オムニカ、裾野工場で難易度の高い原料を生産
（株）オムニカ（東京都文京区、高尾久貴社長）の裾野工場が本格稼働に備えている。高尾久貴社長を工場に訪ね、課題と抱負を聞いた。（聞き手・文：田代 宏）
――禁止薬物の混入事件などもあり、消費者に期待を持たせる商品と、買った後に期待に応えることができる商品がリンクしにくくなっている。
高尾 その辺は業界全体の問題で、私たちは反省しなければならないが、今後は期待に沿った商品を手に取っていただくという点で、原料メーカーの役割は大きいだろう。
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高尾久貴社長
――具体的には？
高尾 錠剤やカプセル形状のダイエタリーサプリメントについて、関係者はとてもよくやっていると思う。惜しむらくは、サプリメントに利用されている原材料の部分で、消費者の期待に応えられる品質という意味で、本当に品質確保されているのかどうかに疑問がある。
サプリメントは、いわゆるバランスの良い食事と競合するのではなく、あくまでも補う側に立って共存していこうという立場で普及してきた。時代が移りゆくなかで、ダイエタリーサプリメントを通じてバランスを補うことの合理性が高くなってきたので、日常的な食生活から、より多くの役割というバトンを受けたことに対して重大な責任を感じている。だからこそ、期待された性能を約束した、期待通りの性能と品質を持っているサプリメント原料を提供することが、我々原料サプライヤーに課された役割だと思う。
――役割の実現のために新工場が必要だった？
高尾 それまでに私の前に立ちふさがっていた課題があった。自分自身で、健康食品を信用できていないという葛藤があった。事業者が投稿した中立とは言えない論文しかない場合でも、それをエビデンスと扱って、「ユニーク」、「こだわり」、「希少価値」みたいな憧憬を煽りながら、プラセボ効果だけしかない商品ばかりが売られているのではないか、と疑念を感じていた。
もしそうであれば、古代呪術のように、いずれ利用される現場から退場しなくてはならないことになるわけだが、機能性表示食品制度が施行されたことによって、食品の3次機能の活用を取り込む活動をしていく参加者は、呪術業界とは別行動を取ることが可能になる。少なくとも、「悪貨が良貨を駆逐する」の悪貨に巻き込まれないで活動していく場所が残されている、と気を取り直すことができた。
――なるほど。
高尾 もともと食品に含まれる成分をサプリメント利用によってバランスを補うことが、通常の食事だけで管理するよりも効率が良いという説に便乗して、さらに、その成分をわざわざ抽出までして利用し、いろいろな抽出物があるなかで、抽出条件が異なるもの同士でエビデンスがあったり、エビデンスがなかったりしているわけだから、抽出工程の違いによってエキスとしての性能が変わってくるということがわかってきた。
従って、最も高いオッズで効果が発現する抽出方法を開発することが目標となった。開発を進めるに従って、どうしても専用プラントが必要になってきた。
――オッズとは？
高尾 有益性の大きさではなく、有益性が発現する確率のこと。サプリメントで補ってよかったと納得できる利用者が、1人でも多くなることを重視している。
――高尾社長が求める原料とは？
高尾 機能性表示食品でも必要条件になっていないので、不思議だなと考えることがあるが、細胞試験などで示した作用機序が求められているのに、なぜか、細胞試験で評価された成分が、経口摂取した後の体内動態について説明が求められていない。これもあと何年か経ったら非科学的と、海外やほかの産業などから必ず指摘される弱点だろう。
私たちの場合は、臨床試験で有効性を検証することになるので、原料製造技術においては漏れなく、成分の生物学的な動態も制御しようという目的を含んでくる。そうなると、工場のデザインは、できる範囲で製造を目指した多目的抽出工場と異なり、負荷が高い製造方法を選定しなければならない。規格基準の3項目、基原・製法・分析値において、一部には分析値だけで済まそうという考え方もあるようだが、当社の方針は「製法」の詳細管理に高い比重を置いている。難易度が高い「製法」で製造される原料だと思う。
――ありがとうございました。
※詳細は「Wellness Monthly Report No.15」（9月下旬発刊）に掲載。
＜COMPANY INFORMATION＞
所在地：東京都文京区小石川1-15-17（本社）
静岡県裾野市今里492-1（工場）
TEL：03-5840-9811
FAX：03-5840-9812
URL：http://www.omnica.co.jp
事業内容：健康食品の製造・販売、加工食品の受託製造など
（冒頭の写真：裾野工場（抽出棟））
関連動画：映像から知るオムニカの機能性食品成分
