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スマホ競争促進法12月全面施行へ アップル・グーグルを指定、利用者選択と安全性両立へ

 7日に開催された「第8回取引デジタルプラットフォーム官民協議会」では、今年12月18日に全面施行される「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホソフトウェア競争促進法/MSCA)の概要について、公正取引委員会事務総局の鈴木健太官房参事官が詳細を説明した(2024年6月成立)。
 これはデジタル市場の競争環境を整備し、消費者の利便性と安全性を両立させることを目的とする新法で、このたびスマートフォンの主要ソフトウェアを対象とした規制が導入される。

 同法は、OS(基本ソフト)、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンの4分野を「特定ソフトウェア」と定義し、ユーザー数が4,000万人を超える事業者を「指定事業者」として規制の対象とする。現時点で指定されるのはアップル社とグーグル社の2社。
 法の目的は、このような少数企業による寡占的市場構造の是正にあり、「公正かつ自由な競争の促進を通じ、国民生活の向上と経済の健全な発展に資する」ことが掲げられている。同時に、セキュリティやプライバシー保護といった「安全・安心」との両立も重視される。

禁止行為9項目と遵守義務5項目

 法の柱は、指定事業者に対する「9つの禁止行為」と「5つの遵守義務」にある。禁止行為の1つに、アプリストアへの参入妨害の禁止(第7条1号)がある。これまでアップル社やグーグル社が外部ストアを制限してきた状況を踏まえ、安全性を確保したうえで新規ストアの参入を妨げてはならないと定めた。
また、OS機能の利用制限を禁じる条項(第7条2号)も設けられた。アップルやグーグルが独自に利用する近接通信・音声入出力などのOS機能を他社にも公平に開放し、国内外の事業者が新たなアプリを開発できるようにする狙いがある。

 遵守義務では、特に「データポータビリティ(第11条)」が注目される。これは、ユーザーがスマートフォンやアプリを切り替える際に、自身のデータを容易に移転できるようにする規定で、これにより利用者はOSや端末の違いに縛られず、自由に乗り換えられる環境が整う。
 さらに、「デフォルト設定の変更」と「選択画面(チョイススクリーン)の表示」も義務化された。ユーザーが最初に端末を使用する際、ブラウザや検索エンジンを自ら選べるようにするもので、12月以降、順次スマートフォン画面に導入される予定である。

ガイドラインと今後の展望

 公取委は、法律の円滑な運用のために政令・規則・ガイドラインを策定した。ガイドラインには111の具体例が盛り込まれ、企業にも消費者にも分かりやすい内容を意識したという。策定に当たっては、学識者や消費生活相談員、教育関係者などが参加し、子どもの安全確保や教育分野での活用も議論された。
 同法は制定後3年を目途に見直しを行うこととされており、今後はスマートフォン以外のパソコン、タブレット、ウェアラブル端末、さらには生成AI分野への適用拡大も検討課題となる。

国際連携と今後の方向性

 デジタル市場は国境を越えて展開されることから、公取委は欧州委員会、英国CMA、米国FTC/DOJ、豪ACCJなどの各国競争当局との連携を強化。今年1月には「デジタル競争グローバルフォーラム」を日本で開催し、主要IT企業を交えた国際議論を進めてきた。来年1月には第2回の開催も予定している。

 鈴木参事官は最後に、スマートフォン市場における新法施行を前に、事業者や消費者団体に対し協力と理解を呼び掛けた。
 まず事業者に対しては、これまでにも「より便利なサービスを提供したい」、「新たな仕組みを導入したい」といった意見が多く寄せられてきたとした上で、今後も自由に意見や提案を寄せてほしいと述べた。事業者の現場感覚を踏まえた情報提供が、制度運用の改善や市場環境の整備につながるとして、「気軽に公取委へ意見を届けてほしい」とした。

 一方、中小企業や消費者団体に対しては、同法に関する報道などを通じて「不安の声」も寄せられているとしつつ、「消費者の安全と安心を守ることは当然の責務であり、私自身もユーザーの1人としてその思いは共有している」と説明した。公取委として、過度な懸念を抱かず前向きに協力してもらえるよう理解を求め、「ぜひ後押しをお願いしたい」とした。

 また、今後の展望として、競争促進によって多様で便利なアプリが利用しやすくなり、消費者の選択肢が広がることを強調した。価格面やサービス面でも競争を通じた改善が進み、特にカスタマーサービスでは「長期的にはしっかりしたサービスを行う事業者が生き残る市場になる」との見通しを示した。公取委は、こうした競争を通じて消費者利益を実現していく姿勢を改めて示し、「ともに健全な市場形成を目指したい」と述べた。

【田代 宏】

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