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エビデンス入門(37)
臨床試験を企画するには(前)

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科講師 竹田 竜嗣 氏

 エビデンスの基礎知識では、機能性表示食品についてのさまざまなトピックを取り上げて解説してきた。

 機能性表示食品の登場によって、食品分野ではさまざまな臨床試験が企画実施されてきた。機能性表示食品制度の発足前は、エビデンスといえば細胞試験や動物試験が多く、ヒト試験を実施していても数人での結果など、多くが基礎研究のデータやプロモーション用のデータに留まっていた。
 しかし、機能性表示食品制度が発足し、食品に機能性表示文言が直接表示できるようになり、ランダム化プラセボ対照比較試験(RCT)など信頼性の高い手法での臨床試験実施が一気に広まった。また、複数のRCTを束ねて統合するシステマティック・レビューやメタアナリシスといった手法も機能性表示食品では用いられており、事業者の自己責任制度とはいえ、科学的信頼性の高い手法によってエビデンスの質を担保した制度になっていることは間違いない。

 しかしながら、販売する事業者や、原料としてエビデンスデータを揃える原料メーカーの中には、制度の趣旨や中身はよく理解していても実際の方法などについては理解が追いついていない事業者も多くいると思われる。そこで、今回からは臨床試験を企画実施する流れを追いながら、トピックを取り上げていく。これまでに紹介・解説したキーワードも出てくるが改めて復習していただければ幸いである。

 まず初めに臨床試験を企画するために実施するべきことは、臨床試験のデザインを決めることにある。目的によって臨床試験のデザインはある程度決まってくる。
 有効性試験であれば、プラセボを対照として設定し、試験品との2群で実施する方法や、用量反応性や有効量を見たい場合には、試験品群を複数群設定する。
 安全性試験であれば、過剰摂取による有害事象を観察するのであれば、単群(試験品のみ)で通常用量の3倍~5倍を4週間程度の短期間摂取させる過剰摂取試験が一般的であるが、長期的な安全性を観察するのであれば、プラセボ群を設定し、12週間以上の通常用量を摂取させ、有害事象の発生率をプラセボ群と比較するといった方法になる。

 気づいた人も多いと思うが、長期の安全性試験は、有効性試験とデザインは変わらないので、有効性試験の実施時に、安全性評価として、有害事象の観察を入れておくことで兼ねることが多い。また、安全性試験の場合は、摂取を止めてからの事象を観察するための、後観察期間を設定する。特に過剰摂取による腹部症状(膨満感、便の軟化、ゲップなど)が食品形態によって生じる恐れがある場合は、設定することが多い。

 このように、臨床試験の企画の初めは、試験目的を設定することにより、試験のデザインはおおまかに決定することができる。
                                                      (つづく)

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