エビデンス入門(41) ランダム化比較試験における対照群
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣
ランダム化比較試験(RCT)では、対照群と処置群を設定する。処置群には効果を確認したい関与成分を配合する。対照群は、多くの場合、関与成分を配合せず、その他の成分は処置群と同じであるプラセボを選択することが多い。プラセボを対照として設定した場合は、ランダム化プラセボ対照比較試験などのように呼ばれ、一般的には、エビデンスの質は高く評価されることが多い。
そもそも、プラセボを対照とする設定は、プラセボ効果(プラシーボ効果と同義)という要因を差し引いて介入の効果を測定するために導入されている。プラセボ効果とは、病態の変化において治療を受けているという心理的安心効果、そもそも介入によらない自然治癒による効果を介入の効果から差し引き、介入群の真の効果を測定するために用いられる手法である。この手法が考案されるまでは、介入の前後の比較で介入の効果を測定することが多かった。介入前後の効果測定だけでは、自然治癒の効果が差し引けないため、このような手法が考え出された。
機能性表示食品などの開発を目指した臨床試験、特定保健用食品(トクホ)の試験の場合も、対照群は多くの場合プラセボを設定している。しかし、多くの場合、これらの試験の対象者は、健常者あるいは境界域の人が対象であることから、プラセボ対照にすることによって、自然治癒や日常変化の効果の差し引き量よりも心理的効果の差し引き量の方が大きいという指摘もある。食品を対象とした試験などの場合は、心理的要因が非常に大きいとされ、プラセボを対照とすることが適切かどうかの検討が必要とする専門家や有識者もいる。
ランダム化比較試験では、プラセボを対照としない場合も成立が可能である。対照群をプラセボではなく、無処置の群にすることや、既存の治療法やすでに測定する主要アウトカムで効果が報告されている介入方法を対照とする場合だ。
無処置群を対象とする場合も、試験に参加している意義を意識付けるために、介入群と同じ制限事項は順守させる必要がある。被験者は、試験に参加している意識はあるが、無処置群に割り当てられると試験品の摂取などの介入がないため、自分自身では割付が分かってしまう。そのため、盲検性は実施者に盲検がかかった単盲検となるが、介入による期待感から来る心理的効果はほぼ打ち消されるため、介入群と比較する場合は、自然治癒や日常変動のみを差し引くことができると考えられる。
最近、機能性表示食品などの食品試験では、無処置群を対照としたランダム化比較試験に注目が集まっている。
(つづく)