自律神経の活動測定試験を受託(中) 生理変化から機能性ターゲットを絞り込む
ヒトでは、心電図の解析による心臓を支配する自律神経活動のおおよその変化を調べることはできるが、その他の臓器や組織を支配する自律神経活動を測定することはできない。ところが、仮に心臓の交感神経が興奮したとしても、必ずしも他の全ての臓器・組織を支配する交感神経が興奮するとは限らず、逆に抑制される場合もある。このことが、各臓器・組織での自律神経活動の変化を個々に測定しないと、その活動測定による薬品や食品などの機能の解明ができない理由である。すなわち、生体は対外・体内環境の変化に対して各臓器・組織を支配する自律神経を必ずしも一様ではなく、微妙に変化させる。具体例を示そう。
ヘスペリジン配糖体を実際にラットに投与して、褐色脂肪の自律神経と皮膚の動脈の交感神経を測定したデータによると(図-1)、この左側は褐色脂肪で、ヘスペリジンを投与すると、褐色脂肪を支配する交感神経の活動は上昇するが、右側の図、皮膚動脈を支配する交感神経の活動は低下する。同じような交感神経が抑制されている。このことから、1つの臓器の交感神経活動が上昇しても、他の臓器の交感神経が上昇するとは限らない。
したがって、各臓器を支配する自律神経は環境変化にそれぞれ見合った変化を起こすので、心臓交感神経が興奮するからといって、他の臓器の交感神経も一緒に興奮するとは推測することができない。ヒトでは心臓以外の自律神経は測ることができないので、ラットで測定することが必要になる。
(出典:『Shen et al., Neurosci. Lett. 461: 30-35, 2009』)
さて、実際に自律神経の測定だが、麻酔下のラットの自律神経を電極に吊り上げて、その電気活動を測定する。直接、各臓器・組織を投射している自律神経を電極でピックアップし、アンプで増幅させてコンピュータに取り込んで、神経の活動を測定している。
支配する自律神経の部位と予想される生理機能変化をまとめてみた。
白色脂肪の場合は、交感神経が興奮すると脂肪分解を起こし、副交感神経が興奮、あるいは交感神経が抑制されると脂肪の貯蓄が行われる。
褐色脂肪の場合は交感神経が興奮すれば熱産生を起こし、抑制されれば熱酸性が抑制されて体温が低下する。
このように、それぞれの求めたい生理変化に基づいて実際にターゲットとなるどこの自律神経を測定するかがリンクしているので、製品を販売したい企業はその目的に応じてターゲットを絞ることで、自律神経を測定してデータを出すことが可能となる。
同社ではこれまで、実際にラットに嗅覚、視覚、味覚、聴覚、触覚などを合わせて交感神経と副交感神経の活動変化を測定し、その結果生じる血糖・血圧・摂食・体温などの生理変化を見てきたという豊富な実績を持っている。
(つづく)
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【聞き手・文:田代 宏】
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