フェムテック振興の旗を振る男性議員 【フェムテック特集】なぜ? サプリどう見てる?(前)
宮路拓馬氏。自由民主党の衆院議員。保守王国といわれる鹿児島を選挙区としながら、政策の筆頭に「女性の健康上の悩みの解消」を掲げる。自民党のFemtech(フェムテック)振興議員連盟(会長:野田聖子衆院議員)の事務局長でもあり、フェムテック関連製品・サービスに関する規制の見直しを政府に働きかけている。フェムテックを広げなければならない理由は何か、男性議員がなぜフェムテック振興を目指すのか。サプリメントに対する認識も含め、宮路氏の考えを前後編で伝える。
作るべきは定義でなくムーブメント
──フェムテックについて疑問に思うのは、その定義です。どこからどこまでをフェムテックと呼ぶべきか、フェムケアとは何が違うのか。どう考えていますか。
宮路 海外の投資家の中には、フェムテックとフェムケアは厳密に分けるべきだと考える人が多いと聞きます。フェムテックとはIoT、AI、ビッグデータ、あるいはロボティクスなどの「テクノロジー」を活用するものに限定すべきだという考え方。でも我われは、そうした厳密な線引きを行う必要はないと考えています。定義よりも、女性の健康の悩みの解消に向けたムーブメントを作り、定着させていくことの方が重要。これまでの日本社会にはそうした意識がほとんどなかったわけですから。人前で話せないもの、相談できないもの、我慢しなければならないもの、抱え込まないといけないもの──そうした社会の空気そのものを変えていくことがフェムテック振興議連の役割です。
女性活躍推進法が昨年4月に改正されました。女性活躍を実現するには、男性にせよ女性にせよ、月経、妊娠・出産、更年期など、女性に特有のからだの変化に対するリテラシーの向上が求められる。まずはそこ。議連では政府にそうした提言も行っています。多くのフェムテックが日本に展開されるようになったとしても、PMS(月経前症候群)や更年期症状などは対処できるものなのだということを知らないというのでは、フェムテックにアプローチしようとさえ思わない。その意味でもリテラシーの向上が必要なのです。
リテラシーを向上させる方法としては、オンライン相談や学習アプリなど、テクノロジーの活用もありますが、私が内閣府大臣政務官(第2次岸田内閣21年11月~22年8月)を務めた時、女性の健康に関する研修を内閣府職員向けに行いました。男性にも参加してもらった。これは本邦初の取り組みでしたが、研修って極めてアナログですよね。でも女性活躍促進やフェムテック振興の土台を作っていくためには必要。そういう意味でも、フェムテックとフェムケアの違いを厳密に捉える必要はないと思っています。
新しい世界、健全なマーケットに育てる
──男性議員が女性政策を掲げるのは珍しいと思います。フェムテックの振興が必要だと考えた理由は?
宮路 女性がひと月のうちにフルパフォーマンスを発揮できるのはわずか10日程度、という研究データに接したのがきっかけです。もちろん個人差があるにせよ、ひと月のうち3分の2は不調を抱えていることになる。女性はそのようなハンディを抱えながら勉強、スポーツ、仕事をしていたのだと知って驚きました。日本は女性の国会議員が少ないですけれど、男性には分からない健康上の悩みや辛さを抱えながら男性議員と同じように仕事をしている。そんなデータを突きつけられたことで女性たちに敬意を持ちました。その時、そうした健康上の悩みを解決できるプロダクトやサービスが海外では普及している一方で、レギュレーションが壁になり日本では展開できないことを知り、「これはもうやらなきゃいけない」という思いに至りました。
──サプリメントはどのように見ていますか。症状が重い場合は医療にかかる必要がありますが、軽微である場合はサプリメントが有効かもしれません。機能性に関して一定のエビデンスがあるものも存在します。
宮路 フェムテックは新しい世界です。新しいプロダクトやサービスを展開していくために規制が壁になるのであれば、その見直しに向けて取り組むのも議連の役割。一方で新しい世界だからこそ、規制が存在しない、ということもあるのです。規制がないままでは悪貨が良貨を駆逐するようなことも起こり得る。たった1つでも健康被害を起こせばフェムテックの信用は一気に失われてしまう。しかも、生理、妊娠・出産、更年期は、場合によっては生命に関わる場合だってある。そのため、この議連を運営していく中で常に心がけていることがあります。それは、きっちりとした医療的な裏付けがあるもの、品質がしっかりしているもの、安全性が確認されているものを展開していく必要があるということ。それらを担保する仕組み、いかがわしいものが出てきた時にしっかりブロックできる仕組みも必要です。それを前提に言えば、サプリメントが果たす役割は大きいと思っています。
(後編に続く)
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