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コロナ予防を標ぼう 問われるモラル

㈱山田養蜂場(岡山県鏡野町、山田英雄社長)は11月1日に新発売したサプリメント『ビタミンD+亜鉛』について、自社ホームページの「新着情報」コーナーでコロナ予防を標ぼうしたプレスリリースを発信している。

先着情報のテキスト表示は、「新型コロナウイルス“第6波”に警戒を<感染>と<重症化>どちらも予防したい…お客さまの声に応えて「ビタミン D+亜鉛」2021 年11月1日(月)新発売」。リンク先には「報道関係者各位」とするプレスリリースがPDFファイルで表示され、ダウンロードできるようになっている。

リリースには、「まだまだ油断できない第6波への警戒」とし、厚生労働省の公表資料「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」から、「重症化する人の割合が60歳代以上で8.5%」というデータを引用し、「医療体制の逼迫が問題となった第5波を振り返ると、第6波に備えて「感染」だけではなく「重症化」の予防も重要になってきています」と、不安をあおっている。

さらに、「山田養蜂場にも、多くのお客さまから「予防だけでなく、もし感染しても重症化しないよう、今すぐできる対策をしたい」との声が寄せられております。そのようなご要望にお応えするため、このたび抗菌ペプチドの産生をサポートする「ビタミン D」に、身体の免疫力をサポートする必須ミネラル「亜鉛」「ビタミン A」「ビタミン B6」「ビタミン C」を配合し、一粒に凝縮した製品を開発いたしました。「ビタミン D」と「亜鉛」は、ともに新型コロナウイルス感染時の重症化を防ぐ可能性が研究報告されており※2※3、いま注目されている栄養素です」と新商品『ビタミンD+亜鉛』を紹介。※2※3として、海外の研究論文を紹介、欄外に出典を示している。
同社はこの後も、「新型コロナウイルスに感染した方や、重症化した方は血中のビタミン D 濃度が非感染者と比較して低いことが報告※2※4されています。外出自粛など様々な要因からビタミンD不足を心配されるお客さまの声を受けて、1日に必要な量をしっかり摂取できるよう配合しています」と、※4として新たな論文も紹介している。

編集部が論文の内容について有識者に確認したところ、論文※1は、「コロナ感染者は非感染者に比べて血中ビタミンD量が少なく、免疫に重要なインターロイキン6量が少ないこと、重症者ではその差がさらに大きいという調査報告だが、ビタミンDを補給したら軽症化するのかは調べていない」、論文※2は、「症状の悪化したコロナ感染者は血中亜鉛量が少ないという相関を調べた調査報告であり、亜鉛を補給したら重症化が防げるのかは調べていない」、論文※3は「コロナ感染者の血中ビタミンD量が非感染者に比べて少ないという調査報告だが、ビタミンDを補給したら感染を防げるのかは調べていない」という。

報道各社の記者が同リリースを真に受けてそのままコロナ予防効果に関する記事を報道した場合、記事を読んだ消費者は誤った情報に基づいて商品を購入することになる。山田養蜂場は同リリースによって、誤った情報を広く社会に拡散させてしまうことになる。
仮に報道各社がリリースの記述どおりに記事を書かなかったとしても、山田養蜂場の会員をはじめ不特定多数の消費者がホームページ上で、同リリースを目にしていることだろう。

専門家も問題視

食の安全に詳しい東京大学名誉教授の唐木英明氏は、「コロナ感染や病状悪化に対してビタミンDや亜鉛の補給が有効であるという科学的根拠はないのだから、あたかも有効であるようなプレスリリースを出したということは、メディアに対して広く優良誤認を宣伝しくれということで、問題は大きい」と述べている。

消費者庁は健康増進法65条1項に基づき、インターネットの広告監視による改善指導を継続的に行っているが、主な検索キーワードに、今回、同社がプレスリリースで発信している「感染症」、「免疫力」などが含まれている。
また、今年6月25日には「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品の表示に関する改善要請及び一般消費者等への注意喚起について」とする注意喚起を行い。「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品については、現段階においては客観性及び合理性を欠くものであると考えられ、一般消費者の商品選択に著しく誤認を与えるものとして、景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の規定に違反するおそれが高いものと考えられます」と呼びかけている。

消費者庁が規定する健康増進法65条1項とは、「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない」とするもので、ここにある“何人”の定義は、「食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をする者」とされている(消費者庁「健康食品の留意事項について」)。そこには、食品の製造・販売事業者はもとより、新聞社・雑誌社・放送事業者・インターネット媒体社などの広告媒体事業者および、広告代理店、サービスプロバイダーなど広範に及ぶ。つまり同社のプレスリリースは、報道各社を共犯者として巻き込む恐れも内包していることになる。

疾病予防は景品表示法や健康増進法に限らず、医薬品医療機器等法にも抵触の恐れがある。事実、「コロナ予防に効果がある」と広告して製品を販売していた東京都内でエステサロンを経営する女性がきのう(4日)書類送検されている。
日頃から社会貢献に力を入れていることを宣伝している山田養蜂場だけに、行き過ぎたプレスリリースを発信した同社のモラルが問われる。

山田養蜂場に対して、コロナ予防効果をうたうことが、消費者の誤認を招く可能性があるということを踏まえて、「消費者庁が新型コロナ予防を標榜する食品の販売について、消費者に注意喚起を行っていることを知っていたか」、「ビタミンDおよび亜鉛の新型コロナに対する根拠として3つの海外の論文の典拠を記載してあるが、科学的根拠として有効であると考えているのか。そうだとすればその根拠は?」、「プレスリリースを発信した意図は?」などについてコメントを求めたが、回答はなかった。

【田代 宏】

(冒頭の写真:山田養蜂場のホームページ、文中の写真:報道各社に配布されたチラシ)

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