ハウス、減塩に関する研究を推進 高濃度塩味を忌避する反応を定量的に評価する簡便な方法を確立
ハウス食品グループ本社㈱(東京都千代田区、浦上博史社長)は5日、ヒトが高濃度の塩味を忌避する反応を定量的に評価する簡便な手法を確立し、慢性腎臓病の患者では塩辛いものを忌避する反応が低下していることを発見したと発表した。
京都府立医科大学大学院医学研究科、腎臓内科学助教の草場哲郎氏、循環器内科学教授の的場聖明氏らとの共同研究によるもの。同研究に関する論文が、2月15日に科学雑誌「Kidney International Reports」誌に掲載された。
今回、高濃度塩味に対する忌避反応を簡単に判定する方法を確立し、「低濃度の食塩に対する嗜好性ではなく、高濃度の塩分に対する忌避性の減弱がヒトにおける塩分過剰摂取に寄与している」という仮説を立て、健常者、および慢性腎不全患者を対象に研究を行った。
はじめに、健常者を対象に濾紙を用いた味覚試験を応用し、各種味覚の認知機能と同時に高濃度塩味に対する忌避反応を調べた。濾紙に種々の濃度の食塩水(塩味)、クエン酸水(酸味)、キニーネ水(苦味)、ショ糖水(甘味)を一滴垂らし、口腔内で濾紙を3秒間保持し、味覚を正確に同定できるか、その刺激が「嫌い」「嫌いじゃない」を選択してもらい、味覚の認知、忌避反応を定量化した。その結果、塩味、酸味、苦味に関しては、刺激濃度を上昇させるほど忌避反応を示す被験者が増加。一方で、約37.6%の被験者では、最高塩味刺激濃度(20%)でも、忌避反応を示さなかった。
次に、慢性腎臓病の患者を対象に同様の味覚試験を行った。慢性腎不全患者では健常者と比較して、塩味を認識できる最低濃度が上昇しており、塩味を感じにくくなっていることが分かった。さらに塩味刺激濃度を上昇させて忌避反応を調べたところ、78.6%の慢性腎不全患者では、最高塩味刺激濃度(20%)に対して忌避反応を示さず、慢性腎不全患者では高濃度の塩味摂取に対する抵抗感が減弱していることが示された。また、塩味に対する忌避反応が減弱している患者の背景を調べたところ、男性と入れ歯をしている患者は、より高濃度の塩味摂取に対する抵抗感が減弱する傾向を認めたという。
同研究の結果、自分では「薄味」と感じている食べ物でも、実際には塩分濃度が高い可能性があること、自分の感覚に頼った塩分制限が不確実であることを示していることが分かった。今後、どのような因子が塩味忌避反応を減弱させるのかを詳細に明らかにすること、そして、より低い濃度で忌避反応を誘導できる方法を開発することで、より効率的に無理なく塩分制限を行うことが期待できるとしている。
同社では。「健康長寿社会の実現」に貢献するための取り組みの1つとして減塩に関する研究を行っており、今回および今後の研究成果を基に、減塩に繋がる食事内容や食生活の提案、アプリケーションの研究開発、味覚の状態を認識することの大切さの啓発に取り組む予定だという。