乳酸菌分解プラセンタ発酵液。プラセンタエキス製造販売大手のスノーデン㈱（東京都千代田区、明壁正英会長）が、そのように名付けた新しいスキンケア化粧品向け原材料を開発、化粧品業界に積極提案を仕掛けている。その名のとおり乳酸菌が持つ発酵機能をプラセンタ（胎盤）の分解に活用したもので、従来なかったプラセンタ化粧品原材料。久々の新製品を通じて、プラセンタエキスの化粧品向け需要を改めて喚起する。

乳酸菌発酵の力で胎盤を直接分解

　古くから美容目的でも使用されてきたプラセンタエキスの製造方法はいくつかあるが、酵素分解法が採用される場合が多い。プロテアーゼ（タンパク質分解酵素）を使って胎盤を分解する方法で、スノーデンによると、「比較的緩和な条件でプラセンタ（胎盤）のタンパク質を分解し、胎盤に含まれる有用な成分を取り出す」方法だ。酵素分解法とは別に、酸分解法などの製法もある。

　一方、発酵も古くから美容目的で利用されてきた歴史があり、発酵を活用した化粧品が現在も販売されている。その中、同社では、プラセンタエキスと発酵という「伝統的な美容素材・技術の特長を併せ持つ新たな美容素材を開発する」ために、プラセンタの分解を「発酵」で実現できないかと考えた。

　製造工程に発酵を取り入れたプラセンタエキスは以前から存在した。ただ、酵素分解後に発酵させているため「胎盤からの有用成分の抽出自体は酵素分解法に依っている」。そうではなく、「有用成分の抽出そのものを発酵法で実現できないか」との視点に立ち、開発に至ったのが新製品の乳酸菌分解プラセンタ発酵液だ。発酵によって胎盤を分解できる乳酸菌株を探索するところから開発を始めた。

　同社によると、乳酸菌分解プラセンタ発酵液の製造方法は、まず、乳酸菌による発酵で胎盤を直接分解。続いて、プロテアーゼによる酵素分解を行うハイブリッド製法を採用している。酵素分解は発酵分解後に行う一方で、酵素分解法によるプラセンタエキスとほぼ同等レベルの遊離アミノ酸が含まれるとともに、分子量分布の観点からも遜色のないプランセンタエキスを製造できるという。

　また、分解の第一段階として発酵工程を経ることで、「酵素分解だけでは得られない種々の分子の増加や出現も見られる」。具体的には、乳酸やピルビン酸などが増加し、酵素分解のみでは検出されないコハク酸、チミン、シトシン、2-ヒドロキシ酪酸、グリコール酸──など100近い成分が出現し、これによって新たな機能性が付加されるという。同社が行った研究によると、化粧品用プラセンタエキスで以前から確認されていた皮膚線維芽細増殖促進作用に加え、表皮角化細胞の増殖促進作用や高い保湿性などがこれまでに確認されている。

200株の中から有力菌株を見いだす

　化粧品成分表示上の名称は、「エンテロコッカスフェカリス／ブタプラセンタ発酵液」となる。発酵液のため、最終製品の全成分表示における「水」表記は不要。それも狙って開発した。

　また、表示名の一部であるエンテロコッカスフェカリスは、乳酸菌分解プラセンタ発酵液に用いる乳酸菌の種の名称だ。同社は新製品の開発を進めるにあたり、岡山大学の宮本拓名誉教授が保有する約2,000株の乳酸ライブラリのうち約200株の中から、宮本氏の許諾を得て、発酵によって胎盤を直接分解できる乳酸菌株を探索。その結果、中国新疆ウイグル自治区に伝わる伝統的発酵食品（発酵乳）「キテック」から分離された「エンテロコッカスフェカリスPR31」を見いだした。

　同社は健康食品向け原材料として「乳酸菌LJ88」を開発しているが、同乳酸菌では胎盤を分解できなかったといい、「乳酸菌ならば何でも良いという訳ではまったくない。PR31にこそ、発酵によって胎盤を分解できる能力がある」と強調する。

　健康食品向けプラセンタエキスとして応用開発できる可能性もあるが、当面は「コスメ（化粧品）向けに特化して販売していく」としている。「新しいものを求めていたり、付加価値のあるプラセンタ化粧品を開発したりしたい層に提案したい」。

【石川太郎】

（下の画像：簡略化した乳酸菌分解プラセンタ発酵液の製造工程。同社提供）

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