ステマ広告検討会スタート(後) 委員の見解「規制やむなし」でほぼ一致
消費者庁で開かれた「第1回ステルスマーケティングに関する検討会」(ステマ広告検討会)の後半は、自己紹介を兼ねて各委員がステマ広告検討委会に対する意見を述べた。各委員の見解は「規制やむなし」の方向でほぼ一致。次回以降、関係者のヒアリングを通じて健全な市場形成に向けた話し合いが行われる。
「ステマとは何か」因数分解が必要
新経済連盟で消費者政策に関わる片岡康子委員は、ステルスマーケティングを規制した場合、消費者も巻き込む恐れがある。その行為がどういうものなのか、「明確かつ限定的に事業者側も消費者側も分かりやすい予見可能性を保つ必要がある」とし、そもそもステルスマーケティングとは何を指し、それの何が問題となるのか、その程度も含めて「因数分解する必要がある」と述べた。
景品表示法検討会でも委員を務める京都大学大学法学院准教授のカライスコス・アントニオス委員は、消費者が加害者にも被害者にもなり得るような手法は「非常に広まりやすい特徴を持っている」とし、類似の手法はこれまでも何らかのかたちで規制の対象になってきたとの認識を示した。
また、ステマがオンラインやデジタルというかたちで行われていることに着眼した場合、従来の広告との間で不均衡が生じ、不均衡の中から事業者同士の競争に歪みが生じることで健全な事業者にまで何らかのかたちで損害が生じているのではないかと、事業者間においてもステマによる問題が生じているとの警告を行った。
前半でプレゼンを行った立命館大学経営学部准教授の菊盛真衣委員は、「インターネット上における消費者のコミュニケーションの透明性は高く維持すべき」と発言。ステマを使った広告にもかかわらず、それを明示せず、消費者を偽りの方向に説得する悪質な情報がピュアな情報と混在している現状を問題視した。そして、一定の規制は必要との見解を示した。
細かい規定は「後追い型立法」になりがち
規制に向けた検討という点で、ほとんどの委員の意見が一致する中、規制の中身についてアントニオス委員は、「あまり細かい規定を作り過ぎると、後追い型の立法に陥りがち」と指摘。「進化に耐えられるようなスマートな規制を行った方が良い」と注文を付けた。
また、いかに実効性を高めるための規制を行うかを考える際に、「定義に時間をかけるべきでない」という意見が出た一方で、「まず定義すべき」という反対意見も出た。
消費者も事業者も、必ずしもステルスマーケティングに対する一致した見解を持たないのが実情。互いにリテラシーが高まらない状況下において、「ステマに対する原則とかコンセプトというのをしっかりと確立する必要がある。グローバルでは、欺瞞的な行為である。だから違法であるというのが基準として考えられている。こういうところとしっかり歩調を合わせていく必要がある。その上で消費者も含めたステークホルダーに広く周知する必要がある」との意見も出た。
ステマは「広告」と言えるのか
WOMマーケティング協議会副理事長の山本京輔委員は、企業のコンプライアンス担当者として日常的にステマ広告と向き合う実務的な経験から、同検討会の開催趣旨にある「広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿するなどのステルスマーケティングの問題がより一層顕在化している」との一文を示し、「広告という言葉の使い方に非常に引っ掛かりを感じる」と述べた。
インフルエンサーが企業から金銭や物品を受け取って行う投稿を一括りに「広告」と呼ぶことに違和感を持つとともに、媒体考査もなく、媒体費も発生していない媒体社側も「自社の媒体の広告」と言われることに違和感を覚えるのではないかと指摘した。
「宣伝やマーケティングの一部であるということに間違いはないが、そこに消費者の主観や感想が含まれている投稿というものと、一字一句事前に確認して公開する広告というのは大きな違いがあると思う。事業者の関与があることを消費者に分からせる表示のやり方というのは具体的に議論していきたいと思う。例えば、それが結局“広告”というふうに表記することしか認められないということになると、事業者やインフルエンサー、関係者に大きな混乱を招くだろう」と、消費者への通知のあり方について持論を述べた。
事務局は、取りまとめに向けたスケジュールを公表した。1回の検討会に約3時間をかけ、12月の取りまとめまでに残り5回を開催する。2回目の検討会から4回目までは実態把握のために事業者などからのヒアリングを行う。
次回検討会は9月22日15時を予定しており、非公開で開催する。
(了)
【田代 宏】
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