コスト優先から質重視への市場転換 【食品CRO特集】科学的根拠を確実にする食品CRO機関の役割
機能性表示食品制度が施行され10年が経過した。市場の活性化と国民の健康増進に寄与してきた一方で、その運用において長年の構造的な問題を抱えてきた。それは、依頼するメーカー側が「届出の成功」や「迅速さ、低コスト」を優先した結果、臨床試験の「品質」が疎かにされがちであったという点にある。科学的な根拠作りを担う食品CRO(試験受託)機関には、医薬品の治験に匹敵する「徹底した品質管理」の導入と、最新の解析技術による「客観性の証明」が切り札として求められている。確かな品質の確保という使命を背負った食品CRO業界が、どのように課題を乗り越え、「信頼性の高い臨床試験」を確立しようとしているのか、各社の動きと合わせてレポートする。
医薬品に学ぶ品質の徹底、市場の厳しい現実
食品の臨床試験においても、その信頼性を担保するため、医薬品の治験と同じ「徹底した品質管理」が求められる。この品質管理のベースにあるのは、医薬品の治験で求められる厳格なルールであるGCP(適正な臨床試験の実施基準)の考え方。
北海道を拠点とする㈱クリニカル・サポート・コーポレーション(CSC)のように、グループ内に医薬品の治験を専門とする施設を持つCRO機関は、その厳しいGCPのノウハウを食品試験の品質管理のベースとしている。また、創薬支援で実績を持つ㈱トランスジェニックも、医薬分野で培った知見を活かし、データの正確性や一貫性を確認するため、データ管理と現場の確認作業(モニタリング)の連携に力を注いでいる。
メーカーが食品CRO機関を選ぶ際の決め手は、「臨床試験の実績と信頼性」が最も重視されているという声がある一方で、「試験費用の安さ」や「実施期間の短さ」も依然として重要な判断要素の1つになっているようだ。この「コスト・スピード・品質」のバランスを取ることが、食品CRO機関にとって最も大きなジレンマとなっており、質の向上を妨げる要因とも言える。
臨床試験の信頼性を高める上での課題は多く、多くの食品CRO機関から、「専門知識を持つ人材(統計家やCRCなど)の不足」と、「食品試験特有の被験者のコンプライアンス(試験参加中のルール遵守)維持の難しさ」が明らかになった。被験者が試験食以外のものを摂取したり、生活習慣を守らなかったりするとデータは信頼性を失う。そのため、例えばトランスジェニックでは、試験開始前に「前観察期間」を設け、被験者の普段の生活やコンプライアンスを確認するといった工夫を凝らしている。(月刊誌「Wellness Weekly Report89号(2025年11月10日刊より転載、つづきは会員専用記事閲覧ページへ)
【藤田 勇一】











