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サプリ製造の現場から 東洋新薬、工場内部へ(3)最終的に見えてきたのは「品質文化」

 サプリの製造現場を見る、そして伝える。そんな目的でサプリの受託開発・製造大手、㈱東洋新薬(服部利光社長)の生産拠点「インテリジェンスパーク」(佐賀県鳥栖市。以下、IP工場)を1月下旬に取材。これまで4回にわたりレポートしてきた。今回が最終回。取材をとおして見えてきたサプリの品質管理・品質保証の本質を最後に考える。

工場の隣に倉庫を建てた理由

 サプリの製造管理、品質保証は、製造する前から始まる。

 取材では、「インテリジェンスロジスティックス」と名付けられたIP工場に隣接の倉庫(以下、IL倉庫)も見せてもらった。原料や容器・包装資材などを保管するための大きな立体倉庫(延床面積5,345平方メートル)。IP工場竣工の約4年後、2023年6月に竣工した。

 IP工場で製造するサプリに使用する原料や資材などはまず、いったんIL倉庫で受け入れ、使用するまで保管する。倉庫内での保管の仕方にもルールがあって、どこにどの原料や資材などを置くか、ロケーションを決めている。アレルゲンを含む原料と、含まない原料を同じ区分に保管するようなことはしない。

 受け入れの頻度は、ほぼ毎日だという。その日その日の受け入れリストと照らし合わせながら、数量や名称などに誤りがないか検査してから受け入れる。受け入れる種類も数も多い。保管の時点から、1つひとつをシステムで管理して、取り違いを防止する。

 製造に使われる時がやってくる。IP工場と連動しているシステムによって指定された原料や資材を指定された数量、工場に移送する。

 その際、外に出すことはない。つまり、外気に触れることがない。IL倉庫とIP工場は構造的に連結されていて、両施設を結ぶ水平搬送機で自動的に運ばれていく。案内してくれた製造本部品質管理課の課長補佐はそのように設計した理由をこう話す。

 「外に出してしまうと、どうしても虫の付着だったり、温度の影響を受けたりします。そういったリスクを最小限に抑えようということです」

 工場隣接の倉庫を建設し、自社保管できるようにしたのはなぜか。増加する受託件数に対応するため、原料や資材などの輸送時間を削減し、製造から納品までのリードタイムを短縮化、効率化するためだと思っていたがそれだけではなかった。

 「自社保管による品質管理体制の強化」。IL倉庫竣工を伝える23年当時のニュースリリースに書かれていたことの意味を、現場を見ることで初めて理解する。

もしもの製造エリアの菌汚染、迅速対応する手段

 IL倉庫からIP工場に戻り、取材が認められた最後のエリアに入る。

 原料の受け入れ検査や製品の出荷前検査などを行う検査・分析エリアだ。工場の規模に比例して広い。連載の第2回で触れた、迅速微生物同定装置、微生物迅速培養装置、異物同定装置(FT-IR)、近赤外線分析法(NIR)ガンタイプなどといった分析機器の実物を見せてもらう。

 仮に、製造エリアで菌汚染が発生したとする。そのとき東洋新薬は、コロニーが確認された状態であれば、その菌が何であるかを2時間程度で確定できるという。迅速微生物同定装置と微生物迅速培養装置を導入しているためだ。

 「外部機関に分析を依頼すると、結果が出るまでに1週間くらいかかります。その菌が何であるかを迅速に特定することで、次に取るべき対処も迅速に行えるようになります」

 そう話すのは、本連載の第1回と第2回で伝えたインタビューに協力してくれた、健康食品の品質保証を担当する品質保証課の課長(品質保証本部)。微生物に関する一連の分析機器は、「原料の受け入れ検査や、(製造機器や製造エリアの)洗浄がしっかり実施できているかどうかの検査にも利用しています」と教えてくれた。

恒常的・安定的に「良品質」を得る方法

 サプリの製造現場をちゃんと見てみたい。昨年発生した健康被害問題をきっかけに、そんな個人的な動機で思い立ち、東洋新薬が協力してくれた今回の取材。記事をまとめるに当たり、取材を振り返りながら率直に思ったことがある。

 それは、サプリの品質管理、品質保証とは、コストがとてもかかるものであるということだ。

 IP工場に取り揃えられている分析機器の数々。総額はおそらく数億円に上る。また、品質管理体制向上の目的もある自動化された製造機器、充填・包装機器。総額をイメージすることすらできない。そういったモノに対するコストだけではない。品質管理・保証には、専門知識を持つ人材が一定数、必要不可欠だろう。削ることのできない人的コストもある。

 ただ、どんなにコストをかけたとしても、品質上のミスは起こり得る。

 だからこそ、品質管理・保証に多大な投資を行っている同社でさえ、「ミス・ゼロ」を目標に掲げているのではないか(第1回参照)。その目標を実行するために、工場に属さない従業員も含めた全社的なGMP教育を繰り返しているという。

 この1年の間に、「Quality Culture(品質文化)」という言葉を知った。

 恒常的、かつ、安定的に供給可能な「良品質」の製品を得るための肥沃な土壌。それが品質文化だという。「土壌には水や肥料をやり、草取をし、耕して肥沃なものに醸成する。手間をかけなければ肥沃な土壌はでき上らない」(櫻井信豪編著『ゼロから学ぶGMP』)。

 品質文化を醸成し、会社全体に浸透させる。おそらく東洋新薬は、投資と教育を通じてそれをやろうとしている。ほかのサプリの製造現場はどうだろうか。

(了)

【石川太郎】

(文中の写真:上=IL倉庫の外観/下=IL倉庫とIP工場をつなぐ搬送機械。いずれも同社提供)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
事業内容:健康食品・化粧品(医薬部外品)・MG(健康・美容器具)・医薬品の受託製造

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