関連のノウハウを活用でき、これにより、当社の目指す健康関連事業の多角的な展開が実現」されると買収の狙いを説明している。

 三生医薬の20年12月期売上高は228億円。サプリメント・健康食品のほか医薬品等の受託開発・製造を手掛けている。売上高に占める割合はサプリメント等が最も多く約70%、医薬品は約10%。製造拠点として4施設(これ以外に包装拠点5施設)を静岡県内に展開しており、18年に竣工した基幹製造拠点の南稜工場(富士宮市)は、「日本最大級のソフトカプセル製造キャパシティ」(同社ホームページより)を有す。

 研究・開発(R&D)拠点の新設も進めている。来秋をめどに、南稜工場の敷地内に「イノベーションセンター」を竣工し、同社で開発した新たな製剤技術「ユニオーブ」に関するミニスケール生産にも対応できる基幹R&D拠点として運用していく計画だ。昨年には、東京都内に、製品試作などを行える「ADC」(アプリケーション・デベロップメント・センター)を新設していた。

 東和薬品は今後展開するサプリメント・健康食品の開発・製造を三生医薬で行う。製品の販売開始時期等は今のところ未定。

業界、行方を注視

 三生医薬は1993年設立。2014年に米投資ファンド大手、カーライル・グループの傘下に入った。今年10月、「事情に詳しい複数の関係者」の話として、カーライルが同社の売却を検討しているなどとブルームバーグが報道。こうした観測的な情報は折に触れて流れていたが、同社の価値を5億ドル(約560億円)以上と評価する取引をめざしている、などと具体的な売却価額の見通し示唆されたこともあり、行方が注目されていた。

 後発薬の国内大手が三生医薬を買収するとの報を受け、サプリメント・健康食品業界からは、今後の動きを注視する見方が上がっている。

 「当社はこれまで通り、顧客、社員、地域社会、株主のそれぞれのステークホールダーにお約束しているミッションの実現にむけて邁進していく所存です」。17日付でホームページに掲載した株主変更に関する知らせの中で、三生医薬の石川会長兼社長はこうした声明を出した。

 また、東和薬品も取材に、「自主性、独立性を保ちながら、これまで通り事業を進めてもらう」(広報・IR室)と述べた。

【石川太郎】

(冒頭の写真:三生医薬の買収を伝える東和薬品のプレスリリース)

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