フコース、機能性表示食品市場に
体重ケアの新成分 焼津水産化学、届出サポート開始
「フコース」という新しい機能性食品素材が昨年4月に発売された。海藻のアスコフィラムノドサムを原料にしたもので、訴求機能は抗肥満。加えて、整腸機能。N-アセチルグルコサミンやアンセリンなど水産物由来機能性食品素材の製造販売を手掛ける焼津水産化学工業㈱(静岡県焼津市、山田潤社長)が大量生産技術を確立、東京大学大学院農学生命科学研究科の潮秀樹教授と同社らが共同で機能性研究を進めた。甘みを持つことを特長とする同素材は今後、機能性表示食品の機能性関与成分として食品産業に広く提供されていくことになる。
フコースって? フコイダンを構成する単糖
発売1年後の今年4月、フコースを機能性関与成分にした機能性表示食品(サプリメント)の届出が公開された。届出者は、焼津水産化学工業(以下、焼津水産化学)のグループ会社UMIウェルネス㈱。内臓脂肪や体重、BMIなどの低下サポート機能と、便通改善機能のダブルヘルスクレームを届け出たもので、科学的根拠はフコースに関する研究レビュー。焼津水産化学で実施した。届出表示は以下の通り。
「本品にはフコースが含まれます。フコースには以下の機能があることが報告されています。BMIが高め(23以上30未満)の方の
・腹部の脂肪(内臓脂肪、皮下脂肪)、体重、ウエスト周囲径の低下を助けることでBMIの低下をサポートする
・便秘傾向の方の便の回数を増やすことで便通を改善」。
フコースとは何か。モズクやコンブなど褐藻類に含まれるフコイダンを構成する糖(単糖)の一種で、焼津水産化学では「私たちにとって身近な糖」だと説明する。ヒトの血中や母乳に含まれるほか、小腸ムチンの構成糖でもある。他に、海藻にも多く含有することが以前から知られていたが、「抽出・精製が難しく、これまであまり活用されていなかった」という。
褐藻類を原料に量産化を実現
フコースの工業的生産技術を開発、量産化を実現したのは同社が初めてとみられる。フコースの含有量を30%以上で規格した白色粉末「マリンフコース」(同社の登録商標)を開発した。原料となるアスコフィラムノドサムは、北米や北欧の海域を中心に自生する褐藻類で、同社によれば現地ではサラダなどとして食経験がある。
さわやかな甘みが特長 ドリンク類など幅広く
グループ会社からの届出が公開されたのを受け、焼津水産化学は開発したフコースを機能性表示食品対応素材として提案を開始。最終商品販売会社への届出サポートも始めた。
同社によると、開発したフコースの特長は、さわやかな甘みを持つ白色の粉末であること、また水に溶かしても無色透明であること。そのため、チュアブル錠などのサプリメントからドリンクやゼリー類まで幅広い食品に配合できる。「とりわけ風味の良さが強みになる」(機能性素材営業部)といい、販売数量も大きくなる一般食品への配合提案を推進したい考え。3年後の売上高を1億円以上まで引き上げることをめざす。
目標売上高を達成するため、ヘルスクレームのバリエーションの拡充も図り、機能性表示食品対応素材としての訴求力を高めていきたい考えだ。東京大学大学院農学生命科学研究科の潮秀樹教授らと共同で進めた機能性研究では、動物試験で腸内環境改善機能が見出されている他、細胞試験で肌質改善機能が示唆されている。
好調のアンセリン等との組み合わせも提案
また、これまでに届出実績をあげているN-アセチルグルコサミン(NAG)やアンセリンにフコースを組み合わせた商品開発も提案する。
両成分とも販売数量が年々増えている。ひざ関節領域の機能性表示食品対応素材として販売数量が伸びているNAGに関しては、約8億円を投資して生産体制を強化することを決めた。設備投資を実施し、生産量を約3割引き上げる(完工は23年5月の予定)。
「NAGとフコースを組み合わせることで、関節ケアとダイエット(体重管理)を同時に訴求できるようになる」(機能性素材営業部)。また、高めの尿酸値の低下機能を訴求できるアンセリンとフコースの組み合わせに関しては、「中高年以上男性を対象にした機能性表示食品の訴求力を高めることができる」(同)としている。
【石川 太郎】
(冒頭の画像:体重ケア機能に関するエビデンスの一部。肥満傾向の健常者がフコースを1日あたり150mg、20週間摂取することで、腹部内臓脂肪が2%減少したという。出典:焼津水産化学工業のプレスリリース)