ジャニーズ「性加害問題」の波紋(8) ジャニタレCM契約、23社中9社が「更新せず」
21日、日本民間放送連盟の遠藤龍之介会長(フジテレビ副会長)が故ジャニー喜多川氏とジャニーズ事務所(東京都港区、東山紀之社長)による性加害事件について発言したが、まるで他人事のようなありふれた言い訳に終始するにとどまった。
70ページに及ぶ再発防止特別チームの調査報告書に記載されている「マスメディアの沈黙」において、「マスメディアが同事務所を恐れて追従していること」が性被害を助長したとの指摘について、同事務所とテレビ局との共犯性をもっと真摯に反省するべきだろう。これはもちろん、放送局に限らず、その系列をなす新聞社、電通をはじめとした広告代理店などにも共通する問題である。
おそうじ関連商品のCMで風間俊介さんを起用している㈱ダスキン(大阪府吹田市、大久保裕行社長)は取材に対し、12日に報道発表した「いかなるハラスメントも容認していない。起用を続けるかは検討中」との方針に変わりはないとした。
他方、野菜飲料全般の販売促進に「Travis Japan」を起用しているカゴメ㈱(愛知県名古屋市、山口聡社長)は、「当社は行動規範に人権の尊重を掲げており、性的加害をはじめ、いかなる種類のハラスメントも一切容認しない」とした上で、「調査報告書および記者会見の内容を社内で検討した結果、本契約期間の満了をもって更新しない予定」と回答した。
複数の報道によれば、ジャニーズ事務所のタレントをCMに起用していた65社のうち、32社が契約を更新しないとの声明を発表したという。ウェルネスニュースグループ編集部は今月11日から、食と健康、美容に関わるヘルスケア関連事業者に対して独自取材を開始した。質問は主に3点。ジャニタレのCM起用に関して、商品と起用タレントの名前。今後、どのような措置を取るのか。CM契約の是非において、その判断基準は何か?
回答では、取材した23社のうち「契約は更新しない」と明確に回答したのが9社。11社が検討中とした。また、興和と湖池屋の2社はコメントを控えた。そして、更新の是非の判断について、具体的な基準を示した企業は1社もなかった。
【解説】
10月2日、ジャニーズ事務所が2度目の記者会見を行う。多くの関係者が見守る中、会見の中身次第では、スポンサー離れに一層の拍車をかける可能性もある。若者のテレビや新聞離れが急速に進んでいる。今回の問題でスポンサー料の急激な減収が予想されるマスコミ関係者の中には、ここに来て責任逃れの弁明が目立ち始めた。ジャニーズ事務所が放置してきた鬼畜の所業に対し、メディア幹部や広告代理店などの共犯者は自らが行った犯罪行為へのほう助に対し、悔い改め、報いを受けることが必至だ。そうでなければ、夢奪われた被害者の無念はこの先晴れることがないだろう。ジャニーズ事務所に今も所属するタレントの救済を訴える声もあるが、それを隠れ蓑にして断罪を免れようとする一部関係者の言動が許されるはずもない。
本シリーズ(5)でも述べたように、ジャニーズ事務所に端を発した性加害事件は、児童福祉法に違反した行為であることに変わりはない。「過去のこと」、「時効が成立している」という反論もあるかもしれないが、若狭勝弁護士はYouTubeチャンネルのニュース塾で「今から7年以内に行われた性加害行為が明らかになれば、同事務所の幹部を立件できる」可能性を示唆している。仮にそれがかなわないにしても、過去にそういう犯罪の構成要件を満たした行為を行ったという事実は事実として、将来も残り続けることを共犯者らは肝に銘じた方がよい。
(了)
【田代 宏】
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