チーズ摂取と認知機能の関係を分析 明治、日本人男女60人を対象に臨床試験を実施
㈱明治(東京都中央区、松田克也社長)はこのほど、カマンベールチーズに含まれる脂質成分「オレイン酸アミド」の継続的な摂取が、日本人中高年の記憶力などの認知機能の維持や睡眠の改善に寄与する可能性があることを明らかにしたと発表した。同研究成果は、3月27日に国際学術誌「Frontiers in Nutrition」に掲載された。また、5月24日から26日に開催された「第78回日本栄養・食糧学会大会」で発表した。
50歳以上75歳未満の日本人男女60人(最終的な有効性解析対象者は58人)を対象に、3群ランダム化二重盲検並行群間試験を実施した。被験者には、試験食品としてOAD(オレイン酸アミド純物質60 µgを含むカプセル食品)、MCW(オレイン酸アミド60 µgを含む乳原料発酵物を含むカプセル食品)、プラセボ(オレイン酸アミドを全く含まないカプセル食品)のいずれかを、12週間継続的に摂取してもらった。
試験食品の摂取前後には、認知機能との強い関連性が知られる血中BDNF量を測定したほか、2種類の認知機能検査(主要評価:Cognitrax、副次評価:あたまの健康チェック(R))を用いて被験者の認知機能やその変動を評価。また、同様に睡眠状態の主観評価をピッツバーグ睡眠質問票(PSQI-J)にて測定し、睡眠の質や入眠時間などの状態を評価した。
認知機能と関連する血中BDNF量は、試験食品摂取前と比較して摂取後にプラセボ群では負の変化率を示したのに対し、OAD群とMCW群の両群で正の変化率となるといった傾向を示した。Cognitraxでは群間で有意な差は確認されなかったが、あたまの健康チェック(R)では総合スコアの変化量のほかに、短期記憶を示す即時自由再生、ワーキングメモリーを示す遅延自由再生のそれぞれのスコアの変化量が、プラセボ群に対してOAD群とMCW群の両群で有意に高値を示した。また、OAD群とMCW群の両群で、試験食品の摂取前に比べて摂取後に睡眠状態の総合スコアや、試験の下位項目である睡眠の質、入眠時間のスコアが有意に改善したという。
これらの結果から、今回の研究で使用したオレイン酸アミドやオレイン酸アミドを含む乳原料発酵物の摂取は、認知機能の中でも特に短期記憶やワーキングメモリーの維持に効果を発揮することが示唆された。また、これらは睡眠状態の改善にも寄与する可能性が示されたとしている。
同社では、「超高齢社会となった日本において、チーズに含まれる成分による認知機能の維持の可能性を研究することで、健康寿命の延伸に貢献していきたい。また、認知症のリスク因子でもある睡眠状態の改善の可能性を研究することで、心身の健康の維持と日々のパフォーマンスの向上に貢献していきたい」と考えている。