クロ現、小林製薬「紅麹製品」に焦点 「サプリには食品と区別する法律が必要」(唐木氏)
NHK「クローズアップ現代」がきのう8日、小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)が製造販売した「紅麹」成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題を取り上げた。ゲストに東京大学名誉教授で食の信頼向上をめざす会代表を務める唐木英明氏を招き、サプリメントで健康被害が相次いている理由、毒性のある成分が混入した過程、サプリメントを含めた食品の取り扱い方について話を聞いた。
キャスターの桑子真帆アナウンサーは、薬と違い強い成分が含まれていないサプリメントでなぜ今回のような健康被害が相次いでいるのかを聞いた。
唐木氏は、サプリメントは1回限りで終わることなく毎日継続摂取する。すると今回の腎機能障害のようにゆっくりと症状が進行する。「サプリをずっと飲んでいて、少しでもおかしかったらサプリをやめること。そして病院で診察を受けることが必要」と答えた。
番組では、元グンゼ㈱の社員に対して紅麹の培養環境について話を聞くとともに、日本大学医学部の阿部雅紀教授、くらしき作陽大学の河野勇人教授、園田学園女子大学の渡辺敏郎教授への取材も紹介した。
紅麹研究に30年以上携わってきたという渡辺敏郎教授は、「おそらく、大阪工場で培養していた時のタンクの状況が良くなかった」と指摘した。実際、小林製薬は過去に温水がタンク内部に入るトラブルがあったことを明らかにしているという。「長年ずっと同じタンクで培養していくと、老朽化してきたりする部分というのはある。今回の原因は培養タンクの構造上のどこかに問題があって、良くない成分を作り出してきたのではないかと考えられる」との仮説を立てている。
桑子キャスターは、異変がどの段階でどう起きたのかを尋ねた。
唐木氏は、昨年4月~10月の間に未知の成分が混入したと言われていることから、「去年の4月に何かが起きてそれが継続した。何が起きたのか、1つの可能性は青カビの胞子が培養装置に入り込んでそこで青カビが繁殖して未知の成分を作ったという可能性。もう1つは、培養タンクに何かの不具合があってそこから外部の青カビがタンクの中に入り込んで有害成分を作ったという可能性」が考えられるとしながらも、「今後の調査を待たないと本当のところは分からない」とした。
製造工程で異変が起きたとした場合、どういうタイミングで起きる可能性があったのかという問いには、「培養」、「粉砕・保管化」、「包装」の過程が最も何かが起こりやすい場所だが、それも今のところよく分からないと答えた。
番組では検証の過程で、それらを解明する手掛かりとして製造工程の中で培養した後の紅麹のサンプルが残されていることが分かったことを明らかにした。サンプルから想定されていない成分が検出されれば培養中もしくはその前後の工程で問題が起きた可能性が高まる。逆に検出されなければ、培養中ではなくそれ以降の工程に絞られてくると説明した。
桑子キャスターは最後に、今回のような予想外のことが起こらないためには何をしたらいいのか? サプリメントを含めた食品の扱い方がどうあるべきかを唐木氏に聞いた。
「サプリメントというのは法律上は食品だが、食品とは全く違う」と唐木氏。
錠剤・カプセルの状況で有効成分を濃縮するから、毒性の物質も濃縮される。それを継続して飲むという2つの特徴があるのでリスクがとても大きいため、「企業は製造過程では一般の食品よりもずっと厳しくこれを注意しなくてはいけないし、法律上でも食品と区別して厳しい規制をする必要があるが、法律上、サプリは食品であるためにそれができない」と現在の法制度の不備を指摘した。その上で、安全性確保のためには「食品とは区別する法律がどうしても必要ということになる」と健康食品独自の法制定の必要性に言及した。そして、「企業のトップから現場まで全員が安全を守るという意識を持つ安全文化を確立することが大事」と述べた。
【田代 宏】
(冒頭の写真:唐木英明東大明鏡教授(右)と桑子真帆キャスター)