システインで温室効果ガス削減
家畜由来メタンガスを抑制 サンクトが実用化めざす
各種アミノ酸やNMNなどの原料販売を手掛ける㈱サンクト(東京都江東区、宍戸哲夫/今川信雄代表)が、医薬品等に用いられるL-システインを活用し、地球温暖化の一因とされる温室効果ガスの削減を図る取り組みを進めている。
L-システインは、医薬品や化粧品などの原料として用いられるアミノ酸。牛に代表される反すう動物のげっぷに含まれるメタンガスの発生を抑える働きが確認されていることに着目したもので、L-システインを強化した飼料の普及をめざす。人為的な温室効果ガスの排出量のうち約16%をメタンガスが占め、そのうち約25%が家畜由来とされる。
帯広畜産大学の高橋潤一名誉教授(農学博士)らとともに取り組む。牛など家畜の栄養学研究に携わる高橋名誉教授は、L-システインと硝酸塩を飼料に添加すると、胃内のメタンガスの発生が抑制されることを、牛の硝酸塩中毒を研究する中で明らかにしていた。
この研究成果の実用化をめざし、サンクトでは先ごろ、高橋名誉教授と共同研究開発を進める契約を締結。「高橋名誉教授らの技術によるメタンガス抑制効果は約90%と見込まれる。実用化できれば、温室効果ガス排出量の大幅削減につながることも期待できる」としている。
サンクトでは、L-システイン塩酸塩の原料販売を以前から手掛けており、国内で一定規模の市場シェアを持つ。中国最大級のアミノ酸メーカー、新生源社(湖北省)の日本総代理店として各種アミノ酸(加水分解抽出法)を取り扱っており、安定供給できる強みを生かす。
実現にはハードル 異業種間での連携も
ただ、実現に向けては課題もある。まず、L-システイン塩酸塩を飼料に添加するには飼料添加物として承認される必要がある。また、承認されたとしても、L- システインを添加することで飼料価格が通常よりも高まる。「酪農家・畜産家にとってもコスト上昇は受け入れがたい。L-システイン強化飼料を普及させるには、コスト上昇への対応が大きな課題になる」と同社では話す。
こうした課題を解決するため同社では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に類似した国の助成制度の導入をめざし、関係省庁へ働きかけを行いたい考え。また、温室効果ガス削減に取り組んでいたり、関心を抱いていたりする企業を募り、資金調達を実施するなど異業種間での連携も模索する。そうした対外的な活動とともに、高橋名誉教授との共同研究開発を進めることで、L-システインを活用した家畜由来メタンガス削減技術の実用化をめざす。
【石川太郎】