コロナ禍に立ち向かう受託各社の対応~「免疫」機能表示が追い風に(後)
<コロナが業績を直撃>
第1次「緊急事態宣言」は、食品CROを直撃した。業務の特性上、健常人をクリニックに集めて全ての作業を行うため、被験者とスタッフや医療従事者との接触が避けられない。また、小部屋で被験者と対面して行う検査を含む試験の実施は困難で、当時、アルコール消毒や体温計も不足、質の高い試験を担保すること自体が非常に厳しい状況だった。
㈱クリニカル・サポート・コーポレーション(北海道札幌市)は、「体温測定、行動アンケート、飛沫感染を防止するための衝立の設置、ソーシャルディスタンスの確保、被験者来院数の制限など、今まで以上に臨床試験を実施するにあたり配慮が必要となった」という。また、時期的に医療機関への来院を敬遠する人が多く、被験者の確保も困難を極めたと振り返る。
別の食品CROからは、「厚生労働省から医療機関へ健康診断などの中止命令があったため、被験者の医療機関への来院が不可となり、全く止まってしまった」と影響の大きさを話す。
<複雑化する試験デザイン>
機能性表示食品の届出公表件数が3,695件になった(1月27日時点)。機能性表示も血中中性脂肪減少や食後血糖値上昇抑制、血圧低下などの生活習慣病予防関連から、便通、整腸作用、認知機能、メンタルヘルスと幅広い。また、昨年あたりから新規の機能性関与成分による届出も増加している。
市場拡大で臨床試験の件数が増加、新規成分による届出が増えたことによって複雑な試験デザインが増えている。臨床現場から得られるデータ量やデータソースも急速に増加している。そのため、食品CROには、これまで以上にデータマネジメントにおける高度な専門性が求められており、そうした人材の育成・確保を迫られている。
<「免疫」CROに問合せ相次ぐ>
緊急事態宣言発令で大きく影響を受けた食品CROだが、宣言解除前後に大手食品メーカーを中心に、止まっていた案件が一気に動き出した。そこにさらに追い風となったのが、8月の「免疫機能の維持」を訴求する機能性表示食品の届出公表だ。「免疫」を表示した製品が初めてということと、コロナ禍による国民のセルフメディケーションへの意識向上もあり、試験を請け負う食品CROには、「機能性表示食品で免疫機能をうたいたい」や「どのような指標で免疫機能維持をヘルスクレームにできるか」など、免疫に関連する問い合わせが急増した。
実際、11月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「食品開発展2020」でも、食品CRO各社のブースでは、「免疫」という文字が大きく書かれてあり、ある出展者は「ブースに来る人の相談はほとんどが免疫だった」と話している。
ある食品CROでは、「腸関係や脳関係が続いていたが、流れが変わった。一時的なブームではなく1つの大きな流れになるのではないか」と声を弾ませる。また、別の食品CROは、「直接的に免疫をうたったものだけでなく、日ごろからの健康を意識した訴求が増えるのではないか」と予想する。
<新たなビジネスモデルを構築>
これまでの臨床試験は、医療機関への来院をベースに進められてきた。コロナによるこれまで通りの試験実施が難しくなるなか、ウィズコロナの試験方法を提案する動きも見られる。
㈱レバレッジブレーン(東京都港区)では、クリニックを使わない在宅型のスキームを構築した。今井社長は、「クライアントは評価内容によっては、クリニック使用を必須としていない。特殊な測定が必要な試験では、クリニックを併設している食品CROが優位だが、それ以外の領域で勝負することで受注につながっている。在宅型試験の動画配信による営業は予想以上に反響があり、多くの大手食品メーカーとリモート会議を行い、当社を知ってもらう良い機会となった」と話す。
未病ライフサイエンス㈱(東京都千代田区)も、リモート臨床試験サービスを基調にEDCの標準使用を進め、各社の要望に応じて遠隔検査を取り入れていくという。
2回目の緊急事態宣言発令で、再び大規模試験への影響が懸念されるなか、有事に対応できる試験モデルの構築が急がれる。