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エビデンス入門(26)~最終製品を用いた臨床試験

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣

 機能性表示食品「事後チェック指針」に取り上げられている内容について解説する。これまでにも、最終製品を用いた臨床試験での届出における留意事項として、臨床試験の計画時の留意点について解説した。今回は、臨床試験の解析時における留意点について解説する。臨床試験を実施したのち、解析を実施するが、それまでのプロセスについて簡単に説明する。

 まず、盲検下の状態(各被験者がプラセボ食品を摂取しているか機能性関与成分を含む食品を摂取しているかがわからない状態)でデータを固定する。ここでいう「データの固定」とは、解析から除外する者の有無を決定することや、不測の事態によりデータが欠損している場合の取り扱いなどを決定することを指す。

 データの固定が終われば、キーオープン(各被験者がプラセボ食品、機能性関与成分含有食品のどちらを摂取しているかを開示する)し、解析を実施する。この解析の際の留意事項としては、事前に統計解析計画書を作成しておくことが望ましい。事後チェック指針にここまでの記載はないが、通常、臨床試験を実施する際は、計画書の中にも簡単な解析計画を記載するが、詳細は計画段階では決まっておらず、実際の解析を行う直前に決まることが多い。不適切な解析の例として、後付けで都合よく解析方法を変える事例が一般的によく挙がるため、不適切な解析をしていない証明のためにも解析計画書はキーオープンまでに作成し、試験責任医師や関係者の同意を
得ておくことが重要である。
 
 機能性表示食品の事後チェック指針では、不適切な解析事例として例示されているものの1つとして、「主要アウトカム評価項目で介入群と対照群に統計的有意差が認められていない場合」が挙げられている。また、有意水準についても5%と記載されている。本来、有意水準は項目や試験目的(探索的、予備的なのかなど)や評価項目の特性で研究者が事前に定めてよいものであるが、機能性表示食品の場合は、有効性試験であることや特定保健用食品の申請などにも準拠していることから5%としていると考えられる。

 また、「主要アウトカム評価項目」でとあるように、前回解説した事前計画における各評価項目の位置づけが重要になっている。
 通常は1つのみを設定することが望ましい主要評価項目が試験の主目的を確認できる項目に設定することから、主要アウトカム評価項目で群間差が認められていない場合は、機能性表示食品の科学的根拠としては不十分という判断になるのであろう。

 また、主要アウトカム評価項目に関わらず、評価に設定する指標が学術的コンセンサスの取れている指標にすることや主観評価を主要アウトカム評価項目に設定する場合は日本人への妥当性について確認することが求められている。特に主観評価については、研究者が独自に設定したものや海外で利用されている質問紙を単純に翻訳し使用するだけでは不適切と判断されることがある。特に外国で利用されている質問紙などは日本語版が存在し、日本語版が実際に使われて評価され、妥当性が検証されているものを用いることが望ましい。
 つまり、解析で用いる指標は、機能性表示食品の科学的根拠となるので、きちんと科学的なエビデンスを用いることが重要ということになる。

                                                     (つづく)

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