ステマ規制、10月1日施行へ 消費者庁「運用基準」修正、公表
消費者庁はきょう(28日)、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」について、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」と指定し、その運用基準を策定、公表した。10月1日から施行される。
日本はステマの草刈り場に
広告には、ある程度の誇張・誇大が含まれ、一般消費者は、商品選択の上でそのことを考慮するが、広告であることが分からない場合、広告内容をそのまま受け取ってしまい、商品選択が阻害される恐れがある。インターネット広告市場の拡大、SNS利用の向上で、従来の広告に比べて広告であることが分からない表示が増えており、一般消費者に「広告は広告であると分かるようにすること」が今回の規制の目的だ。
問題視されたのは、誰の表示か分かりにくいステルスマーケティングをめぐる表示。消費者庁は、昨年9月から12月にかけて有識者会議「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催した。ステマ広告は海外では規制されているのに、我が国では野放し状態だった。有識者会議では「我が国は諸外国の草刈り場」という厳しい意見も出たほどだ。
景表法5条3号告示で規制
会合では、我が国独自の規制のあり方を模索。ステマの様にインフルエンサーなどの第三者の関与がある、優良誤認(5条1号)や有利誤認(5条2号)で規制することができない表示に対して、「景表法5条3号の告示に新たに指定する」こととした。また、「規制対象となる表示(媒体)の範囲は(SNSなどのインターネット広告に)限定せず」4媒体(ラジオ・テレビ・新聞・雑誌)へも対象を広げた。
3月9日に内閣府から諮問を受けた消費者委員会では、結果的に指定告示案を答申したものの、運用基準案についてはパブリックコメントを踏まえてさらなるブラッシュアップを求めていた。
消費者庁が運用基準案を修正
指摘を受けて消費者庁は、「規制趣旨の更なる明確化を図るために告示を指定する理由を追記」、「通常の広告は規制の対象外。規制対象となるのは、広告であるにもかかわらず広告であることが分からないものということを明確化」、「仮に上記の規制対象となったとしても、本告示は広告であることを明瞭に示すことを求めるものであり、企業の自由な広告・宣伝活動を阻害するものではないことを明確化」――するなど、消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示の規制趣旨と対象を分かりやすくした。
また、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示に関しては、「規制対象となる“事業者が表示内容の決定に関与した”と認められる場合について、より詳細に記述」、「企業が第三者に表示を依頼したとしても、企業と第三者との間の具体的なやりとりの模様や内容(例えば、メールの内容など)に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と客観的に認められるものであれば、“事業者の表示”に当たらないことを明確化」、「具体的な事例の追加(事業者が表示内容の決定に関与した事例・していない事例など、告示の対象となる典型的な事例の追加)」――するなど修正を加えた。
さらに、「一般消費者にとって社会通念上、商品・サービスの広告・宣伝を行うことが明らかな者を通じて行う企業の広告は問題ない」ことを追加して、一般消費者が企業の表示であることを判別することが困難であるという考え方の理由を示した。
最後に、「社会情勢の変化に応じて、今後も引き続き具体例の追加などを行い、運用基準の明確化を図っていく」としている。
パブコメ「反対意見は2者のみ」
消費者庁は今回、1月25日から2月23日の期間に実施した、指定告示案と運用基準案に対するパブリックコメントの結果を公表した。学者、弁護士、企業、事業者団体、消費者団体など、56者・199件の意見・質問が提出された。
それによると、告示案についての反対意見は56者中2者のみで、提出された意見・質問のほとんどが、告示案を前提とした運用基準案に対するもの(意見135件、質問59件)だった。具体的には、文言の修正や問題がある事例、無い事例の追加など運用基準案の明確化に関わるものが99件、企業からの相談窓口の設置や今後も継続的な運用基準の修正を求めるものなど今後の消費者庁の対応に関わるものが36件、個別事例に対して事業者の表示に該当するかどうかの質問など運用基準案の解釈に関わるものが59件だった。
【藤田 勇一】
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